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再びの王都


 屋敷にユリーカさんとミィカが住むようになってから、良い意味で屋敷は賑やかになった。

 自警団の計画がまとまるまではトウカと修業に励むユリーカさんが庭で声を張り上げ、時折ミィカの笑い声やサラさんのお手伝いをしている時の元気な返事が聞こえると、難しい書類仕事中でも和やかな空気になって微笑んでしまう。

 そのミィカは俺達が仕事中はサラさんの手伝いをする他、ロイとマルコの世話をしたり、二匹を連れて村へ行って子供達に混ざって遊んだりしている。友達がたくさんできたと、興奮した様子で話していたと思ったら、よほど楽しかったのか食事が済んだら笑顔で寝落ちしていた時もあった。

 それによる心のゆとりができた影響か、第二執務室内の空気が良くなって仕事の処理速度が上がって、自警団の計画を早急にまとめることができた。


「雇える人数はドライアドによる警戒隊を含め、三十人ってところね」


 計画書に目を通す義母上が呟く。現状で用意できる予算を考えれば、これが初期メンバーとして雇える人数の限界だ。


「まぁ十分なんじゃね? あんまり多すぎても鍛えるのが大変だし、アタシの目が行き届かなくなるからよ」


 団長になる予定のユリーカさんが人数に対してそう述べる。

 なるほど、人数は多ければいいってものじゃないのか。人数が多ければ多いほど、末端まで目が行き届かなくなるからな。


「んでもって、そいつが目を行き届かせる側になっても平気なように、戦う方も含めてガッツリ教育しておくぜ」


 今度は打って変わって獰猛な笑みを浮かべた。

 どういう教育をするかはユリーカさん任せだけど、どんな教育をするつもりなんだろうか。


「頼むわね。ただ、警戒隊になるドライアド達は戦闘要員じゃないからね」


 警戒隊はドライアドの能力で木々から盗賊や魔物の情報を得ることを目的とした、一種の諜報部隊だから戦闘参加は考えていない。

 いくらヒャッハー状態でも、ドライアドは戦闘向きの種族じゃないからな。


「分かってんよ。んで? ドライアドを除けば団員は何人の予定だ?」

「ブロッサムと話し合った結果、協力してくれるドライアドは五人よ」

「ということは、団員は二十五人ってことですね」

「そんぐらいなら目は行き届くか。くっくっくっ、どう教育してやろうかねぇ」


 ニヤリと腹黒い笑みを浮かべるユリーカさん。団員希望者達がどんな目に遭うか分からないけど、あなた方の無事を祈ります。

 なんにしてもこれで自警団を設立する目処が立ったから、すぐにユリーカさんが各所へ通達に向かい、俺は第二執務室でそのために必要な書類を文官数名と処理していく。


「やっと書類の山を片付けたと思ったのに……」


 仕事が一段落したのに追加を課せられたリックが、落ち込みながら書類を処理していく。

 仕方ないじゃないか、仕事ってのはそうそう終わるもんじゃないんだから。


「この後には新しい開拓が待ってるから、書類仕事はまだまだ尽きないぞ」

「あぁーっ!」


 昨日辺りからこの村の開拓作業に終わりが見えてきて、今はそこに住む予定の人達による確認作業を行っている。

 だけどそれが終わっても、今度は獣人族と魔族が中心の村の開拓が待っているから、書類仕事はたっぷり控えている。悲鳴を上げたリックには悪いけど、これが仕事だから頑張ってくれ。


「やっぱり調理魔法で土木作業や農作業をしているのが大きいですね。普通に人の手でやるより、数倍速く作業が進んでいます」


 文官の一人が言うように、その影響は確かに大きい。

 現在多くの調理魔法使いがドライアド達から合格を貰い、「撹拌」で地面の整備をしている。開拓支援団の中にいる調理魔法の使い手達も同様で、開拓と開墾がスムーズに進んでいる要因の一つになっている。

