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たまのゆっくり時間


 新しく水の精霊のウェネが現れたとはいえ、生活自体にさほど大きな変化は無い。

 せいぜい就寝時にボサノムの隣を要求してきて、最終的に俺とセリカの間でサラノムが、俺とウェネの間でボサノムが寝ることで落ち着いた程度だ。ベッドが大きくなっていて、本当に助かった。

 ウェネの扱いはノーム達同様、バーナード家で保護した孤児ということにして、たまにミィカ達と遊びつつ、主にユリスの下で使用人見習いみたいなことをやっている。本人曰く、花嫁修業だとかなんとか。

 肝心の相手であるボサノムはそんなウェネの気持ちに一切気づかず、ロイとマルコとサラノムとミィカと毎日のように遊んでいる。頑張れウェネ。

 そんなちょっとした変化が起きてから数日が経過したある日、ノーム達の力を検証するために植えた大根の生育結果がケルムさんによって届けられた。


「きゃふうん! 素晴らしい、素晴らしいですよ!」


 初っ端から全力全開で興奮状態のケルムさんは、報告書と思われる紙の束を机の上に置く。


「生育の早さと品質の向上はそのまま、様々な品種が環境と関係無く無事に育ちました! 味の方も絶品で思わず、あおぉぉぉぉん! と吠えてしまいました!」


 それはなによりだけど、まずは落ち着け。

 あまりの興奮に、結婚前の年頃の女性がしちゃいけない表情になって、同席してる義母上とセリカが引いてるから。


「ケルムさん、落ち着いてください。はい、お茶です」


 春になったらケルムさんと結婚予定のサミーが、性別を勘違いさせそうな笑みで紅茶を置く。

 飲みやすいよう、熱々でない紅茶を一気に飲んだケルムさんは大きく息を吐く。


「ふう……。申し訳ありません、つい興奮してしまいました」


 どうやら落ち着いてくれたようだ。


「では、改めてご報告させていただきます」


 佇まいを直したケルムさんによって、詳細な報告が開始される。

 それぞれの大根の種類、それぞれが本来はどういった環境で栽培されているのか、それを踏まえて今回の実験における生育具合との比較、そういったことを見事に育った実物を前に聞いていく。

 味の方も協力してくれた農家と検証済みで、歯応えも味わいも通常の物とは別格だったらしい。


「結論として、生育速度と味の向上については調理魔法による農作業の成果と同じですが、どんな品種でも問題無く育てられるようになっています。少なくとも、環境の違いが生育に影響する事は無いと断言できます」

「季節感は無視できないの?」


 義母上からの質問に、ケルムさんは資料の一部を取り出して差し出した。


「こちらの資料はブロッサムさんと共同で土を調査した際のものなのですが、栄養や魔力から推測するに季節感はあまり無視できないと思われます。育つには育つでしょうが、品質が良くなるとは思えません」


 なんでもかんでも上手く育てられる訳じゃない、ということか。


「そう……。推測段階なら、一応実験はした方が良いかしら?」

「できればそうしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「構わないわ。ちゃんと調べた方が、春へ向けての準備がしやすいものね」

