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なんか誕生した×2


 セリカ妊娠の一報を最も喜んだのは、当人でも夫の俺でもなく義母上だった。 

 女系の一族だからきっと女の子だろうけど、バーナード家の未来が繋がったことと初孫ができたことをとても喜んでくれた。

 喜びのあまりセリカを抱き上げ、クルクル回って目を回して倒れそうになった時はドキッとしたけど、咄嗟にユリーカさんが支えてくれて転ばずに済んだ。


「なにやってんだよ姉貴! セリカはもう一人の体じゃねぇんだぞ、何かあったらどうすんだ!」

「ご、ごめんなさいね。嬉しくてつい」


 義母上がユリーカさんに怒られるなんて、なかなか珍しい光景だ。

 だけど実際、転んでセリカに何かあって子供が流れたらシャレにならない。せっかく宿った命が消えるのもそうだけど、セリカと義母上が精神的に死にかねない。

 そういう意味では、ナイスフォローでしたユリーカさん。


「ったく、気をつけろよ」

「だから悪かったって。セリカもごめんね」

「もう! 危ないところだったじゃないですか。ねぇ旦那様」

「まあな。何かあったら、責任の取りようがなかったもんな」

「だからごめんって。お願いだから許してよ」


 ムキになって謝る義母上が体を上下に揺らすから、圧倒的存在感の胸がブルンブルンしてる。


「今後は気をつけてくださいね」

「勿論よ!」


 その意気込みが、この場だけでのものでないことを祈ります。男であろうと女であろうと、大事な我が子なので。


「お姉ちゃん、赤ちゃんできたの?」

「そうよ。生まれたらミィカはお姉ちゃんね」

「お姉ちゃん……!」


 満面の笑みで喜ぶミィカには悪いけど、正確には姉じゃない。従姉の子供だから……なんだっけ?

 まあいいか、年齢もさほど離れてないから姉でも。


「それでお母様、私はこれからどうしますか?」

「体第一、健康第一、子供第一よ。仕事は屋敷での書類整理だけ、外出はここの村に限定、体調が不安定なら即休み、なんなら安定期まで休んでもいいわ」


 妊婦になれば体調を崩しやすいし、後継者になる子だから当然の判断だな。

 しかし俺が父親か。いまいちピンとこないけど、誰か参考になりそうなのは……実家の父親はあまり参考にならないな。貴族らしさはあったけど、父親として感心した記憶が全く無い。

