114 【暗号解読】
団子と饅頭を五十食分。
たしかに一人に与える褒美にしては多すぎる。
そして左内は確かにいった。
里が大所帯だと。
作る手間を考えたとき、人手を要する。
それ以外だと街へ買い出しにいく必要がある。
それはつまり、街へ繰り出す係の者がいることになる。
少人数の里ならその間、手薄になる。
なにせ形見を盗まれたのだからな。
サスケがその里の者であるなら、買い出し係が複数人いることからどこかの街で出会う可能性もあるということだ。
サスケは任務で外に居たのだろうか。
「たしかに、この数は気になりますね」
「それに事前に任務内容を知らされていないと話が見えない。ならば書き記すのはなぜだ。何かしらの暗号解読がこの書には秘されている気がするのだが」
左内はそういうと、お里に目配せをしてから俺を見た。
お里にはべつの見解もあるということなのか。
「お里はどう感じたんだ。聞かせてくれ」
「もしも里に大勢ひとがいたなら、外に出るひとが決められていないとそれだけの食事を用意できないと思う……」
うん、それで。
「先生が言われるように暗号なら数字と、お団子とお饅頭にべつの意味が隠れていると思うの」
「べつの意味ってなに?」
「団子も饅頭も一見するとうまい菓子で褒美のように思えるが、団子は串に三つ、四つ差した丸い餅だ。饅頭は小麦の生地を焼いて餡を包んだ菓子だ」
「それをべつの意味にするにはどうすりゃいいの?」
「お団子ってほかに何に見えるかってことよ」
団子じゃないってことか。
「串団子を、こう横に並べて見るとかね!」
お里は、紙に絵を描いて見せてくれた。
「あぁ! これは、どう見ても「そろばん」じゃねぇか!」
「そうだ。五十個もの玉にそれぞれ串があるのを観察するために、皿に積み上げるのではなく他のものに見立てられないかと知恵を絞るのだ」
まさか、そろばんを暗示していたのかよ。
それじゃ、饅頭は何に見立てられたものなんだ?
「饅頭のほうはどうなりますか?」
「アンコは何色だね?」
「そりゃあ黒でしょう」
「黒い塊をこう、包みこんでいる絵を描いてみようかな」
「うお! それは……」
紙に描かれたものは。
昔の和菓子は餡がぎっしりと詰まっていて皮が薄いので、まんま絵にすると。
「まるで大砲の玉にしか見えない!」
「そうよね。数の多さが食べ物ではないといっていて、べつの物に置き換えたら戦の道具になってしまったね」
「え、褒美の意味が見えねぇんだけど……」
「これは戦いの狼煙を暗示しているのかもしれない」
奪われた何かをめぐっての戦いの暗示か。
そろばんと大砲って、まさか……。
「そろばんと大砲って、まさかどちらも「おはじき」。つまり弾く!」
「そう、武器を持って敵を撃つ。討ち取り手になることは忍者にとっては名誉なことなのではないかな」
先陣を切って戦う……みたいな。
戦いに身を置く者たちの望むところ。
だから情報を入手した者に褒美として召し取ることが許可されるということか。
敵を討つ戦いこそが褒美なのだな。
サスケは血気盛んな忍者なのかもしれない。
「あと質問をしてもいいかね?」
「うん?」
「これを記したと思われる人物、綱賀天内とあるが心当たりはないのかね?」
「あ……いやそれが」
差出人については弥彦の父親であると聞いている。
弥彦があの場面で嘘をつくはずもないから、それはほぼ間違いはない。
それは素直に伝えておこう。
「その人は弥彦さんの親父さんだそうです」
「ほほう。弥彦さんが忍者なのは間違いなさそうだね」
「だけど天内さんは弥彦さんが十九の時に亡くなったそうです」
「ええ? そんなに古いものがずっと期限切れにならずに9年後まであったりするの?」
「報酬だって百両もの大金だ。では、だれがくれるというのだ?」
「おれが生きていた頃は直近のものだと信じていたんだ。けど過去に来て見たら色々判明しておれもその信憑性を疑っている所だけど」
左内は腕組をして任命内容とにらめっこをする。
綱賀天内が死亡している。
当然引き継ぎ手がいなければ任務の期限は切れているだろうな。
「これって記憶のないグンがずっと持っていたのよね」
「ああ、そうだな。けど弥彦さんにも心当たりがないそうだ」
「それならなおさら報酬は望めないかもしれない。それでもグンはまだ隠れ里の場所が知りたいの?」
「もちろんだよ。行けるのなら調べなきゃ。任務が有効なのかを。大事なのは探求心だからな」
任務内容とにらめっこをしていた左内が口を開いた。
「ふむ、そうか。それならばここから場所の特定ができないか見て行こうか」
左内はつぎは場所の特定法があるかのように切り出した。
それって「綱隠れの里」の場所だよな。
いったいどこにそれっぽい暗号が見てとれるのか。
俺にはさっぱり見当がつかねぇよ。




