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第127話 悪あがきもここまでだ

カスミは中継を見ている人達の御札を試す時間を取る為か、

また暫くの間壇上で口を閉ざした。

そして、五分程経った所で、彼女は話を再開し始める。


『──ご確認頂けましたでしょうか?

 また、その御札は家の壁に貼り付ける事で、

 家全体に見えない壁が貼られ、ご家庭の安全を守る事も可能ですので、

 ご使用頂ければと重ねて申し上げます。

 いかがでしょうか? 我々は皆様の幸せを

 心より祈っている事をご理解頂けましたでしょうか?

 もし、ほんの少しでも我々の誠意が皆様に伝わっているのであれば、

 これ程嬉しい事はございません』


……本当に嬉しいと彼女は思っているのだろうか?


多分、このテレビを見ている大勢の人と同じで、

私はカスミを少しは信じたいと思ってはいる。

だが、ソラちゃんが全く信用していないし、

私自身も何処か引っ掛かっている所があるので信用は出来ない。


いや……というより、カスミを"信用したい"ではなく、

"縋りたい"と思ってしまっているのだろう。

自分達で立ち向かう事は出来ないから、こんな風に頼れる誰かが居て欲しい。

仮に偽物の信頼であっても、仮に乗れば沈む泥船だとしても、

支えとなる何かだと信じたいんだ。


──ただ、私が彼女を心配する言葉を投げかけた時、

あの時に流した涙は、とても偽物とは思えなかった。


あの涙が、私を思いやって流してくれた涙なのか、

それとも自分の境遇を心配してくれた事で流した涙なのかは分からない。

分かった所で本当なのかも区別は付かないが、

それでも──人間らしい感情は持っているように思えた。


彼女の本心はどこにあるのだろう。

私は彼女をどう見ればいいのだろうか……?


『我々は皆様を救済する為、他にも様々な手段と計画をご用意しております。

 賛同して頂ける方々は我々にご連絡下さいませ。

 最大限の支援をご提供する事をお約束致します。

 我々への各連絡方法をモニターに表示しておりますので、

 どうぞご連絡して下さいますよう、お願い申し上げます。

 ここからは目の不自由な方へお伝えする為、

 電話番号やサイトへのURLを読上げさせて頂きます。

 電話番号は───』


カスミが演説している間、背後にあるモニターには

ずっと私がモンスターと戦っている映像が流れていたが、

ここまで話したタイミングでモニターの映像は電話番号やサイトのURL、

様々なSNSのアカウント等が画面いっぱいに表示された。

はぁ……やっと消えてくれた。これで少しは気が楽になったな。


それにしても、さっきから事実とは違う話があったりしていたが……

これも"シナリオ"の一貫という事なのだろう。


今のところ、"あの御方"についての言及は一切行われていないところを見るに、

一連の事件はガーパイス株式会社だけで実行されたと認識させるつもりなのかもしれない。

それがなんの意味を持つのかは分からないが……。


──取り敢えず、私達もこの連絡先に連絡すればいいのだろうか?

そう疑問に思ってソラちゃんを見ると、ソラちゃんはつまらなそうに、

連絡先が映っているテレビ画面をスマホで撮影していた。


「……連絡してみるの?」

「連絡はするつもりはありません。

 一先ず情報として確保しておくだけです。

 恐らくまだ……この放送は終わらないでしょうから」

「え? 連絡先とか教えてきたし、

 そろそろ終わりそうな感じだけど……?」

「これではまだ足りないんですよ。カスミの組織、

 そして、マチコさんを英雄とする為の──その演出が」



そして、ソラちゃんの不穏な言葉を合図としたかのように──

突如、テレビに写っている議場の天井が爆発した。



爆発によって生じた瓦礫が自分達へと降り注ぐ前に、

カスミが天井へと両手を翳した。

すると、あの病室で出現させた円状の青白い膜が

カスミ達を覆い、落ちてくる瓦礫を防ぐ。


しかし、落ちてきたのは瓦礫だけではなかった。

人影が傍聴席の中央へと急降下し、その衝撃によって御傍聴席が半壊する。

破壊されて巻き起こった砂煙が晴れると、その中から人間の男が現れた。


男はミディアムボブくらいの白に近い金髪を

肩まで掛かるくらいまで真っすぐに流していて、

顔の綺麗さも相まって一見すると女性のようにも見えたが、

身体つきはしっかりと男性とわかるものだった。

瞳は宝石のように色鮮やかな翠眼で、

その目を腹立たしそうに歪ませて、男はカスミ達を睨みつけていた。


男が来てるスーツは、最初にあった時の

カスミとヒガンが着ていたスーツとデザインが一緒だ。

爆炎の中上空から落下してきたのに五体満足で、

そんなスーツを着て登場する存在は……この世でたった一人しかいないだろう。



────あの男が、"社長"だ……!!!



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