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「で、では、試食をどうぞ。」
そう言って水菓子の乗ったお皿を勧めると皆さん途端に動きが止まる。
あれ?さっきの食いつき具合からするとすぐにでも実食タイムになると思ったのに。
ゾワッ
あ。しまった。
クルビスさんがいるのに、違う男性に手作り料理を勧めちゃった。
「クルビスさんのはこっちですよ?こっちの方が好きでしたよね?」
そういって、別皿にとっておいた水菓子を切ってあ~んと差し出す。
そこでやっと重苦しい魔素が無くなった。
うん。もう無意識にクルビスさんの分は別に分けるようになったんだけど、先に渡すのを忘れてた。
一応、事前に説明に手一杯になるかもとは伝えてOKは貰ってたんだけどね。
目の前で他の男性に勧めるのは我慢出来なかったみたい。
横でイシュリナさんが呆れているのが魔素でわかる。すみません。まだ蜜月なもので。
「まあまあ。仲のよろしいこと。さあ、皆さまご試食なさって。味も覚えて帰って頂きたいというハルカさんの心遣いですわあ。」
クルビスさんに食べさせ始めた私を見て、ウジャータさんがフォローを入れてくれる。
それを聞いて皆さん我先にと試食を始める。
ゼリーののど越しに驚き、餡の甘さに驚き、何もかもに驚いているようだ。
ようだっていうのは、クルビスさんに食べさせていたから横目でちらっとしか確認出来なかったから。
蜜月の旦那様に食べさせ終えるまではよそ見は厳禁です。
後が大変だからね。ホントに。
最後のひと口を食べ終わって、ギュッと抱きしめられて終わりだ。
ああ良かった。これで守備隊だったら部屋に連れ込まれてる所だけど、さすがに今日は理性が利いてるみたい。
魔素で「クルビスさん大好き。ハート。」を訴えたのが良かったのかもしれない。
外でもやることになるとは思わなかったけど仕方ない。蜜月だもん。
「ふうう。何と瑞々しく、また心地良い甘みでしょう。」
「まったく。ゼリーにこのような使いかたがあるとは。」
「味も違いますねえ。煮込むと僅かな違いでも、このように菓子にするとハッキリと違いが出ます。」
ああ。試食も終わったみたい。
感想を言いあいながらも皆さん恍惚とした顔をしてるから、味には満足してくれたみたいだ。
後は実践で作ってもらって、手で感覚を覚えてもらうだけだ。
どれくらい上手くなるかは練習次第かな。
「では、あまり時間も残ってませんので、皆さんにも餡を作って頂きたいと思います。わからないことがあれば聞いて下さい。私とウジャータ様で見て回りますので。」
実習を促すと皆さんクルビスさんの方を怯えたようにちらりと見て、すぐに逸らす。
大丈夫ですよ~。近づき過ぎなければいけますから。たぶん。