 そうだ、トーマスだ。覗き場所を教えてもらったこと以外は、一番トーマスが父親っぽかったからトーマスを参考にしよう。


「セリカが動けない分、ユリスとトウカで悪い虫が付かないようお願いね」

「承知しました」

「押忍! 任せてくれッス!」


 丁寧に頭を下げるユリスと気合いを込めたポーズを取るトウカ。

 今後この村の外へ出る時は、この二人が傍にいるんだろう。まあ護衛のトウカは、元々一緒にいるけどな。


「よろしくお願いしますね。もしも旦那様に悪い虫が付いたら……承知しませんよ」

「「はいぃぃぃっ!」」


 溜めを作ってからの笑顔なのに声が笑っていない一言で、二人は背筋を伸ばして敬礼した。

 妙な威圧感があるせいか、ユリスの足下にいるロイとマルコも何故かおすわりして、きゃんと鳴いて返事してる。

 そんなセリカもかわいとおしくて最高に思えるのは、惚れた弱みというやつだろう。


「さあ、そろそろ仕事に戻りましょう。今日は嬉しくてテンションアゲアゲだから、一気に片付けるわよ!」


 ヒャッハー状態のドライアド達のように張り切る義母上の一言で俺達は仕事へ戻り、ミィカはロイとマルコを連れて村へ遊びに行った。

 第二執務室で一緒に働くブレイドさん達と文官達にもセリカの妊娠を報告すると、拍手で祝福してくれて体調次第では休むことも了承してくれた。


「そりゃあ、あれだけ励んでればねぇ……」


 なんかユーナがボソッと呟いた気がするけど、なんだろうか。


「しかしそうなると、その子が生まれた後には入り婿の話がいくつも来そうですね」

「「あー」」


 爵位と入り婿という立場上、新たな嫁や妾を与え難い俺じゃなくて、子供に狙いを定めて繋がりを得ようとするってわけか。


「あの、どうして入り婿なんですか? まだ女の子とは決まってませんよね?」

「バーナード士爵家は女系で、初代様から娘しか生まれていないんです。だから、今回もきっと女の子ですよ」


 文官の一人の問い掛けにリックが答える。

 まだ女の子と決まった訳じゃないけど、実際その通りなんだよな。義母上の子は我が極愛の妻でかわいとおしさの権化たるセリカで、ユリーカさんの子も娘のミィカだけ。

 家系図にも男は初代バーナード士爵以外は入り婿ばかりで、息子一人生まれていない。

 こんなことはちょっと調べれば分かるから、セリカのお腹に宿った子が生まれれば、間違いなくうちの息子をって話が届くだろう。

 親としては、元気に育ってくれるのなら息子であろうが娘であろうが、どっちでもいい。ただし、結婚話に関しては相手側を入念に調べさせてもらう。


「さっ、話はここまでにして仕事だ仕事。今日も忙しいぞ」

『はい!』


 忙しいとは言ったものの、冬に入ったから以前より忙しさは落ち着いている。

 この領地の主軸となる農作物やドライアド達による薬草が、一部の冬に栽培可能な物を除いてほとんど作られなくなったのと、それを取り扱う商人ギルドや商会の動きが鈍くなったからだ。

 現在ほとんどの畑が、土を休ませながら調理魔法で作った肥料や枯れ葉を「撹拌」で混ぜ込み、春に向けて栄養と魔力を溜めこませている。

 その間、冬に育てられる作物を取り扱っていない農家の方々は、開拓作業の手伝いをしたり臨時で自警団に参加したり、冬になったら鬼族とドワーフの村で始まる酒やショウユやミソなんかの仕込みを手伝いに行ったりしている。土壌改善した作物でより良い物を作るため、必要な道具を追加で用意してるぐらい準備を整えて気合いが入っているから、新しい酒やショウユやミソは期待できそうだ。あと、酒と一緒に作る予定の酢も。

 さらに冬ということで移住者が極端に減ったのも、忙しさが減った理由だろう。


「新しく移住してきたモグラの獣人族達は、上手くやってますかね?」

「やってるみたいですよ。自警団の夜間団員として頑張ってるみたいです」


 一番最近移住してきたのは、働いていた鉱山の閉鎖で無職になり、雇い主からも放り出されたモグラの獣人族およそ五十人。鋭い爪と頬に左右四本ずつ生えている髭が特徴的な彼らは明るいのが苦手で暗いのが得意なため、昼夜逆転生活が好ましいという。

 その特性を見込まれ、男達は鉱山の仕事で鍛えられた腕っぷしを活かすため自警団で夜間団員として採用され、女達は飲食店や商店の夜間従業員として採用された。

 これによって日中と夜間で勤務を分けられたから、夜になったら家へ帰って家族団らんの時間を作れる、団員なり店員が増えたから休みが増えたと概ね好評を得ている。

 こちらとしても、闇夜に紛れてドライアドを攫いに来る輩が出ているから、夜間の警備が強化されるのは大変ありがたい。


「彼らの生活はどうだ? 不満が出たりしてないか?」

「先日飲みに行った時に聞いてきましたが、特に問題は無いようです。日中の明るさは黒いカーテンを使うか窓を塞ぐことで対応できてますし、そもそも苦手というだけで明るいのが無理、というわけではありませんからね」


 ならばよし。もしも本物のモグラのように、地中に住みたいと言い出したらどうしようかと思ったよ。


「うちの領地には鉱山が無いので、話を聞いた時はどうしようかと思いましたが、なんとかなるものですね」

「案外そんなものですよ。そもそも彼らが鉱山で働いていたのだって、他に働き口が無かったのと、モグラごときには鉱山作業がお似合いだから、という風に思われていたからですし」


