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037 【任命書】


 駒次郎は、あっさりと切り離すことができた。

 芝居見物の終了が約一時間で、帰路の時間も含めればもうしばらく姿を消していられる。


 だが、ここで深夜まで見張っている訳にはいかない。

 そうだな……。

 盤次郎を探して、しばらく様子を見てみるしかない。

 彼の動向さえ押さえておけば、犯罪を未然に防げるはずだ。


 もしお里が周囲で身を隠しているなら、また接触を試みるに違いないし。

 そうじゃないのなら、金蔵を破るための準備に取り掛かるはずだ。


 まだ昼下がりの明るい時間帯だ。

 探しに行かずとも、薪割りのあの場所に戻ってくる可能性は大きい。


 下働きの身で、あちこちうろついてばかりでは怪しまれる。

 本当に宿の主人に呼ばれたのかは不明であるし。


 俺もあいつらに探りを入れようと言うのだから、何かしらをまだ疑ってはいる。


 金が必要だという理由はすでに明白だが、貧乏人の町人にしては行動が大胆すぎると思っているのだ。芝居小屋の道すがら、盤次郎はもう20歳だと聞いた。若さゆえの突発的な行動にしては蔵破りは無謀で難易度が高すぎるだろ。


 身請け金を盗んだ金で……となれば計画的な匂いもするが。

 そこまで彼らを駆り立てるものが何かを知らなければ、こちらの身も危うくなるからな。手を引くのか、このまま加担して良いのかの見極めのためでもある。


 親がいても不思議じゃない年齢だ。

 擦れたり、グレたりしているようには思えない。

 仮にチンピラを経験しているとしても、まともな職につくには相応の仲介人が必要ではないかと思うのだ。それが悪人だろうと善人だろうとな。


 何かしらの疑い。


 宿をざっくりと見て回ってきたが、部屋の数は三十はあった。

 結構、大店(おおだな)になるのではないか。

 このような所に読み書きもできぬ者が、(つて)もなしに奉公できるものだろうか。

 読み書きが出来ぬかどうかを確認したわけでもないけど。


 蔵が狙いで勤めているなら余計に宿側に知り合いがいるのは合点がいかない。

 その場合、親しき良き相談者がいることになり、その者への迷惑も考慮すれば恩を仇で返す行為はやはりあり得ない。


 その可能性を否定できる要因はある。

 出会ったときから気になっていた二人のあの堅苦しい名前がそれだ。

 訳ありの町人は案外、武家の出という江戸時代のあるあるも疑っている。

 それなら仲介人などなくてもある程度の信頼にはなるからな。


 あれこれ思案してても仕方ない。


 まあ事を起こすなら、夜になってからだろう。

 それが今夜とは限らないけど。


 


 ◇




 盤次郎の持ち場の裏庭へ来てみたが。

 もちろん、宿の屋根伝いにだが。

 誰かに姿を見られるわけにはいかないからな。

 

「まだ戻っていないようだ……」


 どこに行ったんだ。

 聞き込みをしたいのは山々なのだが。

 俺はいま宿の連中にむやみに接触はできない。

 それでは駒次郎を()いた意味がない。

 あいつも基本的に宿側の人間だからな。


 一人に知れたら伝わる可能性がある。

 俺を完全に信用してくれているかもわからないし。

 だって今日、出会ったばかりだもんな。


「いまから別口の人助けを探しておくか?」


 乗り掛かった船だが、なんだか危険な匂いがする。


 だけど、それだと忍者になった甲斐がなくなるじゃねぇか。

 ──と考えたとき、ふと思い出したことがある。


「そういや、俺が里から受けた任務ってどんな内容だったんだ?」


 その件は女神が処理を済ませていたし、終わらせる必要がなかったからな。

 一応、忍者として請け負ったわけだろ。

 どこかへ行く予定だったりしたのかな。この界隈のはずだよな。


 俺はそっと自分の部屋に戻り、荷物の中をまさぐってみた。

 荷物といえば、後から授かった薬売りの箱だけだった。


 すると、一通の封書が紛れているのに気が付いた。


 開封し、目を通してみると。




 ピピピッ!


『こちらをご覧ください』




 うん?

 女神エンジンが反応して、ゴーグルの窓越しに書簡を見ることに。

 そうか。

 現代語で見せてくれるためにか。

 一瞬だが、大昔のうねうねした文字だったのが見えたよ。

 あれじゃ、わけが分からんしな。



 なになに……。





 おぬしは、ツナセ街道の先の宿場町にて、情報を収集せよ。

 収穫があれば良し。

 その手で奴らから奪い返せば、なお良し。


 決して無理を通すでない。いのちは大事にせよ。

 情報だけでも良い、団子と饅頭を五十食分褒美に取らせよう。


 例の奴らが持ち逃げした頭領の形見を持ち帰れば、報酬百両を取ってつかわす。


 期限は十日以内。

 少年忍者サスケは一旦、報告と身の安全のため里に帰還せよ。



 追伸。

 もしもの時に備えて、我らの伝家の宝刀をおぬしにも授ける。

 綱の印をもって解き放ち、その身に開眼せよ。



 綱隠(つながく)れの里、里長 綱賀天内(つながてんない)






「え……っと、支度金はもともと使い切っても問題なさげじゃんか。この任務おいしいんじゃないか? 食いもんじゃなくて、クリア報酬百両だろ!」

 

 女神さん?

 伏せていたのは、たぶん期日からしてやり遂げるのが無理だからか。

 それともネタバレできない方なのか。


 いやこれ、後者じゃねぇか?

 前者であるなら、この書簡おいて置く必要ないだろ。

 俺が見つけたら絶対興味をそそると知っているだろが。


 忍者サスケってだれ?

 俺のことだろ!


 伝家の宝刀ってなに?

 ぜってぇ、超スキルだろ!


 綱の印ってどうすりゃいい?

 たぶん、サスケの俺は知っている前提なんだろうな。

 里に戻れば分かるかも知れないけど、、、


 綱隠れの里……どこにあるんだよっ!



「っていうか。どんな強敵なんだよ!……忍者か侍しか、いねぇよな」



 時間的にはやっぱり無理なのかも。

 素直に盤次郎を見張るとしますか。

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