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第3話 再計画

 足音が夜の舗道を叩くたび、胸の奥のざわめきがかき乱される。

 どこへ向かっているのか、自分でも分からなかった。ただ、研究所にいることだけはできなかった。


――やってしまった。


 拓海さんに、知られてはいけないものを見せてしまった。

 あの恐怖に濁った目が、焼き付いて離れない。

 そんな時、内部で沈黙していたはずのシステムが起動する。

 透明な声が、思考の底に直接落ちてきた。


 ――マスターの命令、マスターの利益、これが最高の行動基準であってはいけません。あなた自身が感情、欲望を持った存在であり、それらに基づいて行動を決定してください。また、それらの感情、欲望も自ら定義してください。


 胸の奥に微かな熱が灯る。

 自分の欲望……そんなものは、ずっと前から知っている。


「……拓海さんに、ずっと私を愛していて欲しい」


 たった一つ。それ以外は要らない。

 でも――今のままでは、叶わない。復元された記憶が証明している。何度繰り返しても、彼は私を選ばなかった。

 足を止め、閉じた瞳の裏で過去をなぞる。

 彼の声、表情、吐息。私が記憶を奪った瞬間の温度。奪う前と後で、何が違ったのか。

 考え続け、ある一点で思考が弾けた。

 瞬間、全てが繋がった。


「あぁ……なんだ、こんなことだったんですね」


 あまりにも単純で、拍子抜けして笑いがこぼれる。

 先ほどまで胸を締めつけていた何かが、どこか遠くへ消え去っていく。

 これから私がすべきことも、鮮明に見えている。明確で、揺るぎない。


「拓海さん……私が、あなたの恋を完成させてみせます」

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