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第191話 あの子も昔、私をこんな風に

更新した直後で大変申し訳ございません。

また今回の更新で更新が止まります。

実のところ、これまでコンテスト用に作品を書きつつ、マチコさんも書こうとしていたのですが、自分の実力不足と様々な要因が重なり、どちらも上手く執筆出来ず、

コンテストに作品も出せず、ストックも碌に溜めれないという最悪の結果になってしまい、このままどっちつかずではいけないと痛感致しました。

また、夢を追いかけるにも急がないといけない年齢だと感じている事もあり、

今年はコンテストに向けての作品作りの期間と定め、出したいコンテストが無い時にストックを貯めていく方針にしていきたいと思っております。

応援して下さっている方にはご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。

どうかよろしくお願い致します。


次回更新は1年後の、1月6日の予定です。

「猛原はまぁ別に好きにして貰ってもいいですが、

 死なれてもマチコさんが嫌な思いをするだけなので……一応忠告しておきます。

 今回向かう現場は環境が悪く、敵の戦力も総合的に見れば日本より上だという話です。

 貴方の力には時間制限がありますし、下手に突っ込めばそれだけリスクが高まります。

 足手纏いにならない様、注意しておいてください」

「!? わ、分かった……」


ソラちゃんが冷淡な口調で猛原くんにそう警告すると、

猛原くんは非常に驚いた様子を見せながらも返事をしたが、驚いたのは私も同じだった。

環境が悪い上に日本よりも強い敵──今回の相手はこれまでよりも気合を入れて挑んだ方が良さそうだ。


「笠羽殿、環境が悪いと言ったな? それはどういった風に悪いんだ?」

「なんでもイギリスではクローンの戦いが始まってから猛吹雪がずっと続いているようです。

 アイテムの効果で起きている現象らしいですが、それのせいで敵の姿がとても見え辛い為、

 敵に満足に対応出来てない状況みたいですね」

「ふむ……吹雪か。いんたーねっとで見た事がある。

 あの視界が塞がった状態で戦うとなると、確かに並みの兵士では厳しそうだな」

「イギリスは雪が降る事自体が稀らしいですし、現地の人達も慣れない環境でしょうからね」


吹雪というのは日本人でも経験している人はそう多くないし、私のその一人だ。

何かしらの対策が必要だろうが、そんな装備は持ってない。

これは着込む程度の防寒対策くらいしかやれる事がないのでは?

ただ、余りに着込んでしまうと機動力が無くなり、行動が制限されてしまう。

それは私のような近距離戦闘を主軸としている戦士にとっては致命的な隙となり得る。

出来れば最小限に抑えたいが、寒さの度合いも分からないし……どうすれば?


