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周りが落ち着いたのを見て、クルビスさんにフライパンの処理を任せてこし餡作りに戻る。
旦那様をこき使っているようだけど、本人が喜々としてやってるので問題ないってことにしてる。
さっきも、濾してる途中で手が疲れてきたら、さっと変わってくれたし。
ホントに気の付く旦那様だ。
そのおかげか周りの視線もさっきのぎらぎらしたものから生温かいものに変わったし、これならすんなり次にいけそう。
後で思いっきり感謝しなきゃ。押し倒されるから今はだめだけど。
「では、こし餡の作り方にもどりますね。濾した餡を鍋に入れて、分量のお砂糖を入れます。たくさん作る時はお砂糖を入れる回数を2、3回に分けて下さい。お砂糖は先程見て頂いた通りとても焦げやすいので、最初のうちはこれ以上入れるのはおすすめしません。
また、子供にも食べてもらうなら、なおのこと、これ以上入れない方がいいとお医者さまに注意を受けています。お砂糖は魔素が多いので、使うときには量に注意して下さい。」
私の説明に皆さん手元のレシピ帳にかきこんでいく。
お医者さまの注意っていうのも効いたかな。
魔素酔いは本当に危険だから、調理師さんたちにはくれぐれも注意してもらいたい。
お医者さまっていうのはメルバさんとフェラリーデさんだけど、ルシェモモで1、2を争う名医が言ってるんだし、ここは強気で言っておかないとね。
「それでは火にかけながらかきまぜていきます。最初はざっくりと、まざってきたら底をひっかくように全体をかきまぜ続けます。」
混ぜるのも力がいるけど、今回は少しの量だから私でも何とかなる。
これが小豆だと含み過ぎた水気を絞らないといけない上に、塊を崩していくのがすごく大変なんだけどね。
こっちの豆は良い感じの硬さなので本当に助かった。
蒸し芋より少し柔らかいくらい、かな?
作ってる感じとしては芋あんみたいな感じだ。
それでも、お砂糖と混ぜ合わせて底が焦げ付かないようにかきまぜ続けるのは疲れる。
でも、もうちょっと。
照りが出るまではやらないと餡にならない。
延々とかきまぜ続けてるだけでも、皆さんはレシピ帳と見比べながら、私の手元を必死に覗き込んでくる。
なるべく丁寧に書いたと言っても、実際の手順を見るのとは違うもんね。
餡は焦がしてもらったら困るから、かきまわす速さなんかも是非覚えてもらいたい。
丁寧にやった分だけ綺麗に出来るからね。
そのうちにふつふつと餡が動くようになる。たまにポコンと穴が開く。
十分に混ざって照りが出てきた。もういいかな。
「気泡が出て、照りが出ると最後の仕上げです。塩を少量入れます。これで甘さが引き立って美味しくなります。一通りかきまぜたら完成です。火からおろして冷まします。」
塩を入れる時に皆さん目がこぼれんばかりに驚いていた。
蜜に塩なんていれないだろうし、そりゃ驚くよね。