 さらに俺が先日やったような木材の処理も手掛けるようになったから、なおさら作業速度は上がっている。


「まさか調理魔法に、このような使い道があるとは思いませんでした」

「しかもその結果、あれだけ美味な野菜や穀物が育つとは」

「おまけに森林の再生にも一役買っているとか」

「そういえば、それで育った木々も栄養と魔力がたっぷりあるってドライアドから聞いたエルフ達が、それを利用したきのこの生産を計画していると聞いたぞ」


 文官達は口々に感想や現状を語っているけど、書類を片付ける手は止まっていない。しかも間違っている箇所が無いとか、一体どうやってるんだろうか。


「ところで、ケルムさんの学会発表でいつなんですか?」

「来月だ。雇い主として義母上、それと俺とセリカとトウカとユリスも同行する」


 公式の場での発表、しかも既に領地内で実践されているからケルムさんだけの出席というわけにはいかず、雇い主である義母上、さらに実行している当事者として俺も同行しなくちゃならない。さらに学会の後に開かれるパーティーに出席するため、パートナーとしてセリカを同行させ、身の回りの世話のためにユリスを、警護のためにトウカをそれぞれ同行させることになった。

 そうなると留守番が必要になるけど、そこはユリーカさんが務める。

 本人は面倒だから嫌がったものの、立場的な理由で他に適任者がいないため、お土産に王都の酒を買って帰ることで手を打った。


「留守の間はお任せください」

「しっかり仕事は進めておきます」


 頼もしい人達がいてくれてありがたい。

 とはいえ、こっそり悪だくみを考えている人がいるかもしれないから、そういう意味ではユリーカさんがいてくれて良かった。

 信頼関係を築いているとはいえ、そういったのを警戒しなくちゃならないのも貴族というものだ。


「私もお母様も王都は初めてなので、緊張します」

「そこまで緊張するほどの場所じゃないぞ」

「旦那様は王都で生活していたからそうでしょうけど、私とお母様は違うんです」


 むうっと膨れるセリカは今日もかわいとおしい。

 こんな極愛の妻に悪い虫が近づかないように、王都ではしっかり守ってやらないと。まあ、物理的に守るのはトウカなんだけど。


「しかも宿泊先がコーギー侯爵様の離れだなんて。なおさら緊張します」

「それには同感だ」


 そう、王都での宿泊先はどういうことかコーギー侯爵の屋敷の離れだ。

 学会への参加を取り付けられた連絡をくれた際、推薦者として歓迎したいからそこを使ってくれと伝えられたんだけど、これは絶対に周囲へ良好な関係があるとアピールするのが目的なんだろう。

 学会には研究者だけでなく、優秀な人材を囲いたいという貴族も多く出席する。そこであの研究を発表すれば、利用しようと近づいてくる連中も出てくるはず。だけどそこでコーギー侯爵が良好な関係をアピールすれば、この研究者を囲っているバーナード家はうちと強い繋がりがあると周囲へ伝えることができる。

 加えて、少し調べればバーナード士爵領の開拓を支援していることや、妾としてトウカを送っていることも分かるだろうから、より一層繋がりの強さを強調できる。

 さらに言えば、俺をバーナード家へ婿入りさせたのと、ケルムさんを学会に参加できるようにしたのはどちらもコーギー侯爵だから、なおさら一緒にいて繋がりをアピールしても不自然じゃない。


「これも貴族的な思惑があるんだろうが、相手は侯爵だから断れるはずがないし、甘んじて受け入れよう。うちにしてみれば恩人で、他家からの接触の矢面に立ってくれるようなものなんだ、むしろ感謝してもいいくらいだぞ」

