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クルビスさんを起こした後は、クルビスさんに邪魔されながら着替えて朝食を取りに下に向かう。
一時期は暑さにバテてしまって、朝は冷やしたフルーツくらいしか食べられなかったけど、フェラリーデさんにお薬をもらって今では普通に食事が出来るようになった。
「部屋で食べてもいいのに。」
「だめです。ちゃんと食べられるようになったんだから、食堂で食べないと。」
私を運びながらも、少し不満そうにするクルビスさん。
なぜか部屋で食べさせるのが楽しかったらしく、最近は事あるごとに部屋で食べようと誘ってくる。
部屋でなら口移しとか出来るからだろうけど、そんなのバテて動くことも出来なかった時だけでもう十分だと思ってる。
絶対頷きません。そんな顔してもだめです。
そんなやり取りをしながら食堂でご飯を食べて、身支度を終えると転移陣の部屋に向かう。
そこではフェラリーデさんとキィさんが見送りのために来てくれていた。
皆さんには朝ごはんの時に「頑張れよ」って声をかけてもらってるけど、二人はあらためて見送りに来てくれたようだ。
副隊長さん達はクルビスさん達の代わりにお仕事だから、この場にはこれなかったそうだ。
「悪りいな。たったふたつで。」
「いいえ。わざわざありがとうございます。」
「忙しいだろうに。ありがとう。」
「ふふ。今日は特別な日じゃありませんか。門出は皆で見送るものですよ。」
そういう習慣なのだとフェラリーデさんが教えてくれる。
まだシーリード族が出来たばかりの頃、皆で一つの種族という意識を高めるために始まったことらしいけど、今ではシーリード族に限らず、大事なひとの節目に集まるという習慣に変わっているそうだ。
「素敵ですね。」
「面倒なこともあるけどな。」
私がいい習慣だと思って言うと、キィさんやクルビスさん達は苦笑していた。
ああ。大事なひとの節目に集まるなら、集まらなかったら大事に思われてないってことになるもんね。
「義理で出ないといけなかったりするんですね?」
「ええ。今日のは違いますよ?ハルカさんの門出を祝いたかったんです。」
私の意見に今度はフェラリーデさんが頷いてくれる。
もちろん、フェラリーデさんとキィさんが祝ってくれようとしてるのはわかるから、私も頷いておく。
「そうそう。ルシェモモの歴史が変わる日だしな。」
そんなキィさん大げさな。
たしかに、レシピ公開は初の試みだけど。
「そうだな。歴史書にのる出来事だ。」
クルビスさんまでプレッシャーかけないで下さい。
せっかく忘れてたのに、緊張してきちゃったじゃないですか。