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111 【幽霊っぽく上をいく】


 呆れた話をしたから信じられないという顔ではない。

 俺という霊がどこから来たのか。

 それを頭で整理したときの驚きで口が塞がらなかったみたいだ。

 さすが不思議好きの先生だな。


「きみのいうことを信じた前提で話を整理すると。十六のお里がいるそばに駒次郎と盤次郎もいるのだな。そしてきみは駒次郎に出会ったとき、十四。

 ということは、きみの話は9年後の話だというとこになる?」

「うん」

「もう一度整理とともに確認させてくれぬか?」

「うん?」


 もう一度確認がいりますか。

 なにか飲み込みづらいことでもあったか。

 信じる前提なら飲み込んでよ。


「きみは9年後は生きていた。死んだのはその先のはずだから化けて出るのは更に未来のはずだろう?」

「わたしも過去に死んだひとがいま化けて出て来るならわかるけど」


 あぁ。

 そういうことか。

 9年後に死んだ者が過去に化けて出て来る……だれがお化けだ!

 それはさておき。

 未来から来た幽霊の存在はたしかに不思議であるな。


 やはり素通りしてはくれないのですね。


「わけを話します。この駒次郎がすごい忍術使いになっていて、俺は駒次郎の手によってに死に至ったのです!」

「えっ! コマちゃんとなにがあったの?」

「駒次郎に出会った日、彼はヤクザ者に囲まれていた。俺も忍びの端くれだったので彼を弱者だと思って救ってやったのです」

「ほう!」

「彼はお礼に旅籠を紹介してくれたのです。そして道案内の道中で彼の抱える事情を聞くことに」

「いい出会いじゃないの?」

「うん。良い奴だったんだけど。彼には2人の幼馴染がいてまず盤次郎を紹介されたわけです」

「わたしは? どこであったの?」

「お里は名前だけ聞かされていて一度も会えていないんだ」

「ということはお里はすでに遊郭にいたってことかい?」

「うん」

「盤次郎がお里の身請け金の75両を工面するためにその旅籠の蔵を襲撃する計画であることを知ったのです」

「ええっ? バンさんがわたしのためにそんな悪事に手を染めようなんて……」


 父親の借金よりも盤次郎が悪になろうとすることの方が衝撃のようだ。


「駒次郎も金策の手立てがなくて、2人に悪事を働いて欲しくなくて俺が里から命じられた任務の報酬が100両あったもので、ついそれを打ち明けたのです」

「忍者ってそんなに儲かるの?」

「詳細は知らないんだ。俺はその時からすでに記憶が曖昧で自分が本当にサスケという忍者なのか自信がなかった。荷物のなかに自分への任務と思われる書簡を見つけた」

「もともと記憶が曖昧だったのか」

「それってさっき話してた綱隠れの里なのよね?」

「うん。だけど記憶に自信がない俺は、その里の場所を覚えてはいなかった」

「なるほど、帰るべき場所が思い出せなかったのか」

「うん。それで互いに忍者であったことを明かし、駒次郎にも手伝ってもらうことに。その報酬金はお里さん奪還のために盤次郎たちに差し出すことで合意したのですが……」


 いったい何があったのかをどう説明付けようか。


「聞いていた話によれば3人が幼少に住んでいた長屋がある町がここだと言っていたから、ここにやって来た感じです」

「ちょっと、グン? 肝心な話が抜けていてよくわからないよ」

「どうやら語りにくい過去を背負ってきたようだな」

「それでも、もうすこし聞かせてもらわないと」

「うん。駒次郎には何者かの敵対者がいたみたい。お俺は待ち合わせのツナノセ神社で敵対者と間違われて背後から首を絞められて……」

「ま、間違いなの?」

「うん、弁明するヒマもなく命を取られた。彼が何者に怯えて暮らしていたのか。それらを知るために3人の幼少期にやってきた。死ぬとどこにでも行ける。ただ誰かの身体を借りなければいけなくて」


 うまく繋げられた感じかな。


「だからコマちゃんに乗り移ったの?」


 俺は素直に首を横に振る。


「コマさんにも会いに来たわけだよ。でも俺のサスケという5歳の肉体が、存在自体がこの時代にないということだった」


 目の前のふたりは目を見開いた。


「ないっていうのはどういうこと?」

「見つからないか、まったく存在していないってことだよ」

「幽霊になると過去のことはどうして分かるようになるのかね? 感覚とか?」

「ううん。女神さまがそう言ったんだ」

「え、女神って女の神様よね?」

「うん。会ったんだ。ここへ来られたのも俺の能力じゃない女神さまの計らいなんだ。サスケの幼少期の肉体が見つけられない女神さまに変わり、駒次郎の身にはいってしばらくその原因についても探ってこいと仰せつかったんだよ」

「それじゃきみはいま、神様が後ろ盾にいるということになる?」

「うん、そうなります」


 興奮しているようだが恐れとは程遠い表情のふたりだ。

 目をキラキラさせていて、お里はともかく医者が少年のように感動している。


 ふふっ。

 人間にいかなる知識や智慧があろうとも、財力や地位があろうとも。

 神の後ろ盾を持つ者の前にはこうなるのだよ。

 どうやら、幽霊っぽく語ってやったら俺を拝みたくなってしまったみたいだ。

 

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