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第151話 早く話を聞かなくては

地球から貰った刀はどうやら途轍もない能力を秘めていたようだ。

アイテムを格納して持ち運べるのは前提条件でしかなく、

その格納したアイテムの能力まで使えるようになるなんて……

一体どれ程多彩な戦術を生み出せるというのか。


〈灯り石〉を入れ込まないと能力が使えない、〈冠天羅〉の上位互換といえる武器だ。

お守り代わりに貰う筈だったアイテムがこんなに強くていいのだろうか……? 

運営の計画に支障が出ないのかと少し心配になってくる。


『あぁ、でも限度はあるよ。刀に入れて能力が使えるアイテムの限度は

 十個くらいの筈だから、無理に入れないようにしてね。

 もし限界を超えて入れようとしたら、そのアイテムは凄い勢いで弾き出されて、

 何処かに吹っ飛んじゃうかもしれないから』

「えっ、何それ……? いや、っていうか……上限はわからないの?」

『この刀は今生み出したばかりで性能を試せてないからね。

 目安としてはそのくらいだと感じたんだけど、正確にはわからないんだ。

 あ、それとその刀を使って戦う時は〈冠天羅〉の刀か鞘を入れたままにしてね』

「……どうして?」

『その刀はあくまで"土台"でしかないからさ。その刀自体に対した性能はない。

 多分君が本気で殴ったら、それの刀身は簡単に壊れてしまうだろう。

 だけど、他のアイテムを格納してその刀の能力を底上げしていけば、

 その刀はどんなアイテムよりも強くなる。

 〈冠天羅〉の真骨頂はその強度と切れ味の高さにあるからね。

 〈冠天羅〉さえ入れておけばその刀は絶対に壊れない筈だよ』


……成る程。この刀は詰まる所"入れ物"なのか。

これの鞘に入れ込むアイテムは、刀に対しての所謂"配合素材"として機能し、

刀自体の耐久値や切れ味……ステータスで言うところのATKとVITを上昇させていき、

アイテムに備わっている能力ごと継承する。

それを繰り返していくことで、この刀は最強の武器となる訳だ。


「……凄そうだけど、私に扱い切れるかな……?」

「心配はいりません。わたしに任せて下さい。

 今出来る最強の組み合わせを考えてみせますよ」

「そうね。私が考えて中途半端になっても駄目だし、

 ここはソラちゃんを頼らせて貰おうかな。いつもありがとね」

「いえ! 私はマチコさんに頼られるのが一番嬉しいですから!」


そう言ってくれるソラちゃんはついさっきまで、

運営に追われていた時の表情がまるで嘘のように晴れやかに見えた。

どうやら地球に協力して貰えた事で安心出来たみたい……良かった……。


『よし……じゃあ、アイテムも渡せたし、そろそろお別れかな? 

 佐藤真知子が安心出来る空間の提供については、

 また後日何らかの方法でお知らせするよ。

 最後に聞いておきたい事はないかい?』

「……そうねぇ」


運営の計画については聞いても答えられないようだし、

他に何を聞くべきだろうか……?


「地球さん。マチコさんの代わりに

 わたしが質問をしてもよろしいでしょうか?」

『勿論いいよ。なんだい?』

「……これからも、地球さんに手助けをお願いする事は可能でしょうか?」


私が悩んでいる様子を見ていたソラちゃんが、

話に割り込んでそう質問してくれる。

確かに地球にいつでも助けて貰えるのであればとても心強い。しかし──


『残念だけど、僕がこうして君達のもとに現れたのは

 あくまでも謝罪の為だからね。

 彼らの計画をこれ以上狂わせる訳にもいかないし、

 僕が助けられるのは……多分、これで最後かな』

「……やっぱり、そうですよね……」

『だけど、大丈夫。僕は君達をいつでも見守っている。

 君達にもしもの事があれば、直ぐに助けると約束するよ』


地球は愛しさを感じさせる口調で、私達にそう言ってくれた。

青白い光でしかない存在だというのに、

その言葉にはしっかりとした安心感が感じられる。

この光は……誰かが名付けた"母なる星"と呼ぶに相応しいのかもしれない。

今なら少しだけ、そう思えた。


『他に質問はある?』

「……時間があるのでしたら、まだまだ答えて頂きたい事は山程あります。

 聞いてしまっても大丈夫でしょうか?」

『う、うーん……そんなにあるの?

 それ、全部に答えてたら言っちゃいけない事まで言っちゃいそうだな……。

 君は頭も良いから、ちょっとした事で察してしまう恐れもあるし……』

「……では、これが最後の質問とさせて下さい。

 命素を自在に操る方法、もしくは命素を感じられる方法を

 教えて頂く事は可能でしょうか?」

「!」


そうか。ソラちゃん達は命素を操る事が出来ないんだった。

成る程……確かに皆も命素を操る事が出来れば

これからの戦いを非常に有利に進められるだろう。

しかし、その期待とは裏腹に地球は残念そうに首を振ってしまう。


『……それを僕が教えるのは駄目そうだなぁ。

 だから、真知子とか、他の人に教えて貰ったらどうかな?』

「……マチコさん。教える事って出来そうです?」

「えっ!? あ、いや、私は感覚でやっちゃってるから、

 教えられるかはどうかは自信ないかも……」

「まぁ、そうですよね……。

 はぁ、やっぱり覚えるのは時間が掛かりそうですね……」

「俺が出来るようになったんだ。心配する事はない。

 器用な笠羽殿なら直ぐに覚えられるだろう」

「……んっ!? 真人さん、命素使えるの!?」


あっけらかんと話すから聞き逃しそうになったが、

真人さんも使えるようになっていたの!?

私のように無意識に使っていた訳でもない筈だし、

てっきり使えないとばかり……。


「あぁ。あの病院で真知子殿がカスミに言われて成長玉を変化させていただろう?

 あの時に感じた力の流れを思い返していたら、

 自然と自分の中にある命素を感じ取れるようになったんだ。

 だから、真知子殿を助けたあの戦いでも、

 自分の命素を利用して身体能力を向上させて戦えていたというわけだ」


……あぁ、だからあれだけの動きが出来るようになっていたのか。

しかし、あの一瞬で命素を感じ取れていたなんて……

私もそうだったからなんとも言えないけど、

どうやら感じやすさには個人差があるみたいだ。


「……私は全く感じなかったんですけどね。

 もしかしたら優秀な戦士であればある程、

 命素を感じ取れる能力が高いのかもしれませんね」

『あー、それはあるだろうね。

 君以外の花の候補者何人かも無意識に命素を使っているのを見たことがあるし、

 戦いに長けている人間の方が使い方を学びやすいんだと思う。

 あ、いや、これは言っちゃまずかったかな……?』


地球はソラちゃんの言った事を肯定するような発言をした後、

自分の口を両手で抑えた──が、直ぐに思い直したように胸を張った。


『ま、これくらいならきっと大丈夫だろう。

 さて、質問にも一応答えたし、僕はそろそろ退散する事にするよ。

 "追手"を抑えておくのもそろそろ忍びなくなってきたしね』

「……追手? あ、まさか」

『では、元気でね。皆。君達の行く末が上手くいく事を常に願っているよ』


そう言った後、青白い光の人形は地面へと戻っていった。


そして、ほぼ同時に階段からカスミが、ヒガンとミモザを引き連れ、

息を切らしながら忙しなそうに降りてきたのだった。


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