「それは分かっていますが……」


 複雑な表情を見るに、それとこれとは話が別、ということだな。


「まあ向こうも国政に関わっている大貴族だ、妙な事はしないだろうから安心しろ」


 家の格や爵位が高いほど醜聞は命取りになるから、少なくとも妙な事なんてしないはずだ。

 逆に家の格や爵位が低い家も、侯爵家から睨まれたくないだろうしな。


「その点に関しては心配していません。心配しているのは、パーティーでユリスのように転ばないかです」

「奥様、それはどういう意味ですかっ!?」


 どうもこうも、そのまんまの意味だよ。クール系ぶっているドジっ子オデコっさん。

 しかしセリカも言うようになったな。そんなかわいとおしい極愛の妻に、痺れる惚れ直す。


「とりあえず、その件については置いといて」

「置いとかないでください!?」


 悪いけどユリスの主張はスルーさせてもらう。


「たぶん、同じ目的でレトリバー辺境伯様も顔を出す可能性があるから、それについても覚悟しておけ」

「何故ですか!?」


 だってうちの寄親はコーギー侯爵家じゃなくて、レトリバー辺境伯家じゃないか。

 そもそもレトリバー辺境伯家が協力してくれたから、コーギー侯爵家からの開拓支援を取り付けられて、ケルムが学会へ参加できるようになったんだ。それなのにコーギー侯爵家だけが強い繋がりをアピールしたら、不興を買ってせっかく作った繋がりが切れてしまう恐れがある。

 貴族にとって重要な他家との繋がりを維持するため、コーギー侯爵が学会へレトリバー辺境伯を招待するのは十分に考えられる。


「はぁ~。貴族の繋がりって面倒なんですね」

「それを聞くと、貴族じゃなくて良かったって思えるな」


 うん、文官達の言う通りだ。そういう理由で、たまに貴族って身分が嫌になる。

 でも貴族に生まれた以上、こういったしがらみから逃れるのは難しいから仕方ない。


「なんにしてもそういうことだから、心の準備をしておけ。幸いまだ日数はあるから」

「は、はい」


 返事をするセリカの表情は硬い。今からそれじゃ、先が思いやられるぞ。


「奥様は気にしすぎッスよ。もと気楽に構えればいいッス」

「無理です!」


 実家に帰るだけのようなトウカと一緒にするな。

 とまあ、そういう訳で先に重要な仕事を片付けつつ、並行して王都で過ごすための準備を進めていく日々を送る。



 *****



 迎えた出発当日。護衛にお馴染みのラッセルさん達のパーティーを雇って、馬車にて王都を目指して出発した。

 予算を得たことで、ようやく持つことができたバーナード家の家紋入り馬車には俺とセリカ、義母上にケルムさんが乗り、他の面々は別に手配した馬車へ乗っている。


「まさか王都へ行く日がくるとは思わなかったわ」


 馬車の揺れで向かいに座る義母上の圧倒的存在感の胸が、ブルンブルン揺れている。隣に座るセリカの存在感抜群の胸も、同じくブルンブルンと揺れている。

 いい、実にいい光景だ。眼福すぎて目を離したくないけど、凝視してるわけにはいかないから名残惜しみつつ視線を外した。


「わっふぅ~。私は久々です!」


 義母上の隣に座るケルムさんは、学会で発表するとあって早くも興奮気味だ。

 そんな気持ちを表すように尻尾がブンブン振られているけど、慎ましい胸は揺れていない。


「観光もできますよね?」

「勿論よ。シオン、ケルム、その時は案内をよろしくね」

「できるだけ頑張ってみます」


 情けない話だけど、そこまで観光名所とかどこの店が良いとかの情報は持っていない。

 こういう時、スフン義姉さんがいれば頼りになるんだけどな。義姉さん、そういった情報に敏いから。特に食べ物関連は。


「わっふ~、お任せください!」


 いっそ行き先はケルムさんに全部任せちゃおうかな。ぶっちゃけ、気の利いた所へ案内できる自信が無いし。

 しかしこうしてラッセルさん達を伴って王都へ向かっていると、婿入りのためバーナード士爵領へ向かっていた日のことを思い出す。あの時は、こんなにかわいとおしい極愛の妻を得られるなんて、思ってもみなかった。


