表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
108/120

108 【算聖】


「セという字がふたつあるなら偽物だったりしない?」

「ほほう。お里はとんちが利くのお。和算家(わさんか)関孝和(せきたかかず)も顔負けだな」

「え? どなたのことですか先生。あんまりむずかしい話をするとグンが怯えるのでご遠慮願いますね」

「おおすまんな。いつもの癖でつい。お里といるとどうにも楽しくてな」

「どういうことだよ、偽物って。なんの話を切り出してんだ?」


 医者に注意を促すと流し目で俺を見て明らかに小馬鹿にしている。


 また出たよ、お里の漢字の読み替え遊びが。

 なにを企んどるのだ。

 お医者は「とんち」だといっているが。

 意味を教えろよ。

 くそ。

 医者のおじさん、俺への興味は消えたのかよ。

 お里め、嫉妬して医者の興味を自分に惹きつける魂胆だな。


 それよりお医者は続けてなんといったのだ。

 和算家(わさんか)関孝和(せきたかかず)とは何者だよ。

 だれが何に怯えただと!?

 ようし。

 有名人みたいだな、エンジンしてやる。



 和算家(わさんか)関孝和(せきたかかず)──【女神エンジン】!

 


 ピピッ!



 ──────



 関孝和は1681年頃に円周率を小数点以下11ケタまで求めることに成功した江戸時代における天才数学者の一人である。

 孝和は関流の始祖として「算聖」とまで崇められた。



 はあ?

 円周率をどうしたって。

 まじか。

 もっと教えろ──【女神エンジン】!



 ピピッ!


 計算方法は円に内接する正多角形の周を計算して円周率に近づくという方法である。


(なんか学校で習った記憶があるけどよく知らん)


 もっとだ──【女神エンジン】!




 ピピピッ!


 孝和は正13万1072角形の辺の長さを計算し、小数点以下11桁まで計算した。

 この計算方法は現代では「加速法」と呼ばれる発見である。



 もう一声だ──【女神エンジン】!




 ピピピッ!


 孝和はその他「発微算法」(1674)という著書で新しい代数方程式の解法を示した。

 また行列式の理論を生み出し、ベルヌーイ数の研究を行なった。

 スイスの数学者ヤコブベルヌーイも同時代にこの研究をした。

 「関・ベルヌーイ数」とも称される。


 ヨーロッパの数学者たちの先駆けとなる世界初の発見である。

 関孝和はとてもすごい人物。

「算聖」と呼ばれる世界三大数学者。



 算聖の残り二人を出せ──【女神エンジン】!




 ピピッ!


 イギリスのニュートン。

 ドイツのライプニッツ。


(江戸時代の日本にそんな天才がおったとは。

 そいつはどこの出身なのだ【女神エンジン】!)



 ピピッ!


 寛永19年(1642)上野国(群馬県)生まれ。


(群馬の生まれなのね……偶然か、俺の名の一字が!

 まぁ偶然だろ、群馬は生前から知っていたし)


 孝和はいわゆる「円理」の創建にも貢献。

 円理とは円周率等の研究から発展した和算の一分野だ。

 孝和以降の発展で無限和が扱われるようになった。


(数列における無限の和……ふむふむ。

 こいつらマジで超ムズい話を平気でしやがって。

 まじムカつくわ!)




 ──────




「ほら先生、グンが黙りこんじゃった。機嫌を損ねたらわんわん泣くかもしれないの! 赤子のお守は御免よ。だってわたしあなたのママじゃないのよ!」


 俺のことを横目に赤い舌の先をペロッと出しやがった。


 お里、調子こいてんじゃねぇぞ!

 覚えたばかりの言葉を復唱していい気になりやがって!

 だれがママだ。

 だれがわんわん泣くんだと?

 赤子とはどういうことやねん!

 

 俺を怒らせてどうするつもりだ。

 話を合わせるんじゃなかったのかい!



 はぁはぁ……ぜぇぜぇ。



 だがここは冷静に、そのとんちの意味を求めてからだ。

 帰ったらとっちめてやるがな。


「セがふたつあると偽物の意味はなんですか? せんせ~」

「おや、私を先生と認知してくれるのかい。うれしいね。答えてあげよう」

「うん」

「セをふたつ並べてごらん」

「セ、セ」

「二個のセのことだよ」

「に……ニセってことか……」

「せいかーい!」

「単なる駄洒落やないかい、それのどこが算聖と呼ばれた孝和(たかかず)なのですか?」


 うん?

 お里しか見ていなかった医者が俺をじっと見つめだした。

 先生呼ばわりしてもらえたのがそれほど嬉しかったのか。

 現代でもそういう人おるよ。


「きみ!」

「な、なんですか!?」


 医者がガバッっと俺に飛びつくように近くに来た。

 びっくりさせんなや!


「もしや関孝和を知っているのかね?」

「す、すこしだけだよ。計算は得意じゃないからそんな詳しくはないよ……」

「ええ? グンってそういうことも分かるのね!」

「す、すばらしい! お里や、よく彼を診療所へ連れて来てくれた。感動だ!」

「それじゃ先生、彼がこれからも出かけて来れるようにうちの親への説得をお願いしてもいいですか? 帰りが遅くなったりしても便宜をお計らいください」

「お安いごようだ!」


 そうか。

 なーるほど。

 俺には女神が付いているのだ。

 がっはっはー。


「よかったわね、グン」


 なんだお里のやつ、俺にウインクなんかしやがって。

 気持ちわりぃな。


 つーか。

 ニセといった意味を詳しく聞かせろや。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