表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/120

039 【選択】


 きっと気づくに違いないと信じたい。

 だが気づいたとして、俺のようには行かないからやっぱり不安だ。

 盤次郎はいま玄関先だ。

 彼の動向を探りたいのだが。


 駒次郎に何かあったら、そちらは探しようがない。

 俺の知らない町だからな。


 命までは取られないとしても、また鉱山に幽閉されたら時間的に面倒だ。


 盤次郎か、駒次郎か。

 どちらを選ぶ。


 駒次郎が正解かな。

 盤次郎は宿からそう遠くへは行かないだろうし。


 夕飯が済むまで客も店も賑わっているから、滅多なことは起こさない。


「よし。芝居小屋までの道のりをなぞってみるか」


 俺は宿を後にしようと思った。


 ついでに町を広く見回って、通行人に鉱山への道や周辺のことを聞くのもいい。

 旅人が結構いるようだったから、周辺の情報も入手できるかもしれない。

 この身体能力で俺の居た街を移動できたら最高だったのにな。


 さて屋根伝いに行き過ぎると、泥棒だと誤解を招くので道を行こうかと。

 十手持ちの見回り同心が先ほどの帰り道にも見えたからな。


 

 俺は少しでも稼ぎになるかと思い、薬箱を担いで外に出る。

 ついでに忍者の任命書はどこか別の場所に移して置こうと思う。



 役人の見回りは暇なイメージがある。

 何も起こらない日常で、手柄欲しさに無実の人をなんだかんだと疑ってかかるかもしれないから、絡まれたとき、荷物を調べられるのは厄介だからだ。


 時代劇だと隠密は、よく神社の灯篭やお堂に何かを隠すよな。

 とりあえずあの書簡は隠しに行かねば、やばいだろう。




 ◇




 一応、玄関先の様子も見に行った。

 ゴロツキどもがまだいやがる。


 数人だが、見かけない顔ぶれも居るぞ。

 人員を補給したようだ。


 俺が痛めつけた連中は、ご大層にも顔などに包帯を巻いている。

 これ見よがしに怪我をしていますと言うアピールはしないのがヤクザの筈だけど。通行人がクスクス笑いをしていく。


「笑うんじゃねぇ! 見せもんじゃねぇぞ!!」


 コテンパンにやられて敗北しました。

 負けて泣き帰ってきました。

 と顔に書いてるわけだから、仕方ないじゃない。


 それ、まさか駒次郎にやられたとか言わないよね。


「おい、盤次郎っ! 駒次郎のやつが帰って来ただろ?」


 え、やっぱり。

 まだ駒次郎を追いかけてるの?


「何を言ってるんですか、親分さん。あいつが鉱山から逃げ出したとでも言うんですか?」

「ああ、その通りだ!」


 盤次郎が賢明にハッタリをかましている所かな。

 そしていま話をつけようと来ているのが親分なんだな。街道には居なかったな。

 出て行って、倒すのは簡単そうなのだが。

 死なせるわけにはいかないからな。


 息がある限り何度でもくる。


 その堂々巡りがヤクザ者の怖いところだ。

 盤次郎を助けるという名分で、ポイントは稼げるかもしれないが。

 駒次郎が戻る前に、俺が戻っていることを駒次郎に知られる恐れがある。

 

 それがどうにも駒次郎を騙したみたいな罪悪感で、後ろ暗い気持ちになるのだ。

 事実、騙したんだけど。


 ヤクザ者と駒次郎に見つかったら、ここの宿には居られなくなってしまう。

 駒次郎と俺は、あいつらに見つかってはダメなんだ。

 盤次郎の悩みの種を増やさないことは、金蔵破りへの助長になるが。

 かえってそれで何かが見えて来るかもしれないからな。



「よし、行こう」



 駒次郎を探しに。


 それと、任命書の隠し場所はどこであろうと不安だから。

 女神の祠までひとっ走りして、そばに隠して来よう。

 内容はもう覚えたから、いっそのこと、火に入れてもいいんだけど。


 綱の印が気になってしまって。

 百両は見送るとしても、あわよくばの欲望を捨てきれないんだ。


 思いついたことを思う存分やって行けばいい。

 楽しみがなければ、旅人も忍者もつまんなくなるからな。



 芝居小屋の道をまず辿るか。

 駒次郎を先に見つけても合流せず、見届けようと思う。

 危機に陥ったら、姿を見せずに援護して逃がせばいいのだ。


 風車の人みたいにな。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