勇者と魔族の冒険譚 ミュランジ城での幕間劇
ミュランジ城。
とりあえずの緘口令は出ているものの、この手の噂はあっという間に広がるものである。
半日もしないうちに魔族が城にやってきたという話で城内は持ちきりだった。
ただし、その受け止め方は立場によって大きく異なっていた。
軍に関わる者にとって魔族は「すぐに殺すべき忌まわしきもの」なのだが、そうでない者も女性を中心に予想外に多かった。
もちろんこれはクペル城に滞在中の女性陣が実家に対して送った手紙をコッソリ覗いた情報が元ネタとなっている。
そして、その評判に応えるようにグワラニーは物資の追加調達の際にどれほど高価の請求にも愛想よく支払いした。
「まあ、相当高いと思ったのは事実。ですが、人間が魔族に物を売るという行為自体が本来はありえないことなのだからこの程度の値段になるのはやむを得ないともいえなくもないです。それに、支払うのは結局ダニエル王太子からもらった金で私の懐はまったく痛まないのでどれほど高くても構わないし、それで私の評判が上がるのであれば高ければ高いほどよいとさえいえるでしょう」
あまりの気前の良さに呆れたフィーネにその理由を問われたグワラニーはそう言って微妙な笑みを浮かべた。
それとは対照的だったのは別行動中だった糞尿三剣士の面々だった。
「こんな酒に王都の高級酒場で貴族が飲む酒のような値段をつけるなどあり得ぬ話。値段に見合った酒を出すか?それとも、酒に見合った値段をするか?さあ、どちらか選べ」
もちろん彼らが飲んだのは安酒だったので、店主が示したのはあきらかにボッタクリ価格。
三人が怒るのも無理はない。
だが、価格交渉とは名ばかりに店主を脅し、大急ぎで裏から現れた番犬たちを簡単に叩きのめしたところで再度の交渉をおこない詫び代込みでタダ同然で酒を飲むこと合計四軒。
さすがにこれはやりすぎだった。
翌日出発するときに白い目で見送られる「招かざる客」の中心になっていたのは魔族のふたりから後方を歩く三人に変わっていたのはいうまでもないことである。




