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「はい。運が良かったです。それとこの実のおかげですね。」
「うんうん。ポムの実って本当に『命の実』だったんですねぇ。実も木も使えるなんてぇ。すごい木ですよねぇ。」
「ええ。あちこちから買い付けに来るはずです。」
ん?ポムの実はともかく、木も?
え。売れるんだ。ポムの木って。
「ポムの木って売れるんですか?」
「ええ。栽培は難しいですが、木材でも魔物避けの効果は十分ありますからね。結構な高値で売れて、それが街の維持費に還元されてます。」
私の質問にカイザーさんが少しずれた答えをくれる。
成る程。ポムの木の苗でも売ってるのかと思ったけど、木材かあ。
街に来る途中で切り株を見たけど、きっとある程度育ったら切ってしまって調整してるんだろうな。
もしかしたら、病気か何かで切ってしまったものかもしれないけど、そういうのは全部北の守備隊とエルフ達でやってるそうだ。
ポムの木に関してはエルフの得意分野で、他の種族では上手く育てられないと授業で教えてもらったけど、実にも木材にもそれだけ利用価値があるなら、もっと大々的に栽培すればいいのに。
あ。でも、魔物が出る森に囲まれてて栽培は難しいか。
魔物避けとして機能する前に、苗の状態でつぶされちゃいそうだ。
「でも育てるのが難しいんですよねぇ。ポムの小道だって、作るのにすごく時間がかかったみたいですしぃ。」
ああ。やっぱり難しいんだ。
あんな特殊な木を育てるのは大変そうだよね。
瑞々しい果実を頂きながら、新しくしった事実を頭の中に叩き込んでいく。
私はこちらでの常識がないから、授業以外でもこういう会話から学ばなければならないことがたくさんある。
さっきのポムの木が高価な木材で売れるなんてのも初耳だ。
魔物避けのポムの小道のことみたいに、街じゅうの人が知ってて当たり前な知識は教えてもらえたけど、ポムの木の使い道なんて、知ってる人が限られそうなことは授業では出てこないからね。
ポムの木の皮がお茶になるっていうのも、治療にって出してもらえたから知ってるんだし。
あ、そういえば、木材が高いならお茶も高かったりするのかな?
「時間が…。じゃあ、ポム茶ってもしかして高いんでしょうか?」
「いいえ。普通に買えますよ?」
「安くはないですけどぉ。木の皮は毎年剥ぎますしぃ、そこそこの値段で買えますねぇ。」
ああ。良かった。
異世界に来た日の治療費はルシェリードさんやクルビスさんが出してくれてるから、高価なものだったらどうしようかと思った。
「どうかしたんですかぁ?」
「いえ。一度ご馳走になったことがあって、もし高価なものだったらどうしようかと思ったんです。」
「ああ。魔素が多いから、お客様用にしてるお家も多いですもんねぇ。」
別の意味で解釈されたみたいだけど、まあいいか。
新しい知識もまた増えたし。木の皮って毎年剥ぐんだ。