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098 【不思議なつぶやき】


 弥彦のおかげで色々と分かってきた。

 だが困った話が聞けてしまった。


 分身の術には興味があるけど。

 まさか分身の本体じゃないほうを俺が担っているのだから。

 まあ俺の場合、何者になろうが3日だけだから。

 だがこれ、動物にインすることも有り得るわけだろ。


 選んでくれているのは女神だ。

 他者が接触できて意思の疎通に困らない存在にはしてもらえているが。

 

 女神はこの世界に詳しくないと言っていた。

 お堂の外に出て見てもサスケの存在を検出できないと言った。

 こういう訳だったんだな。


 忍者ありきの時代と世界だもんな。

 ここは【女神エンジン】で3日間だけ切り取ったゲーム世界だ。

 エンジンの調子が悪いのだろうか。


 ゲーム中は報告ができないのが不便だな。

 こちらで女神に逢うには「出会い系」がどうのと言っていたが。

 余計なミッションを増やしたくはないから今はいいや。



 それはそうと弥彦がこの後どうするのかと聞いた。

 俺はコマさんはともかく、お里の将来のことで金策をすることを伝えた。

 夕暮れに盤次郎と落ち合えるように長屋へ帰ってから、寺子屋に行く。

 そう伝えると、弥彦も傍にいつでもいるから安心して過ごせばいいとのこと。

 

 心強い味方ができたぞ。


 しかし──。

 あのサスケはどこに行ったのだ。


 昼飯時を過ぎてしまったが長屋に戻って来ることができた。

 母親は出稼ぎに行っている。

 お里が俺の家に上がり込んでいて、まるで座り込みを決め込んでいる。



「昼飯を食べたいんだ。お里も飯を食べに帰れよ」


「わたしはもう済ませたよ。内緒でどこに行ってたのよ、もう!」


「うーん、バンさんの所だってば。だまって行ったのは悪かったよ。でもバンさん大変なことになってるんだよ」



 お里が約束を破った俺にむくれている。

 彼女はまだ幼いが大名行列の一件を打ち明けた。

 心配そうに小難しい顔を見せた。



「君が考え込んだ所で答えなんて出ないだろ? はやく家に帰れよ」


「なによっ! ……それはそうだけど」



 びっくりした!

 急にでかい声だして爪で引っ掛かれるかと思ったわ。

 シュンとして納得したようである。

 

 参ったな、これでは弥彦とも会えないし、寺子屋へ様子を見にも行けない。

 お里には申し訳ないが遊んでいる暇がないんだ。

 しかも考えて見たらお前のためにやっていることなんだよな。


 なんで叱られているんだよ俺は。


 このままじゃ時間の無駄だ。

 お里を諭してみるか。



「なあ、お前の父ちゃんなんだけどさ。酒を呑むななんて言わないから、せめて賭け事を止めてもらいなよ」


「な、なんでコマちゃんがうちの親の心配をするのよ!」


「だって貧乏暮らしなのにお金を掛けて遊んでばかりいたら、将来、家族に迷惑がかかってさ……」



 どんっ!



「アイテテッ!!!」



 そんな悪い親ではないと、その先を言いかけの俺を目一杯突き飛ばしてきた。

 いま味噌汁を口元に運ぶところだったんだ。

 後転しながらそれらをひっかぶってしまったのだ。

 時間が経っていて冷めていたが味噌汁で衣服ごとベタベタやないかい。


 昼食はお里の家で世話になれと母親が早朝書置きを置いて行った。


 俺の帰りが遅いものだからお里が持参してきて上がり込んでいたわけだ。

 たしかに世話になっているのだろうけど。



「食っている時に押すなんてあんまりじゃないかっ! 食いもんを粗末にするな」


「なによっ! コマちゃんなんて自分で言い出した約束も守れないくせにっ!」


「それは今謝っただろ。だから帰れって言ったんだよ、このじゃじゃ馬が!」


「じゃ……っ! だれがじゃじゃ馬ですって! コマちゃんの馬鹿っ! ゆうべも家出をしたのかと心配で探しにいけばお堂の前にポツンといて。わたしに誰?とか酷いこと言ったりして。次の日に性懲りもなく朝っぱらから忽然と消えているし……う、うぇぇ~~ん……ばかばか……嫌いよ……嫌い……」


「痛ぇなもう。な、なんも泣くようなことじゃないだろ! 泣き虫かよ!」



 なんで急に怒り出したんだ。

 そして味噌汁ひっかぶったばかりの俺をポカポカと叩いてきて。

 だから子供は苦手なんだよ。


 俺が親の悪口をいって泣かしてしまった。

 そんなところだな。



「ごめん、ごめん。言い過ぎたよ、もう泣くなよ」



 言い過ぎたことや心配を掛けたことをもう一度深く丁寧に詫びた。

 俺はお里を優しく抱擁した。

「もう、黙って居なくなったりしないから。堪忍してくれよな……」



 

 しばらくして、お里も気を静めてくれたようだ。

 真剣に俺の心配をして胸を痛めていたのだな。

 彼女は頷きながら叩いたことを「ごめんね」といい、この身体を撫でてくれた。


 そしてお里がポツリと不思議なことをつぶやくんだ。



「あれ? コマちゃんお味噌汁はどこにこぼれたの? コマちゃんの服も濡れてないし、お肌もすべすべじゃないの……」



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