024
突然死──そこに何があったんだろう。
女神は見ていたんだろうか。
状況ぐらい説明してくれないかな。
説明受けて俺は納得できるのかな。
できないだろうな。
事故死だろうと病死だろうともしくは他殺の線はないか。
ははは。
知れたところでやり返すすべもないというのに。
どれぐらいの時間経過があったのか。
とにかく死んだ、それは間違いなく。
もう振り返ろうとか思わない。
思えないんだ。
家を恋しんだって戻れないし。
泣いたって、わめいたって現状は変わらない。
考えようとすると力が抜けていくんだ。不思議だ。
振り向こうとすると涙が出る寸前の、あの目の奥にジンとくる切ない感じがする。
死なんて、あっさりと受け容れられる年齢じゃない。
未練はあるよ。たくさんあるよ。とても悔しい。
きっと今頃、町のやつらは笑ってるんだろうな。
変人消えてくれて清々するとか。
振り返るわけじゃない。
最後だから、冥土の土産ってやつを頂いていこうかと。
俺が街の奴らに受けてきた状況──【女神エンジン】。
知りたいことが分かるんだろ、これ。映像でもいいんだった?
俺をどんな風に見ていて、お前らは何を感じていたんだ。
俺の目に映っていたお前たちよ、何かを語れ。
ピピ!
検索完了。
いじめ。差別。偏見。マウントによるドミネーション(支配)
格差の見せつけ。ペット化。嫉妬。
その手のケースに見受けられる症例から、ADHD or 自閉症。可能性低め。
対人緊張の類と見受けられる。将来的に双極性障害へ移行…可能性あり。
「う~ん。よくわからんけど、精神疾患なのかな。親が一番認めないやつだ」
さぞ、とろくて苛立ってたんだろうな。
薄々とは感じていたけど。
こればかりは自分ではどうにもできない悩みだった。
冥土の土産って、死の際で嫌な奴から屈辱的な真相を聞かされるやつだろ。
これで心置きなく旅立てるわ。
◇
俺の大好きなUFOが候補から消えた。
次にと言われるなら印籠ぐらいだ。
これは、模造品になるが。
バレなきゃOKなんだろ。
名前がこうだから、時代劇にハマッていたけど。
さして詳しくもない。
むしろ小難しい歴史なんて苦手だ。
強い者は格好良くなれる、思いやりも持てる。
人助けもしてやれる。
そんな憧れが漠然とあった。
けど俺にあんな強さ身に付くはずないし。
せめて身分制度のあった徳川の印籠をひそかに抱いて、忍びに成り切って一人遊びをし、孤独を紛らわしていた哀れな身の上さ。
遠足で覚えた道を頼りにひとりで行った映画村々。
近くに土産物店があり、そこに40000円ほどで売っていた。
貯めていたお年玉を使いにいったんだ。
だれも知らない俺の宝物なんだ。
うわぁ。
今さらだけど、まじで取りに帰りたい。
持って行ければ、心のお守りぐらいにはなるのになぁ。
あ、そうだ!
俺所有の三つ葉葵の印籠──【女神エンジン】。
ピピ!
検索中……現存確認あり。調達可能──転送します。
「お、俺の印籠だ。土産物だけど。これ洗っても剥げたりしないんだ。黒地に金色……なんて神々しいんだろう。うっとりしちゃう」
『なにかを手にしているな。持ち込むモノが決まったなら、早速出発しようか』
「忍者と印籠は不釣り合いだけど、買いだもん」
見間違えるはずもない。
俺の宝物が目の前にスーッと現れた。
理屈なんてどうでもいいんだ。
君だけは俺を裏切らないよな。
身分の高いジョブなんか選べなかったんだし、見つからなきゃいいだけだ。
死と眠りは似たような状態だといつか医者が言っていたな。
これからいい夢だけを見に永遠の眠りに入るだけなんだ。
葉っぱのマーク。
幼い頃は呼び方も知らずに、そう呼んでいた。
三つ葉……を見ると不思議と胸が躍るんだ。




