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豆とお砂糖の説明が終わると、今度は小さな器が配られる。
中には少量の緑のソースがかかったかき氷が入っていた。
「ここまでがお砂糖と豆についてですわ。さて、これからレシピの説明と見学に移って頂きますが、その前に、すでに北の守備隊にて実用化されているレシピをご紹介したいと思います。」
そう言って、ウジャータさんが私を見る。
ああ。そうか。ここで私の出番ね。
「このかき氷にかかっているのは、こちらにある深緑の一族のお茶である、抹茶を使ったソースです。故郷にも抹茶があって、味も似ていたので再現してみました。」
参加者の皆さんは初めてみた方もいたらしく、まじまじと眺めていた。
そして、手元のかき氷と何度も見比べている。
こっちではかき氷にかけるのも蜜だったから、粉の抹茶がトロリとしたソースになるというのは衝撃的だろう。
中には、抹茶の苦味を知ってるひともいるのか、微妙な顔をしてるひともいた。
「故郷でも好みはわかれましたので、あまりお好きでない方もいると思いますが、お砂糖を使ったレシピで実用化されている良い例だと思って用意していただきました。どうぞご試食なさって下さい。」
私の言葉を聞いて、参加者の皆さんは緑のかき氷を順々に口にいれる。
もっと口にいれるのに抵抗があるかと思ったけど、北の守備隊で実用化されているのは有名らしく、皆さん「これがあの。」とか「ここで食べられるとはっ。」とか言って、躊躇する様子は見られない。
ひと口食べてみると、予想しない味だったのか、皆さん目を見開いている。
そしてハッとしたと思ったら残りのかき氷を一気に食べ始めた。
「「「うっっ。」」」
ですよね。
少しの量といっても小皿に盛るくらいはあったわけで。
その量を一気に食べれば、頭キーンってなりますよ。
あ、何でもないフリしてるけど、クルビスさんもキーンってなってる。学習しましょうよ。
「あらあら。皆さん。かき氷は一度にたくさん食べるのはいけませんわ。先に申し上げておけばよろしかったですわね。」
「ふふふ。同じだったと思うわよ?皆我慢できなかったのねえ。」
ウジャータさんとイシュリナさんも、呆れたような、微笑ましいものでも見るような、そんな感じで周りが回復するのを見守っている。
私はというと、今の状況をメモしている。注意事項が増えたしね。
イシュリナさんが言うように、ソースのかかったかき氷はまだ珍しいものだからついつい食べて過ぎてしまうかもしれないけど、注意は先に言っておいた方が良いだろう。
今まで、かき氷はそうメジャーなものじゃなかったし、そんなに食べたことないってひともいるかもしれないしね。
レシピのことばかり考えてたけど、他のことも気になったことはメモっておこう。
後で見返してまとめておかなきゃ。