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出発からプレッシャーかけられたけど、皆さん明るく見送ってくれた。
転移した詰め所では偶然早めに来ていたイシュリナさんと合流し、まだ込み合う前の料理学校へと向かう。
「まあまあ。イシュリナさま、クルビスさま、ハルカさん。おはようございます。お早いお着きで良かったですわ。」
「おはようウジャータ。あなたのアドバイスに従うことにしたの。」
「助かりますわ。イシュリナ様も参加なさるということで、生徒たちが浮足立ってましたから、見つかったら大騒ぎになっておりました。」
事前に打ち合わせてあったんだ。
まあ、でも街の王様みたいなルシェリードさんの奥さまが来るとなったら、それは騒ぎになるかも。
特にイシュリナさんは子供たちのお世話もしてるから、懐かしさもあって周りにひとが集まってしまうだろう。
入院してた子供たちの反応を思い出すと、私とクルビスさんより騒ぎになっただろうというのは想像がつく。
「さあさあ。先に入って待っていましょう。皆さま、きっと驚かれますわよ。」
楽しそうなウジャータさんの案内で先日見学した教室にたどり着く。
調理場に囲まれ、山のように盛られた色とりどりの材料に圧倒される。
「まああ。すごいわ。お店でもこれだけの種類を見ることはないでしょうに。」
「ふふふ。この機会にお砂糖や豆などの基礎も確認していただこうと思いまして。やはり実物があるかどうかで違いますものね?」
「そうですね。すばらしいと思います。」
ウジャータさんが嬉しそうに材料を説明してくれる。
お砂糖は10段階以上の精製で並んでいたし、豆も今日使うもの以外に熟したものからまだ未熟なものまでさまざまに揃えられていた。
その中にはなんと抹茶まであって、これにはイシュリナさんも私も驚いた。
私が抹茶のソースを作ったと聞いて、取り寄せて下さったらしい。
「あのかき氷はとても美味しかったわ。あれなら甘いものが苦手なひとでも食べやすいと思うの。」
「私も伴侶と食べに寄ったのですけど、あんまり美味しくて。息子を質問攻めにしてしまいましたわ。」
ルドさん大変だったろうなあ。
故郷のレシピで実用化されてる例として、あの宇治金時を出すよう言われたけど、ウジャータさんからの圧力だったに違いない。
まあ、守備隊の新しいメニューの宣伝にもなるからって、クルビスさん達にも勧められたからいいんだけどね。
もしかしたら、北の守備隊の食堂に調理師さん達が通い詰めるなんて光景が拝めるようになるかもしれない。