 そんなことはないだろう。モグラの獣人族は地面を掘るのが得意だからって、それしかできないって訳じゃない。

 実際、夜間警備で大いに頑張ってくれてるぞ。


「おまけに安月給で扱き使われていたから、普通に扱ってもらえて大変ありがたいって言われましたよ」


 どうやら彼らが以前にいた場所は、種族差別が激しい地域だったようだ。

 差別が激しかった昔と違って、今はどの種族にもにもちゃんと人権があるのに、まだそんな時代錯誤な地域があるなんて嘆かわしい。


「国や領主が他種族に寛容でも、周囲の全員がそうとは限りませんからね」

「そうよね。お陰で王都じゃ苦労したわ……」


 やっぱりここのように、領主だけでなく住人達も他種族に寛容な地は滅多にないようだ。

 こんな土地を作ってみせた歴代バーナード家の皆様、後継者候補として感服します。俺もそれに続けるよう、頑張ります。

 そう気持ちを新たにして書類を整理していると、扉がノックされた。


「はい」

「シオン様、サラです。ケルムさんとブロッサムさん、それとお連れの方が一名いらっしゃっているのですが、お通ししてもよろしいでしょうか? なんでも重要な報告があるとか」


 ケルムさんとブロッサムさんが? 今日は訪ねて来る予定は無かったはず。

 ということは、重要な報告とやらは緊急性が高いのかな。

 周りも察してくれたようで、全員が頷いて承諾してくれた。


「分かった。通してくれ」

「承知しました。失礼します」


 サラさんによって扉が開かれると、ケルムさんとブロッサムさん、それと濃い緑の長袖シャツとオーバーオールを着て長靴を履いた、ボサボサの茶髪につぶらな瞳の三歳くらいの男の子が入室してきた。連れの一名って、あの男の子のことか?

 というか誰だ? 見たことないぞ?


「シオン様、急に来て悪かったのじゃ」


 顔の前で両手を合わせて小さく頭を下げるブロッサムさんは、今日も土の摂取による幼女状態だ。男の子と一緒にいると、年齢的には孫と祖母なのに姉弟に見える。


「重要な報告があると聞いたら、無下にはできないさ。それで、何があった」

「はい。それはこの子に関することなのですが」


 ケルムさんが男の子の背中を押し、俺の前に出す。その子がどうしたんだ?


「あうあっ!」


 入室してからずっと辺りをキョロキョロ見ていた男の子が、俺を見るや目を輝かせて駆け寄って来て、ドンと脚へ抱き着いて嬉しそうに頬ずりする。

 えっ? 何でこの子、いきなり俺に懐いてるの? 初対面だよな?


「……旦那様? そちらはどちら様との子ですか?」


 違う誤解だ冤罪だ勘違いだ、俺とこの子の間にはなんの関係も無い。だからかわいとおしくとも、その冷たい笑顔をやめてくれ。

 そもそもセリカとユリスとトウカ以外とは、そういったことはしていない。


「安心するのじゃセリカ様。その子はシオン様の子ではないのじゃ」


 そうだブロッサムさん、あなたが連れて来たんだからちゃんと否定してくれ。


「ある意味では、シオン様の子と言ってもいい気はしますがね」


 ケールームーさーん! それどういう意味!?

 かわいとおしくとも冷たい笑みのセリカから、体が凍えそうなほど冷たい強風が吹き荒れているから、早く説明求む!


「これケルム、誤解を招く言い方はするでないのじゃ」

「きゃうん。申し訳ありません」


 謝罪とかいいから、早く説明してくれ!


「そのお方は大地の精霊、ノーム様じゃ。我らドライアドにとっては、大地の神の使いといっても過言ではない存在なのじゃ」


 精霊? ノーム? このあうあう言ってる、幼い子供にしか見えない子が?


「あうあ!」


 そうだよ! とでも言ってるように、顔を上げて満面の笑顔を見せてくれる。

 なにこの子、改めて見ると滅茶苦茶かわいい。こんな子供欲しい。


「精霊、というのは?」

「集落のおばばに聞いたことがあります。大地や火や風や水のような自然そのものに宿る超常的な魂で、一説ではそれらを生み出した神に仕えているのではないか、と言われているそうです」


 ユリスの疑問にエルフのリックが答える。


「概ねそこのエルフの言う通りじゃ。そのノーム様は大地に宿る魂が、良質な土と高濃度の魔力によって具現化した姿なのじゃ」

「あう!」


 脚から離れたノームとやらが、その通りと言わんばかりに腰に手を当てて胸を張った。

 これが神の使いとも言われている、自然に宿る超常的な魂? どう見ても可愛い盛りの男の子じゃないか。


「ドライアドの方々に冬でも育つ薬草について畑で話を聞いていたら、その子が休耕中の畑から出てきたんです」


 畑から出てきた?


