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第14話 彼女の能力は相変わらずですね

「おっごっ!?」


来襲してきた男に私がそう言った直後。

笠羽ちゃんはアイテム上げる男の頭を〈水鉄砲〉のグリップで叩きつけて脱落させた。

そして、襲撃してきた男に向けて、〈水鉄砲〉を二発撃ち出す。


ここで全員仕留め切るつもりなのだろう。

さっきまで突然の襲撃に驚いていた筈なのに……やっぱりこの子は戦い慣れてる。


「──!?」


しかし、発射された水弾は、

どこからか現れた浮遊する盾に防がれてしまった。


一体どこからやってきた……!?

そう驚きながらケバい見た目の盾の出所を探してみると、

男が身に着けていた籠手が無くなっている事に気が付いた。


盾と篭手は同じ意匠のようだ──察するに、

どうやらあの篭手が浮遊する盾へと変形し、装備者の身を守ったという事だろう。

そんな便利なアイテムまであるのか……!


笠羽ちゃんは続けて〈水鉄砲〉を男に2、3発程撃ったが、

その弾は全てその盾に防がれてしまう。

そうして攻撃が通用しないと判断したであろう笠羽ちゃんは

男に水弾を撃ち続けながら私の下までやってきた。


「佐藤さん。すいません……油断してました」

「ううん、大丈夫。でも、さっき〈敵感知アプリ〉は

 鳴ってなかったわよね? もしかして……」

「はい。どうやらあの男はアプリの探知を無効化する事が

 出来るアイテムを持っているようです」

「やっぱり……」


いるかもしれないとは予想していたが……

こうして現れるとこうも面倒な事になるものなのか。

戦闘用の装備も充実している様だし、これは結構な難敵になりそうだ……。


来たる脅威に私が眉間にシワを寄せていると、

地面に倒れ込んでいた男が立ち上がり、私達の方へと振り返った。


──まるで何人も人を殺してきたような、暗く淀んだ目だ。

この平和な時代でこんな目を見る事になるとは……

どうにも現世は逆行しつつあるらしい──


……ん? 私、今……なんでそんな風に考えて……?


自分の思考を訝しんでいると、

男が私達をギョロギョロと観察した後、クヒッと笑った。

……何がおかしい。


「クヒヒ……お前らチームを組んでるみたいだなぁ?

 しかも、そっちの女は俺と同じで〈成長玉〉を使ってる。

 そうだよな? 全く、嫌になるよなぁ……。

 なんでお前たちみたいに人生楽そうな奴らでも、良い縁に恵まれて、

 良いアイテムまで引けてんだよ? ヒヒッ……なぁ?」

「……?」


何を言ってるんだこの人?

っていうか臭い。明らかに風呂に入ってない臭いがする上に服も汚い。

このイベント、不潔なやつ参加しすぎでしょ……


「俺はこのガチャを引くために借金しまくって、ここまで強くなったのに……。

 お前達は大して金使ってないんだろ?

 そんな綺麗な面と恰好してるんだからよぉ? 

 ひひ……不公平だよなあ? 不公平だ。

 このゴミみてぇな世の中はさぁ……くひひひひ。

 こんな世の中は俺みたいな選ばれし者が、

 掃除してやらなきゃいけないよねぇ……ひょひひ」


やばい。気が狂ってる。

意味不明な言動をしていたと思ったら、斧の刃先をぺろぺろし出したし。

何がどうなったらこんな化け物が生まれるんだ。

気持ち悪いのでさっさと脱落して貰いたいが……

あの自動防御の盾相手にどう攻めればいいんだろうか。


私が悩んでいると、何故か笠羽ちゃんが一歩前に出た。

何をする気だろう?

そして、笠羽ちゃんは唇に指を当てながら、猫なで声でこう言った。


「うーん。何言ってるかわからないんですけどぉ、

 お金持ちとか綺麗な面とかって言ってくれたって事はぁ、

 私達を褒めてくださったんですよねっ? ありがとうございまーす!」

「ちょぉおお!?」

「あ?」


何で煽ったんだこの娘えええ!!?


「あ、あ? あ、あぁああああ!!? 

 お、おおおままああえええええ!!

 おれ、お、おれをばかにしたなああああ!!!?」

「うわあああ!?」


笠羽ちゃんの言葉で、さっきまでの不気味な笑い顔が一変し、

鬼のような形相になって男は絶叫した。

自分を小馬鹿にされた事でビール腹の男は、その怒りのせいか地団太を踏み始めた。

ドスンドスンと、男が踏み鳴らす度に凄い音が辺りに響き、木々が揺れる。


「あれあれ~? なんで怒っちゃったんですか~?

