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第154話 油断してた

私達の武器の名前が決まった所で、真人さんにも進捗を聞いてみる。


真人さんは貰った鎧を着ながら、新しいサーベルを振り続けていた。

真向切り、袈裟斬り、逆袈裟切りと一通りの斬り方を試したのは当然として、

今、真人さんは仮想敵を相手取ったイメージトレーニングを行っていた。

目の前に敵がいると仮定し、その敵がしてきた攻撃に対して

取るべき適切な行動を予想して、その通りに身体を動かす訓練だ。

要するに〇牙のアレである。


「真人さん。どう?」

「あぁ、これは良い鎧だ。堅固だというのに、

 激しく動いても全く邪魔にならない靭やかさも備わっている。

 このサーベルも見事なものだ。コンクリートの壁もスルリと切り裂ける上に、

 刃こぼれ一つ起こさない。素晴らしい武具を貰った」


……疑ってしまっていたが、聞いてる感じ特殊な能力はないが、

武器としてはちゃんとしてる辺り、地球は手抜きで渡した訳では無さそうだ。


「そう、良かった。名前とか決めた?」

「名前か……前の装備も名はないし、

 別に必要ないと思っていたが……マチコ殿はつけたのか?」

「うん。まぁ、黒い刀って呼ぶのも味気ないし、一応ね。〈空籠〉って名前にしたわ」

「ほう……よく分からないが、良い響きがする名だな。ソラ殿も名付けたのか?」

「はい。〈フラミンゴ〉と〈ラピスラズリ〉です」

「ほう……よく分からないが、何処となく深みを感じさせる名前だな」

「……そっか……」


よく分からないとの事なので、

恥ずかしくはあったが私達は真人さんにそう名付けた理由を話した。

空から連想する名前を私達がつけたので、

真人さんもそれに倣って付けたいと話してくれたので、

私達は三人で真人さんの鎧とサーベルの名前を決めていった。


そして、鎧を〈空鎧くうがい〉。

サーベルを〈空刀くうとう〉と呼ぶ事にした。


……こんな単純な名前にするつもりは無かったのだが、

私達が色んな意味を込めて考えた名前を提案しても、

真人さんは何だかよく分からないという顔をしてしまうので、

結果的にこうならざる負えなかった。


名前を三人で決め終わってからも、

カスミ達が来るまで私達はアイテムの性能確認を続けた。







それから時間にして大体一時間程経った頃に、

カスミだけがワープして戻ってきた。

他の二人の姿はない。自分達の仕事に戻ったのだろうか?


「お待たせしてしまい、申し訳御座いません。

 しかしながら、ここに残って頂いていていたという事は、

 私共の計画に参加して下さるという判断をして下さったと、

 解釈しても宜しいのでしょうか?」

「……えぇ。仕方ないから、参加してあげるわ」

「──心より感謝致します。それでは計画の詳細を……」

「待って、私達が地球さんからこれを受け取ったのはもういいの?」


私が片手で持っている〈空籠〉を指で指してそう尋ねると、

カスミは本心を隠しきれないのか、ほんの僅かに眉を顰めて答えてくる。


「…………はい。私共からこれ以上、

 そちらのアイテムに言及する事は御座いませんので、ご安心下さいませ」

「……安全性云々の話は?」

「ご心配には及びません。

 現物が手元になくとも確認出来る方法で全て検査し、

 安全であると既に判断出来ております。

 なので、そのままご使用頂いて問題ございません」

「そう……なら、別に持っててもいいのね?」

「はい。それでは別の場所にて説明させて頂きますので、

 皆様はどうぞ着いてきて下さい」


それからカスミに着いていき、

私達はデパートを出て近くにあった喫茶店へと通された。

通された席には淹れたての珈琲と美味しそうなお菓子が沢山用意されており、

私達を歓迎しますと声高らかに告げているようだった。


以前の私達ならその歓迎を蹴っていたと思うが、今の私達には地球の加護がある。

少しくらいなら貰っても良いのではないだろうか……?

いや、流石に油断し過ぎ……? 


「……マチコさん。食べたいんですか?」

「えっ!? うぅ、えっと……それは……」

「……まぁ、今回は別に良いとは思いますけど、

 地球さんの加護に頼り過ぎてはいけませんよ?

 万が一という事もありますからね」

「わ、分かったわ……」


子供みたいに窘められてしまった。

恥ずかしいとは思いつつも、私は案内された席に座ってから、

一応断りを入れて用意されていた菓子の一つであるクッキーを頂いた。


「……美味しい」


クリーム等のトッピングのないただのクッキーではあったが、

しつこくない上品な甘さを感じられる味わいだった。

中々良いセンスしてるじゃないか……。



「──漸く、召し上がって頂けました」



聞き逃してしまいそうな程に小さくそう呟いたカスミを見れば、

今までの冷徹な顔が信じられないくらいに優しく、嬉しそうな顔をしていた。


私がその顔に啞然となっていると、

カスミは自分が緩んでいた事に気が付いたのか、

直ぐにいつも通りの顔付きへと変わる。


び、ビックリした……何だったんだろう今の。


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