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「俺、死んだから。そこへ行かなきゃならないの?」


『まあ、最終的にはな──』



 嫌だと駄々をこねたら慰めてくれそうな、柔らかい声に変わった。


 どういうことだろう?最終的って。

 すぐには行かない感じ。なにか問題があるのか。



『私は──お前を(きた)えなければならぬ』


「鍛える……おつむをですか?」


『異世界には敵がおるのだ。私の敵対者がな』


 

 確か……この方は太陽の女神って言ったっけ。

 敵となれば、肉体の方を鍛えるのかな。



「太陽の敵ってこと? 金星とか木星とかの子供の神がいるの?」


『ふっ。そういう発想になるのか……。この時代の子らは』



 声がいっそう和らいだ気がする。

 そして表情は笑みを湛えているようでもある。



『まあ、今はそんな所でいい。それで異世界に入るまでに、お前には強くなってもらいたいのだ』


「身体を鍛えるの? そんなんで神様のしもべとかをどうにかできるの?」


『ふっ。しもべか。──あいつらは、まさにそれだな』



 うん?



 女神の視線がどこか遠くを見つめたような。

 敵対者に対しての位置づけのことだろうか。

 故郷で何か大事があった感じだが。

 

 そんな所へ俺なんかを連れて行って戦力になるのかな。

 そうは言っても行く当てがないわけだ、俺は。


 一体どうして、こんなことになったんだ。


 俺も家に帰りたいな。

 もう地上に降ろしてもらえないのかな。眼下をちらりと見た。

 もと居た公園の脇に目をやる。すぐ傍だからな自宅は。



『家が恋しいか? 残念ながらお前の帰る場所はもうここにはない。お前は私と共に進むのだ。急ぎの案件なのでな。よし、余談はこのぐらいにして本題に移ろうか。まず、お前に手渡すモノがある』



 急ぎの案件……。

 その言葉には何だか焦りの色が(うかが)えた。

 すこし口調が早くなっているのを感じたのだ。

 俺を鍛えるという話だから、鉄アレイか縄跳びでも出してくるのか。


 となれば……。


 そんな急激に体力アップはできないから、時間的に、まだこちらの世界に居られるのかも。

 筋力トレーニングをまさかこの空の上でさせないよな。

 俺の中のイメージは重力に逆らい過ぎた、こんな場所ではないからな。

 これはもしかすると、頼めば地上には戻れるのかもしれない。



『ハイ、これ』



 え、なに。


 両腕を綺麗に揃えて、こちらに向けている。

 手のひらの上に見たことのない造形物がある。

 メタリックっていうのか。それはUFOみたいな外見で神秘的だった。


 なんか想像してたものとかけ離れた物を差し出されたが。

 

 全く、この女神と来たら優しい時は、声も顔も美しいのに。

 いまの、「ハイ、これ」は、同級生みたいな感じだったぞ。

 そこからは少しはしゃいでいる感がにじみ出ていた。


 屈託のない笑顔を見せてきて、まるで少女じゃないか。

 ちょっと可愛かった。いや、かなりかな。



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