17
そんな話をしながらもあっという間に午後の教室の時間になる。
窓を閉めていると生徒さん達が来て、蒸し器に興味を示しつつも挨拶に来てくれる。
午後からは赤の一族など午前にいなかった一族の代表が来て、教室の空気がまた変わる。
基本的には挨拶に行った一族の順で席を埋めたけれど、挨拶の時の交渉の内容や式の時の様子から考えて、カメレオンの一族と赤の一族は午前と午後に分けることにした。
デリアさんにも聞いてみたけど、どうやら一族同士で普段からあまり仲は良くないらしく、調理師さん達もひとによっては張り合ってる店があるとかで「一緒の受講はおすすめしません」と言われたくらいだ。
どちらかというとカメレオンの一族全体が周りと張り合う傾向にあるらしい。
シーリード族で一番下だった時期が影響しているのかもしれないけど、迷惑な話だと思う。
イシュリナさんはルシェリードさんの伴侶だからか、カメレオンの一族でも別枠で接してるひとが多いようで、よく仲裁役に呼ばれたりするらしい。
クルビスさんの夢の件だけでなく、場合によってはイシュリナさんにとりなしてもらうことも考えて午前と午後の両方に参加してもらうことになった。
でも、予想に反して、午前中に参加してくれたカメレオンの一族の調理師さんも、今挨拶してくれた赤の一族の調理師さんも穏やかな魔素のいいひとそうだった。
さすがに一族の代表を選んだだけあって、その辺の人選もしっかりしてるようでホッとする。
ただ、この後も料理教室を続けるなら、そういう確執で騒ぎが起こることもあり得るんだって覚えておかないといけないだろう。
いっそ、暴れたら出入り禁止にするとかでもいいと思ってる。
ウジャータさんは不真面目な生徒は減点していって、規定の点数より下になったら退学扱いとしているらしいし。
まあ、これは嫌がらせ対策も含めての厳しい処置だから、今はほとんど使われない制度みたいだけどね。場合によっては検討しようと思う。
そして、もう一つの気になってることといえば、今、目の前に来ている方々だ。
他の調理師さんも驚いている。滅多に合うことないもんね。
「ハルカさま。この度は我々フォーレンガにお声掛け下さりありがとうございます。わたくし、フォーレンガのガリューと申します。」
「急なお話しでしたのに、参加して下さってありがとうございます。里見遥加です。今日はよろしくお願いします。」
「とんでもないことです。この教室を開かれると聞いた時から、受付はまだかまだかと待ち焦がれておりましたから。」
今回の料理教室にはフォーレンガの調理師さんが参加してくれることになった。
フォーレンガさんは芸事か隊士さんになるか両極端だと聞いていたけど、調理師さんもいたらしい。