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104 【想い人】


「わたしね、以前からバンさんの力になってあげたいと思っていたの」

「まあ気持ちはわかるけど。バンさんの都合を考えたら夕方にしか会えないから無理だっただろ?」


「そうなのよ。子供だもの、親に内緒で会っていることが知れたらしばらく外出もさせてもらえなくなっちゃうの」



 だから言わんこっちゃない。

 それを承知の上で何ができるというのだ。



「でもコマちゃんと一緒なら、よい言い訳ができるのよ!」

「俺と一緒ならできる言い訳ってなんだよ?」

「コマちゃんをお医者さんに連れて行くのよ」

「俺はべつにどこも問題はないぞ」

「グンじゃなくて、コマちゃんのほうだよ!」

「こいつの身体を医者に診せるのか?」

「これまでも何度かお世話になっていた先生の所なのよ」

「そうなのか」

「だから目が覚めても診てもらう必要ってあるじゃない?」

「だけど医者に診せても問題がないと言われたらすぐ帰る羽目になるだろ」

「馬鹿ね! そこはグンがお芝居をするのよ、子供じゃない知恵を出してね」



 しかし、長居をする理由になりそうな病名とかを知らないぞ。



「ていうか、結局俺が考えるのかよ」

「ちがうよ。お芝居を打ってといっているだけよ」

「何をさせようというんだ」

「まずはお医者に診せに行きます。わたしが付き添います。親が納得します」

「ほう、それで?」

「お医者の前でグンの子供離れした14歳の知識をたくさん聞かせます」

「うん……そして?」

「お医者を驚かせるのが目的なので、身体が子供なのに頭が大人も顔負けの凄さだと思い込ませることが大事なのよ」



 なんだ、「身体が子供で頭脳が大人」を医者に披露しろというのか。

 そんなことをしたら医者が騒ぐぞ。

 


「万が一にも騒ぎになったらどうするのだ?」

「それがね騒ぎにならないお医者さんなのです」

「は? なぜそう言い切れるんだ?」

「変わり者のお医者さんだからよ!」



 ドクターが変人だと聞こえたのだが。

 お里の持ち掛けようとしている話は最後まで聞いてやるつもりだが。

 相手が変人や偏屈であろうとも結局は大人なのだ。

 ウソなんかついたことが発覚すれば別の意味で家に返してもらえないぞ。

 お里がいま途轍もなく大胆な行動に出ようというのが伝わって来る。


 きっと良からぬことにちがいない。

 そういう浅知恵を労して俺は苦戦を強いられてきた。

 それで死んだから、お前の前に現れたわけだ。

 俺自身の考えで身を滅ぼすのならまだしも。


 まじの小児の浅知恵で身を滅ぼすのは御免だ。



「どんなふうに変わっているんだ、その人」

「それがね、幽霊の存在を信じているのよ!」

「なに?」

「ふつう子供が病になったら神社にいって神様に祈ったりするじゃない?」

「うん」

「その人はね、霊の世界と交信ができるんだと評判だったりするのよ」



 霊界との交信ができる奴がおるとな?

 胡散臭い話だが、巫女かイタコか。

 死者の魂と話ができるという、あれか。



「グンはそれに近い人なんでしょ? 幽霊がコマちゃんの身体に憑りついている、それを分からせてあげれば、町の人にも信頼を得ている大人を味方にできるかも知れないじゃない」

「たしかに俺に興味を示すかもしれないが、お里の親が納得する理由になるのか、それ?」



 お里がいわゆるドヤ顔を見せて来た。



「コマちゃんの身体を心配して、その霊能先生を呼んできたのは、うちのお母さんなのよ! お母さんも霊能先生の信者なのです」

「おばさんは何を見てもらったんだ?」

「お父さんがする賭け事で将来一家が身を滅ぼさないか。先生はお父さんのご先祖の運気が最高だから好きなだけさせて置いて大丈夫だと断言してくれたのよ」



 残念だが思いっ切り「外れスキル」だな、それ。

 そいつに知識をひけらかす必要性がどこにある。



「信じているのなら紹介だけで良いだろう? なぜ思い込ませるのだ?」

「コマちゃんに憑依している霊はグン。目覚めたとき傍にいたのがわたしだったから、わたしの言うことしか聞かない幽霊だと演じるのよ」

「つまり……どういうことなんだ?」


「わたしはグンの想い人で、わたしが帰ろうとするとグンも帰りたがるの。先生に興味を持たせてからそうすればきっと先生は親になんとでも言い訳してくれると思うの」



 思うの……。



「想い人というよりかは重い人だな、それ」

「あくまでもお芝居よ! 気乗りしないのなら一人で他の道を当たれば良いわ。わたし何にも手伝ってあげないんだから。遊び相手ぐらい居ますから好きにすればいいよ」



 そういってお里は俺の顔の前でちいさな赤い舌をペロッと出した。

 話を聞く姿勢。

 相槌などから、俺が小馬鹿にして見下していたことに気づいていたようだ。

 手を組まないなら一人で勝手にすればいいとふくれっ面を見せる。



「あくまでも芝居だからな! 俺がいうことにも上手く合わせろよな。ほんとの霊なのは俺なんだから」


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