真実はすべて光の当たらぬ場所に存在する
アリスト・ブリターニャによる「サイレンセスト宣言」から始まったフランベーニュ王家の終焉とフランベーニュ王国の没落。
グワラニーは、その過程でフランベーニュの領土を奪い取ることに成功していた。
だが、このフランベーニュ領割譲には、魔族の国の領土拡大やフランベーニュの弱体化以外にも理由があった。
「……ところでグワラニー様」
最側近のバイアはフランベーニュ王家の生き残りがフランベーニュ王国の領土割譲に同意した宣言書の原本を眺め終わったところで目の前の男に声をかけた。
「フランベーニュに割譲させる場所ですが、選定はどうするのですか?」
勇者一行との戦いに支障を来たすということで、この時点ではフランベーニュには要求していないものの、選定だけはおこなっておくべきでないのか?
バイアの問いにはそのような意味がある。
それはつまり、勇者一行との戦いのあとにも自分たちが存在しているだけではなく、この世界の頂点として国を運営していることを確信しているということになり、極言すれば自分たちが勇者一行との戦いに勝利することを前提にしているということになる。
だが、これはおかしい。
あれだけ自分たちの不利を方々で語っているのだから。
となれば、これはバイアなりのモチベーション維持、それとも、単なる強弁としか考えられない。
だが……。
「……バイアも気が早い」
薄い笑みとともにグワラニーはバイアの言葉にそう応じるだけで主張そのものは否定しなかった。
そう。
実をいえば、この時点でふたりはすでに圧倒的に有利なはずの勇者一行に勝てる方法を見つけていた。
さらに、自分たちが用意していたものとは別の方法で勇者を倒す方法も机上に上げていた。
具体的には……。
アリスト・ブリターニャの謀殺。
フランベーニュ領の奪取はその報酬にするためという意味合いもあった。
そして、その相手は勇者一行のひとりフィーネ・デ・フィラリオ。
「フィーネ嬢がアリスト王子を殺す可能性はあるかどうかはわからない」
「まあ、常に警戒を怠らず結界を張り巡らせているアリスト王子を暗殺するのなら、結界の中にいる勇者一行の誰かがそれをおこなうしかいないだろうということは容易に想像できます。そして、他の三人がそんなことをやるとは思えませんので、もし、それが実行されるのなら当然そうなるでしょうね」
「そういうことだ。もちろん、フィーネ嬢が報酬目当てに暗殺を請け負うとは思えないが、もし、自主的に実行してくれたら、危険を冒す必要がなくなった我々としては、最大限の報酬を支払うべきだろう。アドニア嬢に幾分かの報酬をあたえなければならないので彼女が確保している港周辺は割譲する必要はあるだろうが、その多くはフィーネ嬢への報酬となる」
「そう言う意味では、フィーネ嬢の実家であるフィラリオ家の領地周辺がその候補ということになるだろう。フランベーニュの西半分とか」