 わたしぃお礼言っただけなのにぃ~」

「だ、だだだだれが、だれがそんな、そんああああああ!!」

「も、もうやめて! なんでそんなに煽るの笠羽ちゃん!

 ストップ! ストップー!」

「こここころすぅ!! ころしゅうううう!!!」

「ひぇえええ!」


男はその怒りをぶつける為、

斧を振りかぶりながら笠羽ちゃんへと突進した。

かなりのスピードではあったが、見切れない程ではない。

私の剣はすんなりと間に合う。


しかし、あの盾に防御された場合はどうすれば……

いや! 悩んでる場合じゃない!


破れかぶれになりながらも、私は笠羽ちゃんを守る為に、

突っ込んでくる男に向かって剣を振るった。

すると、何故か盾は私の目の前には現れず、私の斬撃は男の頭に当たった。


「えっ!?」

「おぉお!? な、なんでぇえ……!?」


その衝撃で男はパリンと発して、地面へと叩きつけられた。

ど、どうして盾が守りに来なかったの?


「佐藤さん。もう一度攻撃して下さい」

「あっ! はい!」

「うご」


私が茫然としていると、酷く落ち着いた声で

笠羽ちゃんがそう指示を出してきたので、私は慌てて男の背中を剣で突いた。

明るい元気な声ばかり聴いていたから、

そんな声を聞くとちょっと怖く感じるなぁ……。


3回目の攻撃が決まり、全てのバリアが無くなった事で、

ビール腹の男は灰色の煙に包まれて脱落していった。


その光景を眺めながら、私は笠羽ちゃんに何をしたのかを聞くと、

笠羽ちゃんはウインクしながら説明してくれる。


「ふふっ、簡単です。単純にあの盾の習性を利用したんですよ」

「……どういう事?」

「佐藤さんがあいつを地面に吹っ飛ばした後、

 わたしはあいつに向かって〈水鉄砲〉を何発か撃ってましたよね?

 あの時、わたしはあの盾が防御するまでの反応速度と硬直時間を計っていたんです。

 そして、図った結果。その速度と時間は大した事はなく、

 〈水鉄砲〉を撃ち込んで牽制するだけで、盾の動きを止められる事が分かりました」

「……!」


あれは単に〈水鉄砲〉で攻撃してる訳じゃ無く、

敵の情報を得る為の"試験"だったのか。

突然の敵襲や奇抜なアイテムに踊らさせる事もなく、

無情なまでに平静さを保って敵を分析を始めていたなんて、

やっぱ只者じゃないってこの子……!


「後はあいつを怒らせて周りを見えなくしてから突撃させて、

 佐藤さんがあいつを迎撃したタイミングで、

 わたしも〈水鉄砲〉を盾に撃ち込めば……ご覧の通りという訳ですね」

「……そう、なんだ。でも、なんで私が攻撃するってわかったの?」

「それは……えへっ。佐藤さんは優しい人なので、

 必ずわたしを守ってくれるって信じてましたから!」

「……そっかぁ。信用してくれて嬉しいわぁ……」

「はい! 頼りにしてますからね!」


──あの一瞬の間に作戦を決めて、実行のための検証まで行ってたってこと?


私は笠羽ちゃんが戦闘AIに見えてきた。

しかも、あんな狂ったおっさんを目の前にしてって……どんな精神力だ。

きっとこの子の心臓には毛がもっさりと生えまくっていて、

毬藻みたいになっている事だろう。


そうして笠羽ちゃんの鬼才っぷりに震え上がっていると、

〈敵感知アプリ〉が反応した音が鳴った。


「あ、やっぱり敵結構来ましたね。2人来てます」

「え!? ほ、本当? どこから……"やっぱり"?」

「西北方向と、東方向です。

 ちょうどいい間隔で来てくれましたねー。

 あぁ、それとやっぱりって言ったのは勿論、

 敵が来るって分かってたからですよ?

 あいつを怒らせた理由は思考停止させる為だけじゃなくて、

 大声で敵を誘き寄せてもらう為でもあったので。

 森の中で戦えるように仕向けた方が、こっちの都合がいいですからね♪」

「あ、あはは……は……」



────この女子高生、怖い!!!



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