「いきなり畑が光って、それが収まったと思ったら土の中から手が出て、その後にノーム様が飛び出したから驚いたのじゃ」


 なにそれ凄く気になる、見てみたい。


「あの、そもそもの質問なんッスけど、どうして今になってノームちゃんが生まれたッスか?」


 確かにそれは気になる。

 さっきブロッサムさんは、良質な土と高濃度の魔力によって具現化したって言っていたけど、それが土壌改善によるものだとしたら、もっと早く誕生しているはず。

 というかトウカ、ノームちゃんって。一応男の子……のはずだぞ。精霊に性別があるか知らないけど。


「うむ。おそらくじゃが、冬になって畑で育てる作物が激減したからじゃろう」

「きゃうん。今までは作物に吸われていた栄養や魔力が、作物の激減によって土に留まった結果、ノームが誕生したと考えています」


 そうか、冬になって畑で育てる作物が減ったのが原因か。


「ということは、これから領内でノームが次々に誕生するのか?」

「いや、それはないじゃろう」


 断言しきるということは、何か理由があるんだろうか。


「これはケルムの視力魔法で魔力を見て、我らが土の栄養や魔力を見たからこそ気づいたのじゃが、ノーム様が誕生するほどの良質な土と高濃厚な魔力が宿る土を作れるのは、シオン様だけなのじゃ」


 俺だけだって?

 楽しそうにぐりぐりと脚に頭を擦りつけるノームを抱き上げ、詳しく話を聞く。

 といってもそう難しい話ではなく、俺ぐらいの魔力量かつ魔力の制御と操作を出来る奴が、「撹拌」と「発酵」で肥料を作り、それを撒いて「撹拌」で土をかき混ぜないと駄目らしい。

 ドライアドの薬草畑の一部は、俺が手がけた土じゃないと満足できないという彼らのため、公衆土浴場の土と肥料を用意するついでに俺が耕しているから、それによってノームが誕生したとのこと。

 事実、一度でも他の調理魔法の使い手が作業をした畑は、ノームが生まれるほどの土と魔力ではないらしい。

 なお公衆土浴場の方も、ドライアド達が栄養と魔力を摂取しているから、ノームが生まれることは無いとのこと。


「ということは、一から十まで俺が手を掛けた畑でないとノームは生まれないのか」


 抱き上げられたノームに引っ付かれながら、説明された内容に頷く。


「それに加えて継続性も関わっておるじゃろうな」

「くぅん、その通りかと。シオン様がずっと同じ畑を耕し続けたからこそ、ノームが誕生したと推測しています。なので領主様より先に、シオン様へご報告に参りました」


 言われてみれば、公衆土浴場のついでに耕す畑はいつも同じ場所だったな。

 だとしたら、これ以上はノームは生まれない……待てよ。俺だけがずっと手を掛けていて、今は休耕中の畑があるじゃないか。


「きゃあぁっ!?」


 そのことに気づいた直後、トルシェの悲鳴が聞こえた。

 すぐにノームを下ろして第二執務室を飛び出すと、菜園の方で茶色の光が発生していた。


「おぉっ、これは!?」

「きゃわん! さっきノームが生まれたのと同じ光です!」


 やっぱりか。屋敷の菜園は肥料作りから土作りまで俺一人でやってるし、今は何も育てていないからノームが誕生するんじゃないかと思ったよ。

 急いで菜園の方へ向かう途中でトウカに追い抜かれながらも菜園へ到着すると、手で光を遮りながらどうしようかとオロオロしているトルシェがいた。


「トルシェ!」

「ああ、シオン様。私は何もしてないですよ、菜園の前を通りかかったら急に畑が」

「分かってる。理由は分かってるから」


 とりあえずトルシェを落ち着かせているうちに、文官達やサラやケルムさんやブロッサムさんやノーム、さらに義母上も何事って言いながら圧倒的存在感の胸をブルンブルン揺らして駆けてきた。さすがにセリカは駆けて来ないか。ユリスはセリカのため、第二執務室に残ったのかな。