「承知しました。では明日までに計画書を作っておきます」

「お願いね」


 おそらくは上手くいかない確率の方が高いんだろうけど、やっぱりちゃんと実験して検証しないとな。確認もせず思い込みで判断するのは、早計ってもんだ。

 そしたら次は各種大根の味見だ。どれだけ言葉で良さを説明されても、食べてみないことには良さが分からない。

 というわけでサミーへ大根を渡し、ささっと準備してもらった。


「大根は生食が可能なので、そのまま細切りにしました。歯応えと大根自体の味を確かめるには、これがいいと思います」


 サミーに頼んで用意してもらった試食用の大根各種を食べてみると、確かにどれも絶品だ。

 元々のアオクビって品種もそうだけど、食べたことが無い他の品種も良いじゃないか。

 味や触感は微妙に違えどどれも瑞々しくて青臭さは無く、味がさほどある訳じゃないと思っていた大根なのに、間違いなく美味いと言い切れる。


「どれも美味しいわね。でも品種が違うだけで、こうも食感や味が変わるのね」

「セリカ、食べられるか?」


 妊娠したら味覚や嗅覚が変わって、今まで平気だったものが食べられなくなることもあるから、隣で試食をするセリカに尋ねる。


「はい、これは食べられるので大丈夫です。辛いのは苦手なので遠慮したいですが、他は美味しく食べられます」


 それなら良かった。

 試食が済んだら、もう少しだけ打ち合わせをして話は終了。サミーとちょっとばかりイチャついた後、ケルムさんは帰っていった。

 この後は第二執務室で仕事……ではなく、自室でのんびり過ごす。

 冬で仕事が減って余裕ができたから、以前より休みの頻度が少しだけ上がった。

 さすがにケルムさんの報告は無視できないから参加したけど、本来なら完全休養日だった。まあ、さほど負担の大きな仕事でもなかったから、別に問題は無い。


「こうしてゆっくりするのも久々ですね」

「そうだな」


 自室でセリカと紅茶を飲みながらゆっくり過ごす。

 調理魔法での農作業を学会で発表して以降、忙しい日々が多くなったから、こうしてゆっくり過ごせる時間は貴重だ。

 しかも湯気が立つ紅茶をふうふうしながら飲む、かわいとおしい極愛の妻セリカと一緒なんだから、貴重であると同時に幸せだ。

 できれば二人で外に出て、以前より賑やかになった村を回りたかったけど、昨日の夕方くらいから降りだした雪がまだ降り続いていて、今朝にはすっかり積もっていたから外出はやめておいた。もしも滑ったり足を取られたりして転んだら、大変だからな。

 逆に雪が積もった光景に興奮していたのが、雪を見たことはあっても積もった光景は見たことがないミィカだった。

 起きたそばから大興奮で、大慌てで朝食を摂ったらボサノムとサラノムとロイとマルコとウェネを連れ、大騒ぎしながら外へ遊びに行ってしまったとユリーカさんとユリスが言っていた。


「しかし、雪はこんなにも積もるもんなんだな」


 王都では積もっても薄っすらだったから、足が沈むほど積もっている光景を見るのは初めてだ。


「そうなんですよ。しかもミィカちゃん達のように喜べるのは子供のうちだけで、年齢を重ねると雪かきや雪下ろしをどうしよう、作物は大丈夫だろうか、荷馬車は動かせるだろうかっていうのが気になりますね」


 そういえば、前にもそういうことを言っていたな。

 特に屋根からの雪下ろしなんて、命の危機があるって。


「できれば雪がやんでから雪かきや雪下ろしをしたいんですが、降りすぎたら積もった雪で出入口を塞がれてしまったり、雪の重みで家が潰れたりする恐れがあるので、致し方なく雪が降る中で雪かきや雪下ろしをする家もあるそうです」

「雪で、家が潰れる?」


 出入口を塞がれるなら分かるけど、雪の重さで潰れるマジか。


「この屋敷のようにしっかりした造りや石造りならともかく、一般的な木造の家は重さ次第では崩れちゃうんです。積もった雪の重さを、甘くみないでくださいね」

「おお、分かった」


 真剣な表情で言ってるから、本当なんだな。


「しかも凍ってしまった塊が落ちたら、それこそ凶器です。去年も雪下ろしで凍った塊を落とした際に、下にいた方が怪我をしちゃったんです。頭に当たらなかったのが幸いでしたが」


 怖っ!? 雪って思っていた以上に怖っ!?


「他にも凍った雪で滑って転倒して怪我をした方や、度胸試しで凍った池の上に乗ったら氷が割れて冷たい水に落ちて溺れかけた方もいるんです」


 雪だけでなく、それが凍ったものや氷も要注意ってことか。

 だけどそういう危ない事だけでなく、凍る前の雪で雪像っていうのを作ったり、雪合戦っていう雪玉をぶつけあって遊んだり、かまくらっていう雪の洞穴みたいな物を作ってそこで飲食をしたり、雪が積もった坂道を板に乗って滑り降りて遊んだりと、楽しいこともたくさんあるらしい。


