059 【しょぼいモノ】
確かに頑張ったは、頑張ったんだろうけど。
ルールは、ルールだと言われそうだな。
私におねだりか?
その返答がいまは穏やかではあるけど。
あれだけ頑張った……。
というのも結局、どれだけ人付き合いが苦手だったか。
何度も怖い思いをして。
人助けが課題にある以上は人と関わらねばならない。
その上で三日もそこでやり過ごすという、俺にとっての過酷さ。
甘ったれだということは百も承知だ。
『それでは、お前はこう言いたいのだな?
せめて取得した分の褒美がもらえないか、と』
ズバリ、そう言いたいのです。
「毎回じゃなくてもいいのです。今回だけでいいのです」
初心者への配慮をしてくれたぐらいだから。
オマケが欲しいのだ。
これから幼少期の長屋に入る。
相手が子供たちでも周囲には必ず、大人の影はあるはず。
ぶっちゃけスキルが欲しいのだ。
忍びの特技だけでは過酷な状況は乗り越えられないと知ったばかりだ。
忍者なのに忍術ないじゃん。
負傷したら傷薬じゃ間に合わないし。
薬を塗ってる暇もなかったから、殺されたんだ。
というか、色々と行動の選択をまちがえてしまったからだな。
そこに臆病風邪が吹いてしまって。
『随分とメンタルをやられたようだな。辛気臭い顔をしおって。
半分に満たないptでは、しょぼいモノしかないぞ?』
マジ、くれるのか!
頼んでみるものだな。
「それでもいいです!」
『なにか望みはあるか?
例えば、火遁で火の玉を吐くとかがあるのだが。
このptでは、まともなスキルじゃなくなって。レベル1以下だということだ。
口をつけることで相手に火傷をやっと負わせる程度だ。役に立つとは思えぬが』
おお、立派なスキルじゃないか。
能力が特殊だ。
かっこいい!
レベルはやっぱりそのスキルの強さを表しているみたいだな。
「あの、ステータス表示にあった…しょぼいスキルはどの程度ですか?」
勢いで聞いて見た。
知らないスキルの例を出してくれたのなら、聞けるかもと。
『あれか。あれはやめて置け。誰も持ったことがないほど低能ぶりだ』
誰も、持っていないのって逆にレアじゃないの。
「それを頂くことはできませんか?」
『気は確かか? あれはただのサンプルだし、ほんと使えないぞ。
よく聞け、一度その身に宿すと二度と外すことは叶わぬ。
スキルとはそういうものだ。気に入らないから消してくれは通用せぬぞ』
逆に言えばスキルは失うことがない、ということじゃないか。
ますますカッコいいです!
「死んでしまっても消えないんですか?」
再確認だ。
女神は静かにうなずく。
どうやら一度獲得すると未来永劫のようだ。
そうして一つずつ増やしていくんだな。
超イカすぜ。
『今のと、ソレと、二つにひとつだ。どちらか選べ。
本来のルールから外れて特別扱いだからな、お前の気持ちに応えるのは。
それと今回だけだぞ、それを忘れるな!』
やった!
スキルをもらえる。
サンプル並みでもなんでも、何も無いより全然心強いよ。
俺は天にも昇る気持ちになった。
「ありがとうございます! 気になってたから後のやつにします」
『ソレを選ぶ奇特さに敬意を表して、説明をしてやろう。
まず名称は「クソガードsp」という。
種別・系統は「回避スキル」になる。回避系とよぶ。
効果は、「うんこを踏まなくて済む」というものだ。
下品なようだが、クソ塗れになるのを防ぐものだ、我慢できるか?
そんな恥ずかしい名のスキルで本当に良いのだな』
俺は女神の眼を見て、満面の笑みを浮かべた。
そして何度も首を縦に振った。
まじラッキーだ。
名前なんか誰に名乗るんだよ。
気にしないよ。
火遁のほうもカッコ良さそうだ。
スゴいと思うけど今もらったら、キス魔にならなきゃな。
それは悲惨な気もする。
タダでもらえるんならレア度の高いものを拾いたいのだ。
スキルは特殊能力だろ。
そもそも、もらって困るものなんかないだろ。
ところで女神さん。
「spとは?」
『サンプルだろ』
そ、そうか。
クソガードsp、「糞ガ」でいいや。
サンプル品だから表示されてたワケね。
pt稼ぎを念頭に置いて活動していたのが吉と出たな。
次は甘い採点がないけど、この心掛けは大事だよね。
次も速攻で人の悩みに耳を傾ける必要ありだな。
なにせ子供だからな、人助けの程度が低いかもな。
『注意点があるのでしっかりと覚えておけ…』
え。
『スキルを使用する際にはインターバルが生じる、ということだ。
サンプルだからではない』
休憩をはさむ。
連続使用ができないのだな。
それぐらい仕方ないか。
『レベルのある通常のものは効果の威力と持続時間が、レベル差で異なる』
レベルが低いと威力が小さいのか。
「レベルを増やすのは、また別のスキルなのですか?」
『いや取得後、使い倒すだけだ』
使用すればするほど鍛えられていく感じなんだ。
それ好き。
超カンタンだ。
女神も俺の頑張りをこんなに認めてくれているのが、非常に嬉しい。
なんだかやる気が出てきた。
あの厳しい世界へ出て行っても、やって行けそうだ。