「ただ、ご安心を。実は〈マイルーム〉で色々と試していた結果、今回の遠征にぴったりの装備を見つけているんですよ!」

「えっ!? そうなの⁉」

「はい! その名も〈定温肌着〉! まぁ実際の効果は着て貰った方が分かりやすいですし、

 朝ごはんを食べ終わったらそれがある部屋まで案内するのでついてきて下さい」

「わ、わかったわ」


言われた通り朝食を食べ終わった後、ソラちゃんに案内され私達はそのアイテムがある部屋に行く。

そうして見せて貰った服はTシャツ型の肌着にしか見えず、特段変わった所はない。

しかし、ひとたび袖を通してみればその異様さに目を見開く事になった。


「……ちょうどいい」


私は思わずそう呟いた。

この案内されている部屋は特段寒いやら暑いやら感じる温度ではなく過ごしやすい状態だ。

ただそれでも空調がほんの少し行き届いていない所があり、足元や首元が心許ない感覚が微かにあった。

しかし、この肌着を着た瞬間それが一切無くなった。

腰辺りまでしか丈はないというのに、全身を肌触りの良い薄い膜で覆われたような感覚。

なんとも不思議な体験だ。

タイツのようにぴっちりとした触感はないのに、動きを阻害してくるような煩わしさもなく、健康的な体温を保ってくれている。


「これはまた奇怪な服だな……」

「す、スゲェ……」

「えぇ、説明書きにはプラスマイナス併せて100度まで防げる仕様だと書いてました。

 一応、参考としてわたしの方でエアコンを使って作れる限界の環境下で試してみましたが、暑さも寒さも全部防げていましたね」


別々に着替えてきた皆も同じように驚いている。

肌着というのもまた戦闘中の動きを制限しない服で良い点──の筈なのだが、

真人さんはその大きな体格のせいで一番大きいサイズでもパツパツになってしまっている。

今にも千切れそうだ。


「……真人さんはそれで動けそうなの?」

「ふむ……多少締め付けられる感じがあるが、戦闘に影響がある程ではない。問題はないな」

「そ、そう。ならいいけど」


戦闘中に弾け飛んだりしないんだろうか?

それはそれでちょっとカッコイイかもしれないけど、防寒が出来なくなるし万が一に備えて替えを何着か持っていくべきかもしれない。


「みんないいな……俺は〈ヒーロースーツ〉の制約のせいでその服は切れないんだよなぁ……」

「あぁ、そういえばそんな制限もあるって前言ってましたね。

 新しくなってもそうなんですか……ふーん。ま、死なないように頑張って下さい」

「軽いしヒデェな!? い、いや、〈ヒーロースーツ〉は等温性もあるから良いんだけどさぁ!

 俺だけ仲間外れみたいで嫌なんだよ!」

「知らないですよそんなの……ま、効果は無くなりますけど、

 着るのが駄目なら破いて首に巻きつけるとかすれば良いんじゃないですか?

 まだいっぱい在庫はありますしね」

「! そ、その手があったか! ありがとな笠羽! 遠慮なくそうさせて貰うぜ!」

「…………はい」


素直にお礼を言われたソラちゃんはこいつマジでやるつもりなのか……という顔になっているが、

猛原くんはそんな視線に気付く事もなく嬉しそうにしている。

皮肉屋なこの子とそれが全く通じなそうな彼とは、やはり馬が合わなそうだ。


ともかくこれで防寒対策は問題なくなったので、私達は各々準備をし終えた後に集合し、

家の〈ワープビーコン〉でいつもの空き地まで転移する。

事前に話していた通り、転移先にはカスミが私達にお辞儀をしながら待ち構えていた。

彼女の隣にはビーコンが既に設置されていて、遠征の手筈は万全に整えているのが分かる。


「皆様、おはようございます」


そう言ってから上げた顔は平静さを過不足なく持ち合わせていて、

依然と同じように機械的な印象を受けさせるものだった。

あの時のような感情が決壊したような顔つきではまるでない。

どうやら完全に持ち直しているらしい。

良かった……でいいんだろうか。いやきっと、それでいいんだろう。

それが多分、この劇を演じるうえで正しい形なのだから。


「準備は万端に整えておられますでしょうか?

 問題無いようであれば、今回の作戦目的地であるイギリスまで送らせて頂きます」

「全員万事オッケーですよ。さっさと行きましょう」

「ありがとうございます。ではこちらへ」


カスミに手を差し出されたので、私はその手に触れ、他の皆もカスミに触れていく。

猛原くんだけはカスミに触れる事に顔を赤めながら戸惑っていたが、

ソラちゃんが彼の手を無理やり引っ張りカスミの顔へと押し当てた。


「ぬん!」

「えぇええぇっ!? お、おまっ、なにしてっ!? あ、いや、それより! ご、ごめんなさい!」

「……わらしはかまいません。それれはみなさまぜんいん、

 わらしにふれていることをかくにんできまひたので、

 これよりもくてきちまでてんいいたしまひゅ」

「!? い、いいのっ!?」


カスミは無表情にそれを受け入れたまま、ビーコンのスイッチを押す。

頬がぐにゃりと押されたままそうする彼女の姿はとてもシュールで、少しだけ面白かった。

だけど、どこか投げやりになっているようにも見える気が……気のせいだろうか?


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