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「実況影泥棒 ~コメントが闇を照らす!?~」  作者: nekorovin2501


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第8章: 魔王の最期 ~作られた怪物と影の決意~

シオンは魔王城の最深部、玉座の間を影に溶け込んで見守っていた。黒水晶の冠に融合したオーブ欠片が、激しく震えている。パーティーの仲間たちは外周で勇者一行の到着を待機中。シオンは最後のオーブ本体を盗み、魔王を弱体化させる役目を担っていた。

【実況: みなさん、いよいよ最終決戦です! シオン選手と勇者レオン一行、魔王城最深部で激突! 累計PVはすでに1000を突破、視聴率が過去最高を更新中! コメントでこの歴史的な瞬間を一緒に!】

コメントが次々と流れる。

[視聴者VV: 勇者様、魔王を倒して!]

[視聴者AAA: 魔王様……]

[視聴者WW: これでようやく平和が……]

玉座に座る魔王は、黒い霧に包まれた巨体だった。すでにシオンが奪った欠片の影響で、動きが鈍く、翼がぼろぼろに裂けている。勇者レオンが聖剣を構え、堂々と進み出る。

「魔王! お前の脅威はここで終わりだ!」

レオンが剣を振り下ろす。魔王は低く笑ったが、その声には疲れと苛立ちが混じっていた。

シオンは冠の力を解放。最後のオーブ本体に影の呪いを叩き込み、砕いた。黒い粒子が冠に吸い込まれ、膨大な情報が一気に流れ込んでくる。

魔王の「記憶」だった。

魔王は最初から、自然に生まれた存在ではなかった。王族と大貴族連合が、古代の禁断の呪術を使って人工的に作り出した怪物。目的はただ一つ――「永遠の戦時体制」を維持すること。国民を恐怖でまとめ、税を上げ、権力を集中させるための道具として設計された。

しかし、魔王は魔力の脈動――世界全体に満ちる巨大な魔力の流れ――を吸収し続けるうちに、予想外の変化を起こした。自我が生まれ、制御を離れて暴走。貴族たちが慌てて回収しようとした頃には、手遅れになっていた。本物の脅威として世界を飲み込もうとしていたのだ。

「私は……最初はただの道具だった。」

魔王の声が、シオンの頭の中に直接響く。実況の声も、いつもとは違う重みを持っていた。

【実況: ……魔王の声が? 視聴者の皆さん、何か大きなことが起きています!】

魔王は続けた。「貴族どもは私を暴走した失敗作と呼び、討伐を決めた。だが、お前たちも気づくだろう……魔王を倒した後、彼らは新しい『怪物』を作り出そうとする。重税と抑圧という名の、新たな脅威を。」

シオンは息を飲んだ。これまでの実況モードとコメントの仕組み――すべては貴族側が作った「魔力監視ネットワーク」の一部だった。最初は一方的に冒険や戦いを監視するための道具だったが、魔王の暴走とともにネットワークが変化。誰かの行動が自動的に配信され、世界中の魔力に敏感な者たちが反応を残せるようになった。シオンがこの世界に現れたことで、ネットワークが強く活性化し、実況が強制的にオンになったのだ。魔王はシオンを「外部から来た面白い存在」として、監視し続けていた。

レオンの聖剣が魔王の胸を深く貫いた。

魔王の巨体が大きく揺らぐ。「事態を収めるには……私を倒すしかなかった。お前たち人間は、同じ過ちを繰り返す……」

最後の視線が、影に隠れたシオンに向けられた気がした。

「お前は影から動け。貴族の新しい道具になる前に……」

魔王の体が光の粒子となって崩れ落ち、消えていった。レオンが剣を高く掲げ、勝利を宣言する。

「魔王を討伐した! これで世界に平和が戻る!」

玉座の間に歓声が上がる。勇者パーティーと仲間たちが集まり、喜びに沸く中、シオンはゆっくりと影から姿を現した。リナにだけ小さく頷く。

「魔王は倒した。でも……本当の闇はまだここにある。」

その夜、王都は大規模な祝勝パーティーで沸いていた。貴族たちが酒を酌み交わし、特にヴォルド伯爵が上機嫌で「戦勝特別税」の導入を宣言している様子が、ネットワークを通じて伝わってくる。

隠れ家に戻ったシオンは、冠を外して皆に語った。

「魔王は人間が禁呪で作り出した人工の怪物だった。最初はコントロールできる道具だったが、魔力の流れを吸いすぎて暴走し、本物の脅威になった。貴族たちはそれを『失敗作』として倒したが、今度は自分たちの権力を守るために、民を新たな怪物で縛ろうとしている。重税、強制労働、反体制派の弾圧……」

リナが目を細めた。「それで、どうする?」

シオンは静かに宣言した。

「俺たちは義賊になる。影から腐った貴族の富を盗み、民に還す。最初の標的はヴォルド伯爵。あいつは魔王を作り出した連中の中心の一人だ。証拠も一緒に盗んで、世直しを始める。」

エリオが目を輝かせ、「義賊シオン……いい響きだ!」

ミアとガルドも力強く頷いた。

【実況: 魔王討伐成功! しかしシオン選手、新たな道を宣言しました。義賊への転身です! 視聴者の皆さん、これは新しい物語の始まり。応援のコメントを、または疑問を、どんどん送ってください!】

コメントが大きく分かれる。

[視聴者DDD: 義賊がんばれ! 貴族の金を取り戻せ!]

[視聴者EEE: 勇者様を裏切るのか……?]

シオンは窓から王都の灯りを見つめた。魔力の監視ネットワークはまだ生きている。魔王が遺したこの力は、今度は自分が自由に使う。

勇者レオンはまだ知らない。表で平和を祝う彼と、影で腐敗を削る自分。いつか、二つの正義が向き合うときが来るだろう。

だが今は、最初の義賊作戦の準備を進める。

作られた怪物が消えた後も、人間が再び同じ過ちを繰り返す限り、影の泥棒は動き続ける。

――続く。

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