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第104話 陰陽師じゃありません

『俺の屍が最強だっ!最強屍決定トーナメント開幕だァァっ!!』

「「「「「おぉぉっ!!」」」」」


 かわいいわね♡


 あたし、雨宮小春♡タマを落として新しい性に目覚める中学一年生よ♡

 魔人、宇佐川結愛ちゅわんからの依頼完遂の為に潜入した屍コレクション全国大会。

 でも残念ながら目的の覆面やろー、ジャン・アンピエール・ルイホッコ・マッカンシー・モルケッチャロフ・ハルハルタン・ルイセルフ・L・アンジェリーナ・タナカ三世ちゅわんには逃げられちゃったわ…


 そして始まってしまった屍コレクション最強トーナメント……




『コロス…コロス……』

「うわぎゃぁぁぁっ!!」


 あたしは無双してたわ。


「…トーナメント戦はAからDブロックに分かれてその中で一対一の勝ち残りバトルを繰り広げていきます」


 この人は谷ちゅわん。あたしのマネージャーよん♡今日は車を出してもらったわん♡


「ゲーム機本体での無線通信により手持ちの屍で戦うのですが……」


『コロス……コロス……』

「ぐわぁぁぁっ!!」


「舞台はAブロック。対戦者を尽く天井に吊るしていくこの猛者は何者なのか……」

「なにを撮ってるの?谷ちゅわん」

「事務所の公式Y〇utubeチャンネル用の動画です。この業界にお休みの概念はございません」


 ……Y〇utubeには載せられない感じの絵面…敗れて天井から吊るされた挑戦者達を映す画角内でただ一人戦場で仁王立ちするのはこのあたし、雨宮と--


『コロス……』


 あたしの最強の屍、藤島さなえちゅわんよ♡


『Aブロックのダークホース!今大会初出場、謎の参加者雨宮小春ぅぅ!彼の前に砕け散っていく参加者達!しかしなんだぁ!?あの…あの屍はなんだぁぁ!?』


「司会者が居るので実況要らずですね」

「あのお客様……申し訳ありませんが撮影の方は……」

「……」


 あたしの屍、藤島さなえちゅわん。

 あたしの学校に巣食ってた呪いの根源にしてあたしの人生最大の障害として立ちはだかった『演劇部』の怨念……

 の、墓参りに行ったら捕まえたの♡

 Lv1で全ステータスカンスト、しかも存在感が強すぎてゲーム機から物理的に飛び出してるわ。

 そして強い。


「こんな屍、見たことないぞ!」「いつ実装されたんだ!!」「てか、これほんとに屍か!?」「チートだ!チート!!」

「……うふっ♡文句があるなら力づくでねじ伏せなさい?それが屍最強トーナメントよ?」

『ウワァァァァ……』


「ぐはぁぁ!」「げばばぁ!?」「かはぁ!」


 立ち塞がるライバル達…でも無駄よ。なんせゲーム機から飛び出したさなえちゅわんはゲーム内の屍を無視してプレイヤーを物理的に天井に吊るしていくんだから…


「……優勝も夢じゃないわね」

「小春……これなんのゲームですか?」


 ********************


『皆様、大変長らくお待たせ致しました!死屍累々を踏みつけて、今各ブロックから最強の屍が出揃いました!』

「あの…KKプロダクションの公式Y〇utubeチャンネルでして……」「いや、ですから撮影は…」

『ステージ上をご覧下さい!これが…全国最強の屍ビッグ4だァァ!!』

「「「「おぉぉぉぉぉっ!!」」」」

『Aブロック……今大会初出場…物理最強の屍を引っ提げて降臨だ!雨宮ーー小春ぅぅぅっ!』

「うふん♡」『コロス……コロス……』

「「「「「ぉぉぉっ!!」」」」」

『Bブロック……前大会の覇者…人権屍…「ヨシダのばあちゃん」を使いこなす最強のネクロマンサー……ダンダリオン・佐川ぁぁぁぁぁぁっ!!』

「俺が世界一だぁぁっ!」

「「「「「ぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

『Cブロック……どこにでも居る苗字とは言ってはいけない…伝説の陰陽師が現代に蘇った!!阿部あべぇぇぇなぎぃぃぃっ!!』

「違います、いつからそんな設定が出来たんですか。私警官です」

「「「「「ぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

『Dブロック……今大会最難関ブロックを勝ち抜いて…この男が登場だっ!!大人気ないぞ!ニンジンドー本社開発部……木枯こがら文次郎ぶんじろうぅぅぅ!!』

「お前らゲームなんてしてねぇで働けぇ!」

「「「「「ぉぉぉぉっ!!」」」」」

『以上各ブロック優勝者から勝ち残り決定戦を行います』

「「「「「ぉぉぉぉっ!!」」」」」


 だ、そうよ。


 うふっ♡懐かしいわねこの感じ…スポットライトに照らされたステージ上…谷ちゅわんが腐ったマグロの目みたいな視線を向けているわ。失礼しちゃうけど……この勝負、負ける気がしないのよね♡