「まだお父様が生きていた頃、大人達による大雪合戦が行われたこともあるんですよ」

「大人達だけで?」

「はい。雪の壁や人が入れるくらいの溝を掘って、それに隠れたり移動したりしながら、雪玉を投げあってました」


 単に雪玉をぶつけあうだけ子供の雪合戦に、戦略や戦術を加えた大人版ってところか。

 しかも壁や溝を掘るって、かなり本格的だな。


「ですが思った以上に熱中する人が多く、気づけば怪我人まで出てしまったので、一回きりで禁止になっちゃいました」


 まさしく大人げない。

 だけどその時の興奮が忘れられない一部の男達によって、今もなおこっそり行われているとかなんとか。

 これに関して義母上と亡くなった義父上は、怪我しても自業自得、自己責任ってことで黙認しているらしい。

 というのも、その大雪合戦は義母上と義父上のチームに分かれてやったらしく、かつて熊殺しお嬢の二つ名を持っていた義母上は前線に出て暴れ、頭脳派の義父上は様々な戦略や戦術を仕掛けるなど、誰よりも熱中して楽しんでいたから強く言えないそうだ。


「禁止になって以降も何度か、両親が混ざっているという話を聞いたことがあります」

「えぇ……」


 禁止しておいて混ざるって、何やってんの義母上と義父上。

 色々突っ込みたいけどやめておこう。


「……よほど楽しかったんだろうな」

「でしょうね。村の様子を見てくると出て行った両親が、転んだとか言って雪まみれになって帰ってきたこともありますし」


 本当に何やってんの義母上と義父上。


「今年もどこかでこっそり開かれるのかな、その大雪合戦」

「おそらくは。はぁ……」


 憂鬱そうにため息を吐くセリカもまた魅力的だ。

 どうして可愛さや愛おしさとは縁遠い様子なのに、かわいとおしく思えるんだろう。


「もしもお母様とユリーカ叔母様が大雪合戦をしたら、どうなっちゃうんでしょうね?」


 元熊殺しお嬢と元傭兵で現自警団の団長による姉妹対決か。


「怪我しないことを祈ろう」


 正直、これしか言えない。

 この際、怪我をしなければもう好きにしてください。

 あっ、でも見られるものならちょっと見てみたいかも。好奇心半分、両者の圧倒的存在感の胸がゆっさゆっさ揺れる様を見たいの半分で。


「そうですね……」


 遠い目をしているセリカも、実にかわいとおしい。


「ちなみにセリカは雪で遊ぶのは、何が一番好きなんだ?」

「私は坂を板に乗って滑り下りるのが好きでしたね。一緒に遊んでいる子達と、どっちが先に下まで降りれるか競争してました」


 確かにそういう遊びなら競争できそうだ。

 でもそれって、体重によって勝敗が決まらないかな。


「途中まで勝っていても、所々にある固まった雪に引っかかって転んだり、変な方向に曲がっちゃったりして逆転されてしまうので、最後まで勝敗が読めないんですよね」


 なるほど、体重だけで勝敗が決まるわけじゃないのか。

 他にも途中から柔らかい雪になっていて埋まって止まってしまうとか、固まった雪で宙に投げ出されてしまうとかもあるらしい。

 そういう何が起こるか分からないのも、楽しい一因とのことだ。


「今頃、ミィカ達もそれをやってるのかな?」

「どうでしょうね。普通に雪合戦したり、雪像を作ったりしているかもしれませんよ」


 うん、やっぱり一番かわいとおしいのは、今浮かべている弾けるような笑顔だな。

 何度見ても、飽きるどころかより強く魅了されていってる気がする。


「なんにせよ、怪我をせずに楽しんでいるといいな」

「そうですね」


 美味い紅茶を飲みながら、かわいとおしい極愛の妻セリカとなんでもない話を語り合う。なんて素晴らしい時間なんだ。

 できれば明日も明後日もその後も、ずっとこんな一日だけを過ごしていきたい。

 尤も、現実はそんなことが許されるはずがない。明日になればまた仕事が待っている。

 だからこそ、今日という休日をじっくりしっかり過ごさなくちゃな。


「あら? 風が吹いてきましたね。それに雪も強くなってきましたし」

「本当だ」


 いつの間にか降っている雪の量が増えて、風によって大きく揺れながら舞っている。

 これが吹雪ってやつかな?

