088 【走る旋律】
果たして弥彦師匠の反応やいかに。
「…………む、むむ、むむむ。少年忍者……サスケ……。サスケ、サスケ、おいらのことだな、名はサスケ……」
なんだ?
サスケに反応しているぞ。
任務内容の親方の形見のほうではなく。
まあ、それもそうか。
綱賀天内さんが父親なのだから。
それじゃ、サスケも身内なのかもしれないね。
年齢的には駒次郎に近い存在だけど。
だけど女神の話だと、サスケはこの辺りには居ないということだったけど。
しかも女神様だぜ。
人の嗅覚とかではなく、別次元だろうから。
それで探し出せないと言うのだから。
その理由で、俺が成れなかったのだから。
「あの、師匠? サスケに心当たりがあるのですね?」
「うーん。まさか、あのサスケのことじゃろか?」
「どのサスケさんになりますか? その人はいま何処におられるのですか?」
弥彦師匠の反応はとても気になるところだ。
どうしても聞き出しておきたい。
俺の目的のひとつなのだし。
お、師匠がなにか言いたげだ。
「コマよ、本当にこのような内容の任命書を見たのか?」
なんか疑うようなことを言っているぞ。
見たのは本当だ。
頷くほかはない。
「見てないものを書いたとして師匠が疑うようなことを言うのはなぜですか? 人物の名に心当たりがあるからですよね?」
「ほう! コマは面白い言い回しをするのう。たしかにデタラメを書いてこれほど悩まされるとは……の。……そっちが考えにくいわな」
「ただね。この文面からすれば任務なのだと思ったから任命書だと言っただけで、任命とは取れないのなら違うのかも知れないですけど。だから見て欲しかったのです。どうお感じになられましたか?」
「そうだの。ここでいつまでも、どうしてだとコマに問うてばかりでも話が見えぬだろうし。わしの知るサスケの話をしてやるだけだが、それで良いか?」
うっほ!
やっぱり知っているサスケがいるんだな。
そいつが俺の成りたいサスケに違いないのだ。
ぜひ語ってもらわねば。
俺はブンブンと笑顔で首を縦に振った。
「さきほど、わしらの出身の話をしたな? わしらは元は甲賀者だと。このカミセに移って来る……随分前のことになる」
え、そんな過去の話?
「長々とは語らん。抜け忍だった頃、当然追われていた。そして見つかってしまい、わしら親子は討たれかけていた。そこへ伊賀者だったサスケが運良く現れてな、なんと加勢してくれたのだ……」
てことは、その時点でサスケはもう大人じゃんか。
つーか、いまここに生きているなら師匠より歳行ってない?
「その時の師匠、何歳だったの?」
「うん? 十五だったが」
「そのサスケさん、幾つぐらいに見えましたか?」
「そうだの。彼は当時、少年だったから同じ年の頃だったと記憶しているが。忍びは年齢など明かさないし、そもそも助太刀をしてくれたが、伊賀と甲賀は反目しあっていたからの昔から…」
ああ何となくわかる、それ。
それ、甲賀者がツンツンしていただけでしょ。
それは置いといて。
「サスケとわしは実質交流はないわけだ。ただ親父殿はよくわからぬ。このようなものが本当にあったのなら……な」
手元の写しを見つめて、悲しそうな表情をして、そう、つぶやく弥彦。
それが弥彦の知る、唯一のサスケなのだな。
だとしたら。
忍びは敵が多いから。
そういう意味で最早、存在していないってこと?
あれれ。なんかおかしいぞ。
なんで?
未来に居たじゃん、サスケ。
「俺は、……どういう計算をすればいいのだ?」
あいつ、何歳だよ。
年齢の確認は取れてはいない訳だが。
「うん? なにがだ? コマや。記憶が飛んでからのほうが賢くなってないか。わしが今、とても気になっているのは過去に出会ったサスケのことや親父のことではなく、お前はいったい何者なのだ?」
陰りのある声で、そう言葉を突き出すと、弥彦はじっと俺の目を見据えてきた。
なぜだか、ゾッとした。
凄んでいる……のか? この人?
どうしたのだ!
急に様子が変わったぞ。
「し、師匠? どうしたのですか? 俺のこと、何者ってどういう意味ですか? うまく思い出せないのです。怖いことおっしゃらないで下さいよ!」
「サスケのことよりものう、わしの知るコマはな……ただの駒なのだ! たとえ記憶を失くしたのだとしても、 わしの操る傀儡でしかないお前が、そのように自由意思をもつはずがなかろうに!」
なっ!?
「なんだって!? なにを言っているんだ、あなたは!」
傀儡っていえば、たしか……からくり人形のことではなかったか!?
う、嘘だろ、何の冗談だよ。
まじ勘弁してくれよっ!
まずいっ!
この感じは、ここを離れなければっ!!!




