サイレンセストへ
迎えたグワラニーによるサイレンセスト襲撃前日。
その日、すでに退避事業のすべてを終わらせ、無人の町と化したはずのクアムートに再び活気が戻る。
いや。
活気ではなく、熱気と言った方がいいかもしれない。
大海賊ワイバーンの本拠地マンドリツァーラに退避する者たちとともに行動するバイア、語学が堪能でありバイアの指示への理解力があるという理由で選ばれたふたりの将軍アビリオ・ウビラタンとエルメジリオ・バロチナ、魔術師団の指揮を任せられたアパリシード・ノウト、さらにアンデルソン・ビルキタスをはじめとした軍官幹部も含めて要職にある者全員が揃っていた。
さらに、これからグワラニーたちが向かう戦場に同行すると申し出たクペル城周辺に住む魔族とフランベーニュ人の女性たちの姿もある。
彼女たちは兵たちの食を担当する。
非軍人の参加者はまだいる。
クアムートとクペル城を根城に商売する者たち。
彼らは荷物を押し込んだ百台を超える馬車とともに軍に同行する。
「とても生死を賭けた戦いに行くとは思えないな」
「だが、彼らだって我々が負ければ明日はないと知っている。勝利のためにできるだけの協力をしたいということなのだろう。それに……」
「商人たちが同行するのは我々にとっては吉報であろう」
「奴らは今回の決戦を我々の勝ち戦と読んだと言いたいのかな」
「そのとおり。商売第一、安全第二。少なくても酔狂で危ない場所に出向くなどということなど絶対にない彼らがこうして自主的に戦場に同行する。少なくても我々にとって縁起が悪いということではあるまい」
それを眺めたアゴスティーノ・プライーヤとアルトゥール・ウベラバがそう囁き合う。
そして、そこに加わった老魔術師がその会話をこう締めくくる。
「まあ、勝ちと思っているのは我々も同じ。負ける気も死ぬ気もないだろう」
一方、プライーヤ達と違い、この状況を、初めて戦場に出る新兵のように緊張しながらこの時を過ごしていたのはブリターニャの王女ホリー・ブリターニャの護衛を担う者たちだった。
実をいえば、グワラニーは彼らに対してある仕事を申しつけていた。
そして、その仕事とは彼らにとってこれ以上ないといえるくらい辛い仕事。
「フィンドレイ将軍。さすがに妙な気分になります」
ブリターニャの将軍だったときのフィンドレイの副官で現在も同様の任についているクリエフ・ブレアは思わずその心にあるものを吐露すると、彼の元上官アラン・フィンドレイもそれに同意するように頷く。
そして、その直後表情をさらに厳しいものに変えたフィンドレイは口を開く。
「元とはいえ、自国の王都を破壊する側として戦いに参加するとは思わなかった。それは私も同じ気持ち」
「だが、やらねばならない」
「やらねばならないのだ」
ブリターニャ王都包囲戦に参加するグワラニー軍の陣容はこうなる。
第一陣。
アウグスト・ベメンテウと魔術師五人。
その護衛としてふたりの将軍ジルベルト・アライランジア、エンゾ・フェヘイラ。
これは転移場所を確保するための先発隊で、敵に察知されぬよう少人数の編成となる。
第二陣。
司令官アルディーシャ・グワラニー。
副司令官アンブロージョ・ペパス。
軍指揮官アゴスティーノ・プライーヤ、アーネスト・タルファ、クレベール・ナチヴィダデ、デニウソン・バルサス、
兵二万八千四百五十。
魔術師長アンガス・コルペリーア。
副魔術師長デルフィン・コルペリーア。
魔術師四千八百二十、治癒担当魔術師二百二十。
戦闘工兵団ディオゴ・ビニェイロス、ベル・ジュルエナ、アペル・フロレスタと元鉱山労働者である戦闘工兵八千二百四十人。
司令官護衛隊アイマール・コリチーバが指揮する兵三十。
言うまでもなく、これが本隊。
そして、それに続くのが後方部隊。
第三陣。
司令官アリシア・タルファ。
副司令官アルトゥール・ウベラバ。
兵二千。
魔術師長フロレンシオ・センティネラ。
魔術師四百、治癒担当魔術師五十。
幕僚ホリー・ブリターニャ。
王女護衛隊アラン・フィンドレイら計十六。
そして、自主的に参加を申し出た多くの非軍人たちが属する。




