親友様(1)
とても短いです。次話は親友視点。
5/6 名前、鈴木香耶→二階堂杏奈 に変更
サブタイトル変更
やあ、わたしの名前は水嶋那月。
私立松島小学校に通っている、明るいのが取り柄な小学3年生さ。
それにしても、夏休みは過ぎたのに、まだまだ蒸し暑いねえ。
あ、人気者の那月ちゃんの夏休みは、友達と遊んだり親戚の集まりに行ったりと大忙しだったよ。
え?宿題?もちろんおわらせましたとも。
前世スペック舐めんなよとの話です。
まだ小学3年生ですもの。
中学生卒業までの記憶のあるわたしからしたら屁のカッパですよ。
まあ、計画性なんて素晴らしいものを持ち合わせてはないから、提出日の前日に徹夜で鉛筆を動かしたとも。
従兄弟にはかなり呆れられたけどね。
あ、因みにあいつは夏休み前に宿題を終わらせるタイプだそうです。
じゃあ、親戚の集まりでしていたあれはなんなんだ!?って聞いたら、予習、って読んでいる本から顔もあげずに言われたよ。
わたしは驚愕に声も出なかったよ、くそ。
舞台の上に立っていた校長が頭を下げる。
さっきまでイライラしていた那月に、校長の反射鏡のような頭は笑いを誘った。
みんなが真面目に前を向いているなか、那月はひとり下を向いて笑いをこらえていた。
幸いなことに周りは気づいてないようである。
さて、今日は夏休み明けの始業式の日。
みんな、夏休みを満喫したようで、ほとんどの人が休み前よりも肌が健康色になっていた。
かくいうわたしは色白のため、日に焼けるとすぐに赤くなり痛みが襲ってきて、後悔しかしないので、日焼け対策はばっちりしました。
そのお陰か、休み前とあまりかわらない肌色です。
「おーい。那月、行くよー。」
後ろからかかった気だるげな声に顔をあげると、始業式は終わったようで、周りの生徒達は体育館から出て行っているところだった。
さっと立ち上がり、友達の二階堂杏奈と共に教室に向かった。
二人は隣に並んで廊下を歩く。
彼女とは、去年同じクラスになり意気投合して以来、今年も特に仲の良いクラスメートである。
「ねえ、笑ってたでしょ。」
突然の香耶からの言葉に那月は目を少し見開いた。
それを見た彼女はふっと笑って呆れ顔を作る。
「どうしてわかったのって顔してるね。でも逆に気づいてない周りの人の方がおかしいと思うのよ、わたしは。」
「違いますー。杏奈が敏感なだけですぅ。」
周りにバレていないと思っていたのにバレていたと告げられて、ちょっとむくれてしまったのは無理がないと思う。
それを見てまた彼女はふっと笑った。
ああ、その笑顔が美しいです、杏奈さん。
ストレートな黒髪を肩すれすれに切りそろえ、シャープなメガネに隠れる切れ長の目は、まだ小学生とは言えない、知的で色気がある。
将来かなりの美人さんに成長するのは間違いないないだろう。
加えて、彼女は静岡の有名茶葉を生産販売する会社の社長令嬢。
わたしも和菓子と共に幾度となく飲ませていただきました。
上品な香りで少し渋みのある味は、茶菓子を一層美味しく感じさせる。
お茶の美味しさも追求しつつ、茶菓子を引き立てるという、まさに絶品である。
このような、同年代の子供と比べてずば抜けている点をみて、時々、こいつも転生者か!?と疑うほどである。
しかし、それとなく探ってみた結果、転生者ではないことがはっきりしている。
逆に、わたしが秘密を抱えていることがバレてしまったくらいだ。
本人はなにも聞いてはこなかったが。
この件で仲が更に深まったのは言うまでもない。
幼い性格をしているわたしでも、なんやかんや中学生までの記憶があるので、そこいらの小学生とは合うはずもなかった。
いや、友好関係はちゃんとあるのだが、素で接することができなかったのである。
まだまだ純粋な周りの子供たちと、社会の黒い部分を知っている子供。
見えている世界が違うのである。
そんな時に現れた、お互いの視点が会う同年代の子供。
これはわたしにとっても、彼女にとってもラッキーな出会いであった。
「まあ、それは一理あるわ。それにしても、、、ハゲ校長の頭、反射鏡のようだったわね。」
親友様はわたしと価値観が同じなようでなによりです。