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そんな不安はあるものの、いろいろやることがあったから、私たちはメルバさんと別れて転移局に一端もどった。
荷物を取りにいかなきゃいけなかったし、転移局を閉める準備をしたり、近所のひとに知らせたりとやらなきゃいけないことがあって、結構時間がかかった。
一番時間がかかったのは、ご近所への説明。
カバズさんの様子がおかしかったことは、あの場にいた他のお客さんに見られちゃってて、すでに結構なウワサになっていたから、皆さん話を聞きたがったんだよね。
帰りの道でもいろんなひとに聞かれて、当たり障りなく「どうやら調子が悪かったらしいですよ。」って周りにいいながら何とか帰って来たくらいだ。
それもどこまで信じてもらえてるのか。皆さん好き勝手言ってたからなあ。
これ、後でカバズさんの仕事に影響しないといいけど。
ウワサって怖いから。
「ハルカ!」
そんなことをしてる間に、クルビスさんが迎えに来た。
やっぱり無理だったか。思ったより時間かかったしなあ。
一応、「後でカイザーさん達と行きます。これもお仕事ですから待っててください。」ってメルバさんに伝言頼んどいたんだけどなあ。
ちゃんと、私には何もなかったことも伝えてもらったはずだけど、クルビスさんには我慢できなかったみたいだ。
こうなったら、何でもないように対応しよう。
下手すると部屋から出られなくなる。
「クルビスさん。今からそちらに向かう所だったんです、よ?」
姿を見たと思ったら、強烈なハグ。
これ、羽交い絞めじゃないよね?ちょっと苦しいんだけど。
「本当に何もなかったか…。」
ええ、この通り無事です。
魔素見ればわかるでしょう?
というか、私の魔素を見るのに、ハグは必要ないんじゃないでしょうか。
…必要ですか。そうですか。
「ええ。この通り。私より警護のおふたつの方が…。」
「ああ。そうだな。リカルド、ペッパ、ありがとう。」
私の話に傍に控えていた警護の隊士さんに声をかける。
隊士さん達はにこにこして礼をとっていた。
「ただいま~。って、クルビス隊長?」
ご実家に事情を話しに行っていたキャサリンさんが帰ってきた。
ご実家の八百屋さんのご家族はこの辺りの情報通らしく、「ちゃんと事情を説明しといた方が後々良いですから~。」とキャサリンさんが説明に行ってくれていたんだけど、上手くいったんだろうか。
そのキャサリンさんはクルビスさんがいることに不思議そうにしながらも、荷物を持って「準備完了です~。」とマイペースだ。
そのマイペースさで張り詰めていたクルビスさんの魔素も緩んだ。よし、今だ。
「ご苦労様です。えっと、じゃあ、行きましょうか。」
「は~い。」
キャサリンさんの登場で場が和み、全員で守備隊に移動を始める。
キャサリンさん、グッジョブです。天然さんって強い。
ちなみに、今回も抱っこされそうになった所を、すかさず手を握って並んで歩く方向に誘導し、みごと成功しました。
クルビスさんは私とどこかくっついていれば安心するみたい。
でも、座るときは抱っこされるんだろうなあ。
上司の前ではやめてほしいなあ。