 セリカによるとこんなのはまだまだ吹雪とは呼べず、本物の吹雪はもっと凄いらしい。興味はあるけど、危ないからできればきてほしくない。

 そう思いつつセリカとのゆっくりした時間を過ごしていると、突然部屋の扉が開いた。


「「あう~!」」


 雪まみれになった厚着のボサノムとサラノムが飛び込んできて、それぞれ左右の足にしがみついてきた。

 続いて同じく雪まみれのロイとマルコも飛び込んできて、きゅんきゅん鳴きながら足下で丸くなり、その後でこれまた雪まみれになった厚着のミィカとウェネもやって来た。


「プルル……」

「ただいまー!」

「おかえりミィカちゃん。どうしたの?」


 体を抱えるようにして震えるミィカとウェネに、セリカが尋ねる。


「遊んでたら風と雪が凄くなって、寒いしよく見えないから帰ってきたの。お兄ちゃん、お風呂お願い!」


 構わないけど、その前に雪を払い落しなさい。

 その後、遅れてやってきたトルシェさんからおおよその事情を聞いた。

 簡単にまとめると、天候が悪化したから急いで帰って来て、冷えた体を温めたくて雪も払い落とさずにここへ直行して、俺に風呂の用意を頼みに来たということだ。

 ボサノムもサラノムも、ロイとマルコも寒さにやられてガタガタ震えて足にそれが伝わっている。これは体調を崩す前に温まった方が良いな。

 精霊が体調を崩すのか分からないけど、少なくともミィカとロイとマルコは風邪をひくかもしれない。


「分かった、すぐに用意する」

「でしたら私達も一緒に入りませんか? この子達だけだと、遊んじゃいそうですし」


 それもそうだな。ミィカ達だけで風呂に行かせたら間違いなく遊んじゃって、碌に温まらず風呂から出てきそうだ。

 それはそれで風邪ひきそうだから、監視役は必要だろう。

 というのは建前で、セリカと一緒に風呂へ入りたいだけだ。二人きりじゃないのは残念だけど、一緒に入れるのなら些細なことだ。

 ひとまずトルシェには、風呂の用意ついでに俺達が一緒に入って面倒を見るからと伝えて仕事に戻ってもらい、皆で風呂へ移動した。



 *****



 準備をそそくさと整え、ミィカがいるから湯浴み着を着てもらっての風呂の時間。

 寒い季節の数少ない、気持ちも体も温まるありがたい時間だ。

 肩まで湯船に浸かって寄り添うセリカとお湯の中で手を繋ぎ、頭や体を洗っているミィカ達を眺める。


「サラちゃん、動かないでね」

「あう」


 大人しくおすわりしてるマルコを洗っているサラノムの頭を洗ってあげているミィカ。

 洗いっこしてる光景が実に微笑ましい。


「あうう、うあう」

「プルプル、プルル」


 泡だらけになってきゃんきゃん鳴いてるロイを楽しそうに洗っているボサノムは、背中をウェネに流されている。

 背中を流せて上機嫌なウェネだけど、手の上下に合わせて見た目年齢とは不相応に存在感を主張する胸が、声同様にプルプルと揺れる。


「皆、洗ったらちゃんと温まるのよ」

「はーい」

「「あーう」」

「プル」


 セリカの呼びかけにミィカ達が応え、ロイとマルコもきゃんと鳴く。

 なんかいいね、こういうの。一家団欒の時間みたいで。

 本当の一家団欒の場合、義母上やユリーカさんの圧倒的存在感の胸がブルンブルンと揺れたり、妾のトウカとユリスがセリカと同じぐらい密着してきたりするから、今みたいに和やかな気分にはなり辛いんだよな。


「ふふっ。この子が生まれてミィカちゃん達ぐらいになったら、こうなるんでしょうか」


 まだ目立っていない腹部を湯浴み着越しに撫でるセリカから、今までに無かった温かくて柔らかい雰囲気を感じる。これが母性ってやつか?

