063 【スキル鑑定】
さて、またひとりになった。
見えていた古い臭い家屋の並ぶ方へ歩いて行けば、親が探しにでているのかな。
あいつ確か母親はいると言っていたな。
さらわれてから帰って来た後も母親がいると言っていたから。
まあどこまで本当の事かはわからないけど。
「駒ちゃ──んっ! どこまでいったの──ォ?」
うん?
甲高い声が寺のお堂に向けて放たれた。
距離にして20m、俺の耳の穴を目掛けた様に届く声。
同年代の小さな子供の声が響いてくる。
駒ちゃんと呼んでいるからきっと俺のことだ。
家族だろうか。
女の子のようだ。妹かな、それとも姉貴かな。
だが俺はいま警戒をしている。
駒次郎が幼少期のどのタイミングで居なくなるのかわからないから。
自分の名を呼ぶ声があったからとむやみに駆け寄ってはいけない。
子供を使って誘い出す手口もあるし。
だからといって無視すれば家がわからないままだ。
ここはひとつ様子を見るためにお堂の前でじっとしていよう。
声の主は小さな俺の姿をもう捉えている。
迷いのない足取りがそれを物語っているのだ。
忍びの聴力が今回も引き続き、健在であることを確認できた。
これで間違いなくこの駒次郎も忍者なのだと安心した。
他の忍者になったから特技がどうなったかと不安だったが。
祠の中では女神の処理が終わるまで更新はないからな。
女神に聞こうものなら物覚えの悪さを咎められる。
エンジンで調べがつくことは尋ねてはダメ。
そんなわけで、
ステータスオープン。
☆
名前:駒次郎
年齢:07歳
ツナセ長屋に在住の男児
母一人子一人
漁師だった父親は駒次郎が3歳の時、沖に出たまま行方知れず
ツナセ長屋一丁目5番地に在住の母親、お袖と二人暮らし
特技:イシツブテ(命中率60)
ステルス (気配消し率100)
聞き耳 (聴力射程30m)
所持:白米おむすび3個(大人茶碗2杯分)
具材1極上南高梅 具材2紅鮭 具材3温泉卵アツアツとろとろ
オール海苔巻き
お茶類 竹の水筒入り(おまけ:サスケを選択できない女神のお詫び)
茶の種 不問(麦茶でも抹茶でも飲みたい茶を都度所望せよ)
スキル:未鑑定スキル1個あり
☆
うわ。特技の率が増大している。
ステルスなんて100パーじゃないか。物陰さえあれば空気になれるな。
所持品も奮発してくれている超嬉しいんだけど。
サスケが使用できなかったお詫びだなんて超ラッキーなんだけど。
使えないものは仕方のないことなのに。
女神も痛い所を突かれたくはないんだな……これでよし、としておきます。
「おっと……。スキルの鑑定をしておかなくちゃな」
スキル鑑定!──【女神エンジン】。
ピピーピッ。
☆
鑑定結果…………。
「クソガードSP」を獲得できました。
効果、糞類を全て弾いて身体を守る。
タイプ【随時】只今より転生者として消滅するまで持続可能なオートスキル。
☆
マジかよ。全てに於いて美味しい結果じゃないか。
SPがサンプルからスペシャルになっている。運によって昇格したのかな。
何でもいいや、有難く頂戴します。
「──ちゃん……。駒ちゃんってばっ!」
あ、さっきの子がすぐ傍までやってきて声を張って呼びかけている。
女神エンジンを閲覧すると一時的に視界を塞がれ耳の注意力も下がるんだ。
気を付けなきゃな。
俺はその子に目をやると、ひとつしかない疑問符を投げかける。
「きみは……だれですか?」
きっと顔見知りだからこそ名を呼び近づいてくるのだろうけど。
残念ながらこっちは初対面だから確認をさせてもらうよ。
君になんの罪もないのだろうけれど、なにも知らないまま手を引かれたりするのは御免だから。
「え!? なに言ってるの、わたしよ……お里よ。駒ちゃん、このところ日暮れ時になるとフラフラと出かけてるっておばちゃんが心配していたよ」
駆け寄る姿は浴衣姿で入浴か水浴びでも済ませた様にさっぱりとした匂いだった。
俺の家族ではなかった。
この子が噂のお里なんだ。それはそれは、はじめまして。
可愛らしい容姿はしているし、声もよく通っているが。口調が早い。
後ろ髪を結んでポニーテイル。こめかみに顎下まで真っすぐ垂らされたしなやかそうな黒いほつれ髪。俺好みのさっぱりとした髪型だ。
「知らないふりをするなんて」と彼女の頬は一度膨れて口を引き結んでいた。
それに、「このところ…」の部分も気になる。
そんなに頻繁にフラついているのか。この年齢で。
というか心配しているという母親はなぜ来ない。
どうして幼馴染が夜道の一人歩きを平気でするのだ。
ここら辺はそうとう治安が行き届いているのだろうか。
もうこんな時間よ、と言い。
「早くおうちに帰りましょ、駒ちゃん」
面倒見のいい感じにお里は小さく笑い、ピタリと吸い付くように傍に来る。
俺はこういう雰囲気に慣れていなくて視線を地に落とす。
彼女は俺の横顔を舐める様に見てくる。まるで盛りの付いた猫のように。
俺は気持ちが引けてきて長屋へ逃げるように歩き出す。
あ、手は引かなくていいから。
俺は自分の腕にまとわりつく彼女の手を振り解いた。
彼女からは押しかけ女房的な圧力を感じるのだ。
「ひとりで歩けるから離れてくれないか」
心配をして迎えに来てくれた者に冷たい言い方かもしれないが。
たしか駒次郎と同じ歳だったな。
7歳の恋する乙女も悪くはないけど、俺からすればまだ子供じゃん。
この様子だと好意を寄せているのはお里の方では
とりあえずこれで自分の家に行けそうなので良かった。




