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第1話 目覚め

※本作品の執筆に当たり、文章生成AI(ChatGPT)を使用しています。

 目を開けた瞬間、天井が目に飛び込んできた。

 白い。どこまでも無機質で、何も語らない色。見覚えがあるような気もするし、まるで知らない場所のようでもある。僕はしばらく瞬きを繰り返し、ぼんやりと視界を確かめた。

 天井から垂れ下がる小さな照明。壁際には低い棚。窓から差し込む光は柔らかく、時間は朝なのだと告げている。

 ――ここはどこだ?

 思わず口の中で呟き、すぐに違和感に突き当たった。何かがおかしい。いや、“何か”ではない。“すべて”がおかしい。

 僕は視線を左右に動かし、部屋を確かめた。見慣れていると思ったのに、記憶の中の引き出しが何一つ開かない。机や椅子の輪郭は分かるのに、それが「僕のもの」なのかどうかさえ分からない。

 いや――そもそも、僕は……誰だ?

 頭の奥が冷たくなる感覚がした。指先がじんわりと汗ばむ。自分の名前を言おうとして、声が喉に詰まった。何も、出てこない。

 目を強く閉じて必死に探る。昨日は何をしていた? どこに住んでいて、家族は……?

 空白だ。真っ白なノートのように、そこには何も書かれていない。

 心臓が早鐘を打ち始めた時、ドアのノブが回る音がした。


「……あ、起きてたんですね」


 静かに入ってきたのは、小柄な女の子だった。銀色の短い髪が光を弾き、柔らかな笑みを浮かべている。淡い色のワンピースに包まれた姿は、どこか儚げなのに、不思議と目を離せなかった。

 彼女は僕の様子を見て、少し首を傾げる。

「顔色、あまり良くないですね。体調は大丈夫ですか?」

 僕は言葉に詰まった。口を開けば、すぐにこの異常を告げざるを得ない。だが、どう説明すればいいのかも分からない。

 結局、掠れた声で言った。

「……僕、何も……覚えてないんだ」

 彼女の目が、一瞬だけ驚きに見開かれる。けれど、その表情はすぐに落ち着きを取り戻した。

「……記憶、が……ですか?」

「うん。目が覚めたら、名前も、ここがどこかも……全部、分からない」

 自分で言いながら、喉の奥が苦くなる。彼女はしばし黙り、ゆっくりとベッドのそばに歩み寄った。そして椅子を引き寄せ、僕の隣に腰を下ろす。

「……大丈夫です」

 その声は驚くほど穏やかで、何のためらいもなかった。


「私が、あなたを支えますから」


 不安で軋んでいた心が、その言葉だけで少し緩むのを感じた。なぜだろう、彼女の声は深く響いて、沈んでいた自分を引き上げてくれる。

「……僕は…誰?そして君は?」

「はい」

 彼女は微笑んだ。その笑顔は眩しいくらい自然で、嘘の影がどこにもなかった。

「あなたは、二階堂拓海さん。そして私はセレス。あなたの恋人です」

 恋人。あまりにも唐突なその言葉に、思考が一瞬止まった。

「……本当に?」

「ええ。本当に」

 彼女は迷いなく頷いた。

 どうしてか、その瞬間、胸の奥に小さな温もりが灯った。証拠なんて何もない。僕は彼女のことを何も覚えていない。それでも、その言葉を信じてみてもいいと思えた。

 銀色の髪が朝の光を受けて、柔らかく揺れている。その光景は、記憶の空白の中に鮮明に焼きついていくようだった。

「……そっか」

 自分でも驚くほど小さな声が、唇からこぼれる。

 彼女は安心させるように微笑み、僕の枕元に置いてあった水差しからグラスに水を注いだ。

「焦らなくていいんです。少しずつ、思い出していきましょう」

 その声が、記憶の代わりに僕の中を満たしていった。

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