もうひとつの書簡
ソリュテュード平原の戦い。
その戦いに最中にダニエル・フランベーニュはウジェーヌ・グミエールに宛てた命令書を送っていたのだが、実をいえば、そこには一通の書が添えられていた。
こちらは命令書という作戦書と言ったほうがよいものであった。
「我が軍の損害を減らすために、魔法を使用して敵の戦力低下をおこなうことが望ましく、早急な結果を望みむやみな力攻めはしないことが肝要である。敵はこちらが魔法攻撃をおこなわないことを前提に陣地を構築し立て籠もっているわけだが、それは大いなる間違いである。それを教え込む意味を兼ねて魔法によって敵陣を徹底的に攻撃する。数度魔法による攻撃を受ければ、どんな愚かな者でもこう考える。このままでは戦うことができぬほどに数を減らされる。そうなる前に陣を出て戦うべき。そして、必ずそう動く」
「そのときのためにこちらにも敵と同じような土塁を用意する。陣地を攻撃する場合、守備側の三倍の兵を用意しなければならない。これは我が国の陸軍の教本に書かれた陣地攻撃の鉄則であるが、敵は三倍どころか三分の一の兵力で我が陣地を攻めることになる。陸軍の教本が正しければ、数の利、地の利ともにある我が軍は、九倍有利ということになる。さらに魔術師団がいる。その数倍、数十倍は有利。土塁を登ってくる者に石を投げ、剣で討ち、敵兵を減じることに専念し、敵の兵力ができれば二十分の一、最低でも十分の一以下になった時、つまり千人を切ったところで最終的な攻勢はおこなう。そうすれば、守る者もいない謀叛人アーネスト・フランベーニュを易々と捕縛できる。なお、策の立案と戦いの差配は司令官であるウジェーヌ・グミエールがおこなうことであることは承知している。これ以上の策を用意しているのであれば、私は自らの策に拘らない。ダニエル・フランベーニュ」
その書の読み終えたグミエールは薄く笑う。
「これ以上の策?」
「そんなものがあるのなら教えてもらいたいものだな」
「そういうことで、それが思いつかなかった私は殿下の策に従って動くことにしよう」
そうして始められた工事が終わると、シャルランジュが魔術師たちに指示をする。
「始めよ」




