賢き男
拙作は処女作な為、文が終わっています。プロットも終わっています(完成してるという意味でなくて)
そんな作品ですが、「読んでいる作品全ての更新がまだで暇だ」っていう時にでも読んで頂けると幸いです。
「はぁ」
嘆息しかできない。
ただ、その嘆息と言うのは彼―――榎本翔真の目の前に広がる光景にではなく、彼の脳味噌がその光景から想像しうる状況を記憶の中から探し出そうとして、ついに発見できなかったこと・・・つまりは自分への嘆息だった。
だがその反応は大抵の人にはできないものであり、榎本翔真だからこそできたもの、つまりは日本一の進学校と名高い<真明館学院>に在籍している者であったからと言える。
「この光景と憶えている最後の記憶から察するに・・・さしずめ、誘拐ってところかな。それにしては拘束もないのが不自然だけど」
この光景・・・だたっ広く続く荒野と暗い空を見て。そして少しの間目を瞑って。その末に翔真が発した言葉は、他人が聞けばかなり信憑性が高いものとしてあっさり信じてしまうだろう。
ところが、翔真はそこで止まらない。自分が拘束されていないことに疑問を持つ。
そこまで考え辿り着ける人間は一握りしかいないだろう。
何せ翔真は中等部から高等部に進む際のクラス分けテストで一番上のクラスに入り、高等部の二年生である今は学年次席の成績に収まっているのだ。
そんな翔真の思考についていける人間は、世界の名だたる大学の生徒達や、高名な学者くらいのものだ。
「もしこれが誘拐でないとするなら・・・・・!?」
考えが纏まらずふと上を見た時、翔真は比喩でもなく本当に時が止まったのかと思った。
「星が・・・・・・・・ない?」
翔真の言葉の語尾が疑問形になっていたのも仕方無いと言える。
なにせ、人間にとっては当たり前だった星の瞬きが全くなく、空は完全なる暗黒なのだ。
だからこそ気付いた。翔真だからこそ気付いてしまった。何がこの荒野を照らしている?
空に星の瞬きもない全くの暗黒の中、目の前に広がるのが荒野だと認識できたのは何故だ?
フル回転した翔真の脳味噌は色々な可能性を考える。そして、
「迂闊だった、後ろに光源があるのか!」
自分が後ろを確認していないという事実から一つの高確率な可能性に行きつき、勢いよく振り返った。
「・・・これは、なんだ?」
翔真の一七年程の人生の中で、見たことのないものだった。そして、賢いが為に理解した、してしまった。
これが、未だかつて人類の目に触れたことの無い物だと。
そこまで思い至り、冷静になれた。驚きを好奇心が飛び越したために、観察する者の目に変わった。
それからの行動は流石としか言いようのないものだった。
その地球外物質―――空中に浮かぶ直径二メートル程の光を発する球体をペタペタ触って感触を確かめたり、そこらに落ちていた石を投げてみたりした。
そうして調べた結果得られたものは、なぜか殆どなかった。
手触りがツルツルしていることと、光は球体のどこかから発している訳ではなく、球体自体が発していること、そしてとてつもなく硬いということだけだった。
観察する為の環境では勿論なかったためその程度しかできず、五分くらいで自分の置かれている状況を再度確認する羽目になった。
星の無い空、ただただ続く荒野、未知の光球・・・なんて現実味のない場所なんだ。まるでファンタジーのような・・・・
「・・・ファン、タ・・・ジー?」
そう呟いた瞬間、翔真の中ですとんと納得できてしまった。
「これは・・・マズいな」
突然ファンタジーの世界にご招待されるような類の小説を読んだことがあった翔真は、この後の展開を予想してしまった。
「こういう時は強敵が出る可能性がある・・・はやくここからはなれ「パキッ」・・・ん?」
厄介事を予防するためにどこかに逃げようとしていた翔真は突然聞こえたひび割れのような音がした方に顔を向ける。
そこでは、未知の光球にひびが入っていた。
とりあえず・・・何も進んでないじゃん!!!
はい、進んでません。なんか主人公が賢いぞ~って言っただけでした。
次回、やっと主人公以外のキャラが出ます・・・きっと!
どの表現をこうするといいよ~とかのアドバイスあると狂喜乱舞します。