 ……何しにきたんだっけ?あたし。





 --通信が完了しました


 液晶画面にそんな字が浮かんできて…いよいよ戦いの火蓋が切って落とされるわ…

 4人対戦画面では3体の屍が睨み合って開始の合図を待ってる。あたしの屍はあたしの後ろに居る。


『用意はいいか……では…バトルスターートォォォッ!!ごほっ!ごほっ!?』


 司会者の喉が潰れたみたいね。そんな彼の喉を労る人は居なくて、みんな一斉にゲーム機に向かうわ!

 バトルはターン制。戦いの先陣を切ったのはBブロック、ダンダリオン・佐川。


「人権屍の力を見ろ!結局王道が一番!喰らえ!「取れちゃった刺し歯」でダイレクトアタック--」

『キタナイ』

「ぐはぁぁぁっ!?」


 藤島さなえ、ダンダリオン・佐川へダイレクトアタック。ダンダリオン・佐川は死んだ。


「なっ……本当になんなんだこいつは!?こんなの開発段階では存在しなかった…!バグか!?くそっ!俺のターン!「開発者権限!データ初期化」!」

『シネ』

「ぐはぁぁぁっ!?」


 藤島さなえ、木枯らし文次郎へダイレクトアタック。木枯らし文次郎は死んだ。


 自分の屍ちゅわんを残してステージ上に吊るされる猛者二人…そして残ったのはあたしと……


「ガタガタガタガタ……あの、それ絶対おかしいですよね?」


 Cブロック、阿部凪ちゅわんとあたし。陰陽師らしいわ。


「最後よ……優勝賞金はあたしが貰うわ♡陰陽師だかなんだか知らないけど、あたしに勝てると思わない事ね?」

『お前何もしてない』

「しかもオカマだ…どうして?どうして私の周りにはこんなにオカマが沢山……」


 震えるだけ?なら決めさせてもらうわよ!


「いくのよ!藤島さなえちゅわ--」

『イヤだ、あの女…恐ろしい……』


 なにゴーストみたいなこと言ってんのよ。あんたより恐ろしい奴なんて滅多に居ないわよ?


『吸われる……』

「え?何が?」

「……あの、私貴重な休暇を使って東京まで来たんです。お願いなので普通にゲームで勝負しませんか?」

『吸われる……っ!』


 ……?何かしら?この感じ……

 なんか、あたしの中から何かパワーが吸われていくような感じがあるわ…

 どうしてかしら?あの子の全身が青白く発光してるわ?


『くっ……!なんていう霊感!共鳴しちゃう!私……取り込まれる!?』

「あのなんか言ってるんですけどあなたの屍。怖い怖い怖い怖い」

「怖いのはこっちよ!やめて!あたしの藤島さなえちゅわんをどうする気!?」

『あ、抗えない……!?うわぁぁぁっ!!』


 き、消えていく……あたしの最強の屍ちゅわんが……!

 フラッシュバックしていく舞台かえるの王さま完成までの日々の記憶を残して、あの子が……消えていく!


『ウワァァァァァァァ!!』

「さなえちゅわぁぁぁんっ!!」


 そして、霞のように消えていく藤島さなえちゅわん…取り残されたあたし。相対する阿部凪ちゅわん…

 彼女の輪郭は光から解放されていって…なんか一瞬輪郭がダブって見えたような気がしたわ…

 そして……



「……あれ?どうなりました?背後霊、消えてますよあなた」

『私、取り込まれちゃった……』

「え?今の声どこからしました?」

『なんて居心地のいい肉体…霊体とこれ程親和性の高い肉体が存在したなんて……』

「あの!?なんか変な声が聞こえるんですけど!?私!前にもこんな事あったんですけど!?」


『……こ、これは…陰陽師の力か?雨宮選手の最強の屍が……と、取り込まれた!?』


 ……負けたの?あたし…


『ゆ…優勝ぉぉぉぉぉっ!!Cブロックから現れた陰陽師!安倍晴明の血を引く者!だって苗字同じだもの!!阿部ぇぇぇ凪ぃぃぃっ!!』

「いやぁぁぁぁぁぁっ!?」

『委任状渡すから住民票の移動お願いね?』


「……負けたわ」

「はいはい小春、帰りますよ」

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