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105 【詰まされる】


「話を合わせろとか偉そうなこといわないでよ」



 偉そうとはなんだよ。

 提案に乗ってやろうといっているだけなのに。



「わたしが先生にグンのことをうまく紹介するから、それまで口を出さないでね」



 偉そうなのはそっちじゃねぇか。

 たしかに霊能先生の知り合いはお前だから、そこはそうしてやるが。

 自分の提案だからって稚拙な駆け引きでは大人を欺くのは容易じゃないぞ。



「俺の証言とお前のいうことがかみ合わなかったら信じてもらえないだろ……」



 俺の言いたいことを途中でさえぎるように口の前に指を立てて来た。

 なんだよこいつ。



「幽霊がそんなにおしゃべりじゃ困るのよ。わたしのほうが話に合わせるのが上手なのは証明済みよ? まだ気づいてないのかしら」

「なんのことだ、それ?」

「さっき文字の読み方を問いましたら見事に不正解でございましたけど……」

「なに!? それについては正解だとお前もいっただろ?」



 不正解とはどういうことだ。

 そんなはずはないだろう。

 女神エンジンで検索した結果だぞ、人知では計り知れない神の道具だ。

 間違えているわけなどあるか、このくそチビが。



「やっぱり気づいてないのね。こおりはつくりが違うのよ!」

「こおり……の作り方? 唐突になんの話をしてんだよ」



 こっちは時間がないんだよ。

 ガキの話は意味不明だから苦手だよ。

 だからといって辛く当たれば泣くし、面倒くせーな。



「不正解だったら、ひつじくんのままだといったのに」

「それは正解したじゃねぇか」

「してないよ。わたしが合わせただけよ。おおざとくん!」

「だれが、おおざとくんなんだよ?」

「あなたよ」

「なんで急に名前が変わるんだ?」

「いい? 『群』を右から読んだらひつじくん。これは納得したよね?」

「ああ」

「あなたが答えたのは『郡』よ。これは、こう書くのよ」



 筆を執りその文字を紙に書いて見せて来た。

 うん?

 なぜだ、そのグンは郡奉行のグンだ。



「…………つくりって漢字のそれのことか」

「そうよ。だから『群』をこおりと読むなら、あなたは「おおざとくん」となる」

「いや……たしかにそうなる……みたいだ」



 なぜだ。

 群と郡を言い間違えたのか。

 おなじグンだから、発音が微妙に違ったのか。



「ちょっと待ってくれな」

「だからなぜ待たせるのよ!」

「考えさせてくれ……」

「いまさら何を考えるつもりなの? あなたが先生の前で言葉を言い間違えたらわたしが取り繕うしかなくなるから困るのよ。ボロを出さないために試したのに」

「えっ……」



 そのためのテストだったというのか。

 俺は……。

 読み方の前知識がなかった。

 それは認めるとして。


 


 つくりが羊の『群』の読み方──【女神エンジン】!




 ピピピピピ──ッッ!



 『群』 グン むれ むら‐がる こおり




「お、おい。やっぱり「こおり」とも読めるんじゃないか」

「あなたさっきも考える時、上を向いてたけど誰かに確認してるの?」

「そ、そんなわけないだろ!」

「だってグンは幽霊さんじゃない?」


 

 お里……。

 子供だと思って侮っていたのは俺の方だったというのか。


 こいつはすでに俺の知恵と知識を試していたようだ。

 女神エンジンがあるから楽勝だと思いこみ受けたが。

 このように言い負かされようとしている。


 顔から火が出そうなぐらいにバツが悪い。

 しかも誰かの知識を借りているのではないかとまで、洞察していたとは。

 それでも不正解だというのならこの時代ではまだ読み方がなかった?


 いや、こおりの(ぐん)はこれだ。


 弥彦には変化を加えて女神と転生の話をした。

 やむを得なかった。

 命懸けだったからな。


 だが、お里にまで明かすわけにはいかない。

 彼女の指摘通りだ。

 一本取られたような状態だ。

 エンジンの結果は未来の話なのかもしれない。

 時代に合わない言葉もあるだろうことに配慮しきれなかった俺のミスだ。


 忍者に出会えば武力で詰まされ、こんな子供に会えば知力で詰まされる。


 だがここは命までも取られはしない。

 悔しいが冷静になろう。



「お里、すまなかった。病み上がりだ許せ。しばらくお前に任せるよ」

「あ、うん。霊能で評判を得ている人に会いにいくの。相手がこちらの嘘を知りながら話を合わせて来たらどこかでボロが出る。二度と信じてもらえない。だから試したりしてごめんね」



 お里がこうであるなら、盤次郎はもっと手強くはないか。


 夕刻が迫るまではお里と医者のところへ行く。

 まずはそちらでの信用を勝ち取ることに専念しよう。


 そこではお里にリードしてもらうしかない。

 まったく、女神エンジンの情報が裏目に出るとはな。

 


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