 いいじゃないか。ただでさえ可愛くて極限まで愛おしい妻なセリカに母性まで加わったら、それこそ至高を越えた超越的な存在に至るってものだ。


「そうだな、こうなるといいな」

「はい!」


 弾ける笑顔は可愛くて愛おしい、即ちかわいとおしい。それが極限に至って極愛の妻と化し、そこに母性が加わったからヤバい。なに俺の奥さん、至高を超越した存在過ぎて困るんだけど。

 既に寄り添われているとはいえ肩に手を回したいけど、セリカ側の手は薄っすら傷が残ってちょっと硬いものの、浸かっているお湯以上に温かく感じる手に握られているから無理だ。口惜しい、実に口惜しい。


「んふふ~。くんかくんか。はぅ~」


 汗が浮かぶ首元に鼻を近づけたセリカが、匂いを嗅いで恍惚の笑みを浮かべて蕩ける。

 いいよいいよ、こんな匂いで良ければいくらでも嗅いでいいよ。

 こっちも束ねられたふわふわ髪から、甘い香りを堪能してるから。


「あの、旦那様。少々よろしいですか?」

「なんだ?」

「急にぶしつけなお願いで申し訳ありませんが、膝の上に座ってもよろしいですか?」


 本当に急なお願いだな。


「ここ最近はノームちゃん達にそこを独占されてましたから、どうかお願いします」

「別にいいぞ」


 減るものじゃなし、かわいとおしい極愛の妻からのお願いなら、よほど無茶でない限りは叶えてやりたい。


「では失礼します」


 ずっと握られていた手が離れ、セリカが立ち上がる。

 存在感抜群の胸や、ほどよく肉がついてむっちりした腹部に湯浴み着がピッタリ張りついた光景もいいけど、同じくむっちりした太ももにお湯が伝う光景も同じくらい良い。

 そしてセリカが膝の上に座る。こっちを向いて腰を下ろし、首に腕を回してきて正面から抱きつく形で。


「って、こっち向くのか」

「向き合って旦那様の膝に座っていいのは、妻である私の特権です」


 ふんすと鼻息を吐いてドヤ顔をして、すぐにまた密着してスハスハ匂いを嗅ぐセリカもまた、かわいとおしい。

 それにこっちも、密着されていることでほどよく肉のついたむっちり太ももに脚をぎゅむっ挟まれ、同じくむっちり腹部がプニプニと優しく触れて、それら以上に存在感抜群の胸がむぎゅううっと押し付けられ、トドメとばかりにまとめられたふわふわ髪からは甘い香りが漂ってきて幸せだ。

 思わず背中に手を回しても文句は出ず、それどころかにゅふふと言って上機嫌に蕩けた笑みを浮かべていて、これまた実にかわいとおしい。

 無論、力強く抱くことはしない。セリカの腹部を圧迫して、子供に影響が出たら大変だからな。


「「あうー!」」


 幸せな時間を堪能していたら、体を洗い終えたボサノムとサラノムがお湯の中をザブザブと駆け寄って来て、不機嫌そうにあうあう言いながらバシャバシャ水面を叩く。


「なんだ? どうした?」

「プル」



 そこは自分達の場所だと言っています



 桶の中にお湯で文字を作ったウェネがノーム達の言葉を通訳してくれた。

 とても助かるけど、湯浴み着が張りついた見た目年齢とは不相応に存在感を主張する胸がプルっと揺れたから、一瞬そっちへ目を向けてしまっていた。


「駄目です。ノームちゃん達以上に、ここは私の場所なんです」

「そういうことだ。悪い」

「「あううー!」」


 そんなー! とでも言ったのだろう。ノーム達はがくりと崩れ落ちた。

 体が小さいから両手を底につけて俯くと顔が沈み、ぶくぶく気泡が噴き出ている。

 懐いてくれるのは嬉しい。でも優先すべきはかわいとおしい極愛の妻セリカなんだ、許せ。


「元気出して」

「ププル」

「「あうー」」


 ミィカとウェネに慰められ、水面から顔を上げたノーム達。

 その後、サラノムはロイとマルコを抱いて入浴しながら、隣で入浴するミィカから頭を撫でられて慰められ、ボサノムは入浴するウェネの膝の上に座って背中を預けて慰められている。後頭部がちょうど胸の辺りにあって間に挟まってるけど、本人はそのことも、頭上で涎を垂らしそうなほどニヤけているウェネのことも気にせず、恨めしそうにこっちをジッと見ている。

 そんな目を向けても駄目なものは駄目。俺にとっての最優先は、抱きついて押しつけて恍惚な表情で匂いをスハスハ嗅ぎ続けてる、甘い香りのするかわいとおしい極愛の妻セリカなんだ。


「んふふ~。旦那様の香りを嗅ぎながらマーキング~」


 ちょっと頭の悪い発言をしているとしてもな!


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