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第150話 ようやく壊れました

──やはり、これらの道具は私達の為に用意していたものだったらしい。


感謝を告げてから、私達はそれぞれ自分達のアイテムを受け取っていく。

私は刀を。真人さんはサーベルと鎧を。ソラちゃんは鉄砲と弾薬を受け取る。

ただ、山積みに積まれた弾薬をソラちゃん一人で運ぶのは大変そうなので、

私と真人さんも一緒になって弾薬を拾い、ソラちゃんのリュックに詰め込んでいった。


そうしてソラちゃんがパンパンになったリュックを背負おうとするが、

余りの重さからか、ソラちゃんは両腕をブンブンさせながらずっこけてしまう。


「ぬわぁ!」

「だ、大丈夫!?」


ひっくり返った亀のように起き上がれなくなってしまったソラちゃんから、

私達は慌ててからリュックを外して、ゆっくりと彼女を地面に下ろした。


「ご、ごめん」

「すまない。気付くべきだった」

「い、いえ、大丈夫です。助けてくれてありがとうございます。

 銃弾をあれだけ詰め込めば背負えなくなるくらい、

 少し考えればわかる事でしたね……気が抜けてました」

「ううん、ソラちゃんは悪くないわよ。

 力のある私が最初から持てば良かった話だし」

『ふふっ、そうだね。ソラは悪くない。

 それにその弾薬は一つ一つにとてつもない量の水が

 圧縮されて入っているからね。重いのも当然だろうさ』

「……水?」

『あぁ。水色の弾丸にはただの水。黒色は〈重水〉。

 白色は〈粘水〉がそれぞれ入っているんだ。

 その専用の拳銃に弾丸を装填し、発射して何処かにぶつければ

 即座に弾丸が破裂して中に入っている水が噴射される。

 中の水量は以前ソラが使っていた〈水鉄砲〉のタンクと同等だから、

 数発連続して撃ち込めば洪水レベルの水流を作り出せるだろうね』

「おぉ……凄い。ありがとうございます。地球さん」


……思ったよりもとんでもないものだった。

あのタンク一つを病室で破裂させただけでも凄い量の水だったのに、

それを連続して発生させる事が出来るなんて……。


『どういたしまして。次に……真人って名前だったよね?

 君に渡したそのサーベルと鎧には何の能力もないが、頑丈さだけはとても高いものだ。

 充分に、君を助けてくれる武具になるだろう』

「……俺にもアイテムを寄越してくれるとはな……本当に感謝する。地球殿」

『良いよ。君は佐藤真知子の仲間だからね。

 君が死ぬとこの子も悲しむだろ? それは僕も嫌だからね』


うーん、その割にはなんか手抜き感があるような……?

真人さんの対応もどことなく素っ気ない感じがするし……気の所為だろうか?


『さて、最後に真知子。君に渡したその刀なんだけど、

 それは君が使っている〈冠天羅〉と一緒に使うものだ』

「……え?〈冠天羅〉と?」


地球から貰った武器を使うという話だったので、

てっきりもう〈冠天羅〉とはお別れと思っていたが……使っても問題ないって事? 


〈冠天羅〉は運営が用意した刀なので、

その点は気に入らない所だったが、武器の性能や使い心地自体は気に入っていた。

道具には罪はないし、一緒に戦ってきて手が馴染んでいた

この刀を使い続けれるのであればそれに越したことはないのだが……。


『先ずは君の刀である〈冠天羅〉を呼び出してみてくれるかな? 話はそれからだ』

「わ、わかったわ。〈冠天羅〉」


私は地球に言われた通りに黒い渦巻きから

〈冠天羅〉を飛び出させて、自分の手に握った。


『よし。じゃあ〈冠天羅〉を僕が用意したその刀に"入れ込んで"みてくれ』

「……は?」


地球は〈冠天羅〉を指差した後、黒い刀へと指を向けながらそう言った。


刀を刀に入れる?

何を言っているのかと私が胡乱げな顔を浮かべていると、

地球は察したかのように拳で掌は叩いた。


『あぁ、確かにその物の本来の用途からすれば考えられないよね?

 ごめんごめん。その刀……正確には鞘の横腹に〈冠天羅〉を当ててみて。

 そうすれば僕の言った事が分かる筈だよ』

「え? う、うん……」


そして、私は地球から貰った黒い刀の鞘に〈冠天羅〉を当ててみた。

すると、黒い鞘に〈冠天羅〉はぶつからず、

まるで泥の中へと刀を突っ込んだような感覚とともに、

ズルリと鞘の内側へと入っていった。


「え、えっ!? 何なのこれ!?」

『ふふっ、いい反応だ。

 さぁ、そのまま〈冠天羅〉を全部その刀に納めてくれ』


その光景と感覚に驚きながらも私は〈冠天羅〉は黒い刀に入れていく。

ズブズブと〈冠天羅〉が鞘の中へと入り込んでいき、

やがて最後にはその全てが黒い刀の中へと呑み込まれてしまった。


「……こ、これ〈冠天羅〉はどうなったの?」

『慌てなくていいよ。いつもと同じ様に刀の名前を呼んでみるといい』

「? いつもと同じ……〈冠天羅〉!」


そう呼んだ瞬間、私の目の前に黒い渦巻きが拡がった。

そして、渦巻きの中からゆっくりと〈冠天羅〉が横向きに排出されて、

ポロっと下に落とされたので、私はびっくりしながらも〈冠天羅〉を手でキャッチする。


『このように、その黒い刀には武器をいくつでも収納出来る機能が備わっている。

 今は〈冠天羅〉しか入れてないけど、同じ様に他の武器も入れ込んでいって

 名前を呼べば何時でも好きな所で取り出せるよ』

「な、成る程……便利ね」


〈アイテムボックスアプリ〉と殆ど同じ機能だ。

胸から勢いよく飛び出す所だけ違うが、

これはこれで取り出し易いし、一つだけという制限も無くなる。

でも、こんな大層な見た目の刀なので、てっきりもっと新しくて、

凄い機能があると思っていたんだけど……。


少しだけ残念がっていたら、人型の青白い光がクスクスと笑い出した。

そんな私がそう思うのを見越していたような反応の後、

地球は待ってましたと言わんばかりに語り出す。


『ふふふ、その刀の本領はここからなんだよ?

 なんと、その黒い刀はね。鞘に入れ込んだアイテムの全ての能力を使えるんだ!

 君が今まで手に入れてきた〈冠天羅〉も!

 〈灯り石〉も、〈スクワダ〉も、ついでにソラが持ってた〈水鉄砲〉も! 

 みーんな鞘に入れちゃえば、全部その刀で使えちゃうんだよ!』

「──はぁっ⁉」


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