「シオン、これは何?」

「それがですね」


 義母上に説明しようとしたら、その前に光が畑の一部へ集まっていき、やがて収まっていく。

 その直後、光が集まった箇所の土が揺れ出して、ボコッと小さな手が一本飛び出した。


「ひぃっ!?」


 死者が蘇ったかのような光景に、文官の女性が悲鳴を上げた。

 続いてもう一方の手も土の中からボコッと飛び出し、両手を地面に置いて体を持ち上げるようにして、上半身が土の中から出てきた。


「あうあうあー!」


 両腕を突き上げて登場をアピールする新たなノームは、ブロッサムが連れて来たノームと服装と髪の色は同じだけど、髪質がサラサラのストレートで気が強そうなツリ目をしている男の子だ。


「うああうー!」


 同族の登場に、ブロッサムが連れて来たノームが嬉しそうにピョンピョン跳ねて可愛い。

 その間に新たなノームは下半身も土の中から引っこ抜き、よっこいしょと立ち上がって土を払う。

 こいつも長靴を履いてるんだな。


「あう? ああうー!」


 土を払い終えてこっちを向くと、俺を見るやいなや駆け寄って来て右脚へ抱き着いた。


「ううあ!」


 対抗するように、ブロッサムさんが連れて来たノームが左脚へ抱き着く。

 ノーム同士で顔を見合わせると、新しく誕生したノームが目をパチクリさせる。


「あう?」

「あうう!」

「あう! あうあ!」

「うあう!」


 何言ってるのか分からないけど、可愛いから許す。


「えっと……シオン、説明してもらえる?」


 承知しました義母上様。

 場所を第二執務室へ移し、残っていたセリカとユリスと合流して経緯を説明すると、感心した様子で頷いて俺の左右の膝の上に一体ずつ座るノーム達へ目を向ける。

 組んだ腕にノッシリ乗った圧倒的存在感の胸、お見事です。


「なるほどね。ブロッサム、この子達が生まれたら畑に影響はある?」

「一時的に魔力が激減するだけですじゃ。放っておいても三ヶ月ほどで自然に回復するのじゃが、シオン様が調理魔法で手入れすれば、三日ほどで回復しましょう」


 何も育てていなければ、実質畑や作物への悪影響は無いってことか。


「でもそうなったら、またノームが誕生しませんか?」


 あっ、言われてみればそうかも。さすがは我が極愛の妻セリカ、良い所に気づいたもんだ。


「それは大丈夫じゃ。同じ場所からノーム様が複数回生まれることは無いのじゃ」


 つまりノームが誕生するのは田畑一つにつき一体だけってことか。


「でもどうして、こんなにご主人様へ懐いているのですか?」


 俺も気になる。今も左右の膝の上に乗って、あうあうとリズムよく歌いながら抱き着いてるし。

 なんか双子みたいで微笑ましい。つい頭を撫でてやったら、あうーと嬉しそうに笑った。可愛い。


「畑の魔力にはシオン様の魔力が混ざっておるからの、本能的にシオン様のお陰で生まれたと分かっておるのじゃろう」


 ああ、だからケルムさんがある意味では俺の子と言ってもいいって言ったのか。


「ちなみに、この子らは何かできるッスか?」

「母君に聞いた話じゃが、植物や土に何かしらの好影響を与えるらしいのじゃ。どんな影響かは個体によって違うようじゃから、そのノーム様達に何ができるかは分からん」


 植物や土に好影響なんて、大地の精霊というだけのことはある。

 これは調べてみる必要があるな。


「「あうー!」」


 声を揃えて何かを言いながら、満面の笑みで楽しそうに足をプラプラさせる膝の上のノーム達。

 うん、もうちょっと頭を撫でて愛でてからにしよう。

 この後、皆で順番に可愛らしい二体のノームを撫でてやった。可愛いって、本当に正義だよな。

 じゃあ、極愛の妻でかわいとおしさの権化たるセリカは、正義を超越した真理か?


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