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カラメルソースについては話はまとまり、後は調理器具と材料の確認になった。
さすが料理教室だけあって、お鍋もたくさんある。
木べらのようなものもいろんな形で何種類もあったし、丈夫なツル科の植物を削った弾力のあるゴムべらのようなものまであった。
餡を捏ねるには丈夫なものがいいので、先がななめになった木のヘラを選び、今回は少量しか作らないので片手鍋とこし器、後はボールを幾つか選んで終了だ。
「これだけで、水菓子が出来てしまいますのねえ。これならレシピを持ちかえってもらっても、すぐに再現して頂けそうですわ。」
「そうですね。餡だけならお鍋と木べらだけで十分ですし、手持ちの器具で作れるのも、このレシピの利点だと思います。」
洋菓子だと、材料を混ぜるボールに、型、中に何か混ぜるなら包丁がいるし、カスタードクリームなんかがいるならお鍋もいる。
こう考えただけでも洗い物が大変だなあ。
型なんか、自分の思い描く形に作ってもらわないといけないこともあるから、お金を払って専門の職人さんに作ってもらったりして。
それに比べて、私の紹介しようとしている和菓子は、基本的に手で形を作るし、器具も既存のもので十分だ。
その分、作る人の腕が味に反映しちゃうけどね。
材料もシンプルだし、当日も結構差がでそうだ。
でもそれでいいと思ってる。
同じレシピでも、作るひとによって出来上がりは千差万別。
だから、評判のお菓子屋さんがあったり、「私はこっちのお店が好き」とか言えるんだし。
スイーツ店巡りで食べ比べるのだって、スイーツを楽しむ醍醐味のひとつだ。
気楽に気軽にスイーツが食べたい。
最初のきっかけはそれだったけど、今でもその思いは変わっていない。
「あらあら。わくわくしますわね。カラメルソースに水菓子、お菓子自体も斬新ですけど、同じレシピを大勢で共有するのも反応が楽しみですわ。きっと、中々知ることが出来ない現状にやきもきしてらっしゃる方も大勢いるでしょうから。」
「ふふ。きっと守備隊で作った時みたいに、皆さん、熱心に議論されるでしょうね。」
「まあまあ。そんなことがありましたの?」
ウジャータさんと笑いながら、明るい未来について話す。
実際は反発されたり、けなされたりといろいろあるだろう。
でも、技術の基礎の共有化はウジャータさんが先に切り開いてくれているし、受け入れる下地は整っていると思う。
私はかなり恵まれた状態でのスタートだ。
悪口や嫌がらせがあったとしても、めげないでレシピを広めていこうと思ってる。
クルビスさんも応援してくれてるし、頑張ろう。