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ジリジリと焼けつくような日差し外とは対照的に転移局の中はひんやかとしている。
料理教室の下見が終ってから、数日、とうとう転移局にも冷房がつくようになった。
こっちの電気設備って変わってて、まず照明は、天井をぐるりと大きく円を描くように出っ張ったラインがついていて、そこから天井の真ん中にかけて全体が光るようになっている。
そのでっぱりは中が筒状になってて、間接照明みたいになってるらしく、直接見ても目がいたくないオシャレな代物だ。
実は中では水が絶えず流れているらしい。
水は白くて周囲に放出しづらいという特徴を持つらしいけど、魔素を流し込みやすいという性質も持つんだって。
これは水でも真水だけの特徴なんだそうだ。
筒状のでっぱり内側に天井が光る術式を刻んであって、スイッチから魔素を流すと水を通して明かりがつくというわけ。
明かりだけじゃあもったいないということで、でっぱりの内側には、他にも冷房やら空気の循環やら、場所によっては匂い取りみたいな術式まであるんだそうだ。
機能を追加する分高くなるみたいだけど、食品を扱う転移局としては荷物はなるべく涼しい所に置いておきたいらしく、街にある転移局には冷房が完備されている。
おかげで、バテ始めていた身体も何とかもっている。
冷たい風が吹きつけるタイプじゃなくて、でっぱりの周囲からじわじわと冷えていくんだけど、意外に寒くはないのはビックリした。
「勤め始める前は、寒いと動けなくなるのに何でって思ってましたけどぉ。ここの設備を知っちゃうと、家では満足できませぇん。」
キャサリンさんが整理した荷物を棚に収めながら、ため息をつく。
爬虫類系の種族のシーリード族は寒さに弱いから、エルフが来るまで冷房って概念が無かったみたいで、公共の施設や大きい建物にしか冷房はついてないんだそうだ。
「私は新居も冷房無しでは耐えられそうにありませんね。今探してもらってるんですけど、中々無くて。」
「あー。着けるとなったら高いですもんねぇ。」
慣れた手つきで荷物を収めつつ、冷房がつくのとつかないのとでどれくらい家賃に差があるか聞くと、この辺りでもざっと3倍はするんだそうだ。
高いなあ。そんなとこ住めないよ。
まあ、クルビスさんのお給料ならいけると思うけど、でも、それなら守備隊にいても…。
いやいや。子供が出来た時のことを考えておくと、外に家があった方がいいってキィさんにも聞いてるし、頑張って見つけなくちゃ。