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午後の教室は午前に比べて比較的スムーズに進行した。
一度やってるから、私も流れがわかっているし、改善した点が上手くいったのも影響が大きい。
カラメルソースを作る際にお砂糖が焦げていく部分では、皆さんが目を見張ってハラハラしていたけど、お砂糖の話をした直後だからか、午前より印象づけられたように思う。
実際、ここまで焦がしてもお砂糖の魔素はあまり飛んでおらず、砂糖の調理法への可能性に目を輝かせていた。
午前だとレシピ帳の中身を気にしながら説明を聞いてもらってたので、インパクトが薄かったように思う。
だから、その後の餡づくりで焦がさないように再三注意が必要だったんだし。
「焦げた香りが甘いというのは、何とも不思議ですね。」
「しかし、これはプリンに合いますよ。」
「もう少し甘くても良さそうな気もしますが、いかがでしょう?ハルカさま。」
「そうですね。まだ甘くしても美味しいと思いますが、これよりお砂糖を多くすると、少し時間が経つと固まってしまうんです。食べる直前に作ってかけるなら大丈夫だと思います。」
焦げた香りに恐る恐るだったけど、プリンと一緒に食べたのが良かったのか、午前より反応が良かった。
嗅覚も味覚もヒト族より敏感だから、ソースだけより食べやすかったのかもしれない。
甘み好きなルシェモモのひとらしく、「もっと甘くしては?」という意見も出た。
カラメルソースに関しては甘さは好みで変えてもらって結構だけれど、お砂糖が多いと固まってしまうから、その注意だけはしっかりとさせてもらう。
皆さん味や香りなど、自分の気づいたことを自前のメモ帳に書きつけていた。
ソースだけ口に含んでいたりもしたから、プリンと合わせた時の味なんかも書いてるのかもしれない。
抹茶ソースの事も話すと、ガリューさんは大興奮だった。
どうやら蜜や果物が主食のフォーリンガでは、新しい甘味は大注目だったらしく、蜜の代わりになるお砂糖のソースに新しい可能性を見い出したようだ。
果物も豊富だし、ソースもこれからたくさん作られるだろう。
楽しみが増えたなあ。やった。
「その、抹茶というのは?」
シーマームのアルディアさんからの質問だ。
ああ。いけない。
ついつい忘れちゃうけど、抹茶はエルフのもので、一般的ではないんだよね。
あまりの苦さに大抵のひとは尻込みするとかって、ルドさんが言ってたしねえ。
先に説明しておかなきゃいけなかったな。反省。
エルフのお茶は普通に普及してるのに、抹茶はダメっていうのが私にはよくわからないけど、知られていないものはちゃんとそう認識しなくちゃ。
「あらあら。そうですわね。お抹茶の説明もしなければ。先程申し上げました守備隊で実用化されております…。」
ウジャータさんの説明に、皆さんの目の輝きが増す。
やっぱり、実用化されてるっていうのは強みなんだなあ。
手続きが大変だって後から聞いたけど、ルドさんやクルビスさんのおかげだよね。
また今度、ちゃんとお礼を言わないと。