094 【神の使者】
弥彦の質問にあった、他者への出入りの方法だけど。
この経緯で幼少コマさんの中にいる。
だけど出て行く方法は教わっていないと答えた。
先程、ウソだとは言っていないと言ってくれたが。
ひたすらにほいほいと聞いてくれ過ぎるのが、すこし心配だ。
その上でもう一言加えた。
「だから……俺はあなたのいう真のコマジロウじゃないと思う。偽のコマさんです。いつ脱せるのかわからないし、一生このままかも知れないし……」
あなたの質問には答え切れたのか不安もある。
だけど、あなたがサスケだというこの子には、本当に申し訳ない。
この子にも、この子なりの生きたい道や、その意思で楽しめた人生があったはずなのに。
そう語り、
「それを思うと……。でも俺にもどうにもならなかった。目の前に神様が現れるなんて思いもしない。だからこそ、このコマさんは……いやサスケはどちらのお子さんだったのですか? おれは聞かせてもらいたいのです! あのコマさんじゃないというのなら、弥彦さん?」
ここまで語り切ると。
弥彦は何故か、瞳に涙を溜めているようにも見えた。
手先がなにか震えているようにも映った。
感動でもしているのかな。
けど彼の視線はずっと俺を見続けていた。
いや。
正確には、この七つのコマさんの身体を上に下に、まじまじと見つめていた。
信じがたい内容だったからな。
それは仕方のないことだろう。
俺と弥彦の距離は、技をぶつけ合ってからすこしも縮めていない。
4mは離れていたか。
だが弥彦がはじめて俺の方へ向かい、歩を進めてきた。
すぐ傍まで来た。
目の前で膝お落とした。
コマさんの身体を両手でやさしく、ほぐすように触れた。
弥彦の顔が俺の目の前にある。
やっぱりその目には涙を浮かべている。
そしてなぜだろう、震えた声でいうのだ。
「お、終わったのか……? ほ……本当に。あぁサスケ…………長かった、な。
……ワシらは……こんな日がいつか来ることをずっと、ずっと……。
天に……神様に、願って生きて来たのだ……サスケ、うぐぅ……サスケや!
お前との戦いはこれで幕を下ろすのだな……ありがとう、ほんとに、ほんとに神様がおられたのだ……う、うぐ…………うわぁぁぁぁ!」
「や、弥彦さん!?」
そのようにいい、弥彦はまるで子供のように号泣した。
俺と、コマさんの小さな胸の中に顔をうずめて。
一体何なのだ。
戦いとは、こんな子供と?
積年のなにかが……あったみたいに?
それは、俺にはどう表現していいのかわからなかった。
しばらく涙を止めることが出来なかった弥彦がようやく俺からすこしの距離を置いてくれた。
彼は随分と長きに渡り、こうなることを願い続けてきた。
たしかにそう言っていた。
俺が声を掛けようとすると。
自ら、口を開いた。
「あの技をグンが放てたことから、もはや疑う余地などない。グンは神様が遣わして下さった使者なのだ。ワシはそう信じたい。この子の真実を聞かせよう。お前さんには聞く権利があるだろう」
「はい。こちらこそ感謝します」
彼らも、神の存在を信じて生きて来たようで。
思いのほか俺に聞く権利が生じてしまった。
弥彦とこの子は。
一体なにがあったのだろう。
俺が求めているサスケが居なくなったりしないだろうか。
なんだか胸騒ぎがしてきた。




