7(クルビス視点)
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「残りはこっちに配置するのでどうだろう?」
「そうだなあ。出来れば2つくらい屋根にあげられねえか?」
「そうするとこちらが手薄になりませんか?」
俺とキィとリードが顔を突き合わせる。
先ほどから、机の上の地図を指して、ああでもないこうでもないと議論を繰り返していた。
今行っているのは隊長会議で、今回の議題は前々から調べていた密猟グループの拠点を抑えることだ。
連中はこの辺りでしか採れない花や動物などを他所で売りさばいていたが、尻尾をつかむことも出来ず、行動がエスカレートしていた。
そしてとうとう、気温が下がった『あの日』には、混乱に乗じてポムの木を一本丸ごと切り取っていってしまった。
本当なら、雨季の前まで正規の調査は入らなかったから、これもわからなかったかもしれない。
だが、あの日はハルカが切り倒したばかりの切り株で休んでいたと証言してくれて、事態は変わった。
報告されているどの木の情報とも合わない切り株に疑いがかかり、さる筋からの情報で、はるか西に位置する都市でめずらしいポムの木材が市場に出たという時期と重なることがわかった。
この情報も、小さい木材ばかりが出回ったことと、今回の本来の時期とズレる出荷に、正規の品ではないのではないかと疑いを持った者から密告があってわかったことだ。
それと共に大きなセパの肉も降ろされたと聞いた時、ネロのことが頭によぎった。
あの森で母親に置き去りにされたセパのヒナ。
そもそもポムの小道の中に、ヒナとはいえ野生のセパが紛れ込んだのが有り得ないことだ。
ドラゴンに怯えて逃げたと思っていたが、本当の理由は母親が密猟者に襲われたからだとしたら?
ネロは、母親が襲われた衝撃でポムの小道に放り出されてしまったのかもしれない。
あくまで可能性だ。だが、魔物の中でも魔素が多く食べやすいセパの肉は人気があり、遠方の街では高く売れる。早急に調査を命じた。
セパは乗り物としても人気があるから、今後はヒナも狙われるようになるかもしれない。
放っておけばこれからも密漁は続き、過激さをましていくだろう。
問題の街に赴任している隊士からの情報では、降ろした連中はルシェモモの西の山を越えたところにある学術都市から来たことになっていた。
だが、学術都市でも調べを進めると、連中は学術都市では劇場の主催者として、ルシェモモの街では劇場の小道具や金物などを扱っていることがわかった。
一見、木や花とはあまり関係がないように見せておいて、ひそかに演劇の小物の運搬用の箱に細工をして、密猟品やポムの木を運び出していたらしい。
箱に入るサイズにしたため、ポムの木材は大きなままで売ることが出来なかったようだ。それが足がつく結果になった。