アンジュレスの呟き Ⅰ
マンジューク防衛戦の最終日。
そこで起こった出来事と、無能のレッテルを張られたフランベーニュ軍の将軍についてのエピソードです。
ドミニク・アンジュレス。
マンジューク防衛戦において、フランベーニュ軍の崩壊を導いた人物として、フランベーニュ軍の黒歴史に名を記される者である。
さらにいえば、アンジュレスは山岳地帯の突入する際にも、大きな失敗をお貸していた。
南側から鉱山地帯に入るふたつの入口のうちのひとつベンティーユ奪取を命じられていたにもかかわらず、周辺の耕作地帯と点在する砦攻略に勤しんでいる最中にアリターナ軍に先を越されていたのだ。
そして、その結果が元同格のロバウ配下の一将軍という地位。
そのアンジュレスが前線の指揮をしている最中に迎えたあの日。
何の前触れもなく起こった轟音。
振り向いたアンジュレスはすぐに気づく。
配下の魔術師が全滅したことを。
むろん、この後に何が起こるかは想像がつく。
「やってくれたな。クソ魔族」
爵位持ちのものとは思えぬ言葉を吐き散らかし、その時を待った。
だが……。
「……どうした。さっさと……」
戦いの様子を眺め直したアンジュレスはすぐに気づく。
お互いに斬っても斬られても無傷であることを。
そして、こちらの魔術師を排除したはずの魔族軍の戦い方に変化がないことにも。
何が原因であるかはわからない。
だが、魔術師を失っている自分たちにとってその状況はありがたいかぎり。
……魔族が気づかないのであればこれ幸い。魔術師の増援がやってくるまでこちらも気づかぬふりをして戦うべきだ。
……そのためには……。
「全軍に指示」
「全力で攻勢に出ろ」




