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「材料も作りかたもシンプルなものが多いので、ここで覚えたレシピから、材料の比率の変化やちょっとしたアレンジでオリジナルを作ることも出来るでしょう。皆さんが創意工夫をなさった部分は今まで通りのレシピの扱いになります。
ただし、公開レシピに登録した基本の部分については、材料であれ作りかたであれ、隠すことはできません。このレシピを広めてもらうのが目的ですから。その際に、今日配るこのレシピ帳も写しを作って配ってもらっても結構です。」
手にしたレシピを見せながら、きっちりはっきり言っておく。最初が肝心だ。
アレンジしたものをオリジナルとして登録は出来るし隠すことも出来る、でも料理本のように基本部分はいつでも知ることが出来るようにしてほしい。
プロの技と素人用のレシピは似て非なるのと扱いは同じだ。
今までは何でもかんでも秘密だったから、作れるひと自体が少なすぎた。
それじゃあ、気軽にスイーツが食べられないじゃない。
私の言えない本音を知ってるクルビスさんは、真面目な顔と魔素をしてるけど秘かに笑っていた。尻尾が微妙に震えてますよ?
ウジャータさんとイシュリナさん以外は、今日初めて知った事実に目を丸く見開いている。
そりゃ、いままでのレシピの常識を覆す発想だもんね。反発されるのはあたりまえだ。
「そ、そのレシピ帳、頂けるのですか!?」
あれ?
「その中の内容ならば、私の弟子に教えてもよろしいということですね!」
おやあ?
もっと反対意見が出るとか思ったんだけど、皆さん理解し始めてから目も魔素も輝きだしている。
ウジャータさんをちらりと見ると、ニコニコと満足げにこちらの成り行きを見守っていた。
これ、こういう反応が返ってくるってウジャータさんは知ってたみたい。
うう。教えといてくださいよお。
いくら各一族の長からの紹介でも、内心では面白く思ってないかもって心配してたんだから。
内心ホッとして座り込みそうになるのを、クルビスさんに支えてもらって耐える。
そうだ。質問に答えなきゃ。
「あ。はい。このレシピ帳は料理教室に参加された方皆さんに差し上げます。この中の内容は公開レシピで登録してある内容なので、どなたにでも教えて頂いて結構です。」
「「「おおお!!!」」」
私の返事に皆さん顔を上に向けて大きく口を開けて吠えている。
ヒトでいうところの満面の笑みでのガッツポーズみたいなものだ。
ギザギザの歯がちょっと怖いけど、喜んでもらえて何よりだ。
この分なら、レシピの普及に貢献してもらえそう。