戴冠式事情
ブリターニャの即位式。
その本来の手順は凡そこうなる。
会場は王宮の玉座の間。
着飾った出席者が揃ったところで、開会の宣言がおこなわれたのに続き、宰相が新王の名を呼び、それに応じて新国王となる者が入場する。
その後にブリターニャの国民が崇拝する神々の代理である四つの宗派の代表が祝福の言葉を述べ、続いて新王が信仰する宗派の代表者が新王に冠を被せ、その場にいる全員の代表として王族の最上位者が即位の祝いの言葉を述べた後に、全員で王の名とともに万歳の言葉を唱える。
そして、最後に新王が誓いの言葉を述べて終了となる。
その後、王族らとともに臨御の間に姿を現した王は国民から祝福される。
むろんこれは大まかに説明したものであり、その間にも多くの儀式が組み込まれる。
そして、細かな部分は若干違うものの、他国の即位式もほぼ同様と思っていいだろう。
だが、今回はその手順を大幅に変更する。
いや。
変更せざるを得ないと言った方が正しいだろう。
なにしろ、儀式を取り仕切る宰相や典礼大臣、主要宗教団体の幹部、戴冠式に厳かさと華やかさを加える王族や大貴族など本来参列すべき者、そのほぼすべてが王都サイレンセスト崩壊に巻き込まれ故人となっており、その列に加わるはずの高級軍人たちもほぼすべて戦死していたのだから。
魔族の国の即位式を参考に変更したホリーの戴冠式の手順はこうなる。
場所は瓦礫の山となっているサイレンセストの隣につくられる予定の新サイレンセストの一角。
もちろんそこは土地の整備がおこなわれている最中であり、即位式をおこなうに相応しい建物などない。
グワラニーからはクアムートで開催する案も提示されていたのだが、ホリーはその荒地で即位式をおこなうことを要望したため、急遽設えた施設でおこなうことになった。
そもそもどのような事情があろうともブリターニャ王の即位式を他国でおこなうわけにはいかない。
そして、自分たちブリターニャは魔族に敗北し、今後は魔族に従属する立場であることを国民に見せる必要がある。
さらに、新王国の厳しい現状を理解させ、ゼロが復興していかねばならない覚悟を持たせるためにも、このような仮設小屋のような場所で即位式をおこなうことは多くの意味で有益である。
それがグワラニーの厚意を謝絶したホリーの言葉となる。
そして、その貧相な会場でおこなわれる式の流れがどうなるのかといえば、まず参列者が揃ったところで、ホリーの護衛隊長アラン・フィンドレイが新国王となるホリーの名を呼び、それに応じたホリーが入場する。
続いて、魔族の国の王、すなわちグワラニーが新国王ホリーに王冠を被せ、ホリーが即位したことを宣言する。
これはブリターニャの王位は魔族の王に与えられたものであることを明らかにするためのもの。
そして、それに応じてホリーが王位に就いたことを宣言する。
ちなみに、グワラニーの即位式はまだおこなわれておらず、形式的にはグワラニーは王位に就いていないといえる。
ただし、先王より自身の死後王位を譲る旨の宣言書はグワラニーの懐にあり、実際グワラニーは魔族の国の王として多く事柄に関わっている。
ホリーの宣言に続いて、文官代表として財務部のベンジャミン・ランピター、軍代表バイロン・グレナームが新王に対して忠誠を誓う言葉を述べる。
最後に各国の代表が王への祝いの言葉を述べるという実にシンプルなものとなる。