「旦那様? どうかしましたか?」

「王都からバーナード士爵領へ旅立った時のことを、ちょっと思い出しただけだ」

「そういえばシオンにとって、今回の王都への来訪は里帰りのようなものだものね」

「あまりそんな気はしませんよ」


 だって碌な思い出無いし。

 幼い頃から勝手かつ一方的な期待を寄せられ、将来的な甘い汁を目当てに近寄ってくる連中やそんな奴らに乗せられた両親に囲まれて育って、挙句の果てには掌返しをされたんだから。

 良い思い出と言えるのはサミーやトーマス、スフン義姉さんと過ごした時ぐらいかな。ああ、親の目論見を理解していない幼い子達との交流もあったか。とにかくそれぐらいだ。


「どうする? ザッシュ男爵家へ寄ってく?」

「必要無いです」


 どうせ行ったところで、何しに来たって対応をされるぐらいだろうし、あの父親と兄の視線が義母上とセリカへ向けられるのも良い気分がしない。


「わふ? いいんですか?」

「構わないさ。調子の良い時は持ち上げて、勝手な期待を裏切られたら掌を返すような親の下に、顔を出したいとは思わない」


 ああ、駄目だ。なんだか王都にいた頃の嫌気が刺す日々の気持ちを思い出してきた。


「旦那様、落ち着いてください。やさぐれた目になりかかってますよ」


 セリカに身を寄せられて手を握られた。

 はあ、どうしてこれだけこんなに落ち着くんだろう。

 菜園の作業でちょっと硬くて小さな傷がいくつもある手なのに、柔らかく温かく感じて気持ちが穏やかになる。それと存在感抜群の胸がふよんと当たっているのもいい。

 それを感じていると、あの日々なんかどうでもよくなってくる。


「悪い、嫌なことを思い出してた」

「いいんですよ。それと、ご実家へ顔を出すのがそんなに嫌なのなら無理に行かなくていいですよ。それで旦那様が嫌な思いをするのは、私も嫌ですから」


 なにこの、かわいとおしい笑みを見せてくれる極愛の妻。後光が差して天使に見えるぞ。

 これはもう愛でろってことだよな、そうだよな。はいとイエスと肯定以外は受け付けない、というわけで愛でさせていただきます。


「ありがとなセリカ。やっぱりお前は最高の妻だよ」


 お礼を告げてがっしりと抱擁する。だけど痛がらないよう、絶妙な力加減で抱きしめる。


「きゃっ!? もう、旦那様ったら。すんすん」


 セリカに嫌がっていたり恥ずかしがっていたりする様子は無く、むしろ嬉しそうにしていて匂いを嗅いでいる。

 どうぞどうぞ、いくらでも嗅いでください。こっちもふわっふわの髪から漂う甘い香りと、ムニンムニンと押し付けられる胸の柔らかい感触を堪能してるから。


「あらあら、もう仲が良いんだから」

「わふ……。独り身には羨ましい光景です」


 そう言うなって、いずれちゃんとサミーとの結婚を打診するからさ。

 こうして始まった王都への旅は特に大きな問題は無く進んでいき、道中の食事は俺が調理魔法で作ることで盛り上がり、初めて見る景色の連続にセリカがかわいとおしい反応を見せるから、その度に愛でてやった。

 そんな日々を送りながら移動を続け、遂に王都へと辿り着いた。


「確認しました。荷物も問題無いので、通行を許可します。ようこそ王都へ」


 門番で身分証による確認と荷物の点検を受けて王都へ入る。

 ずっとバーナード士爵領にいたせいか、久々に見る人ごみや建ち並ぶ家々が妙に懐かしい。でも同時に、やかましくて窮屈に思える。


「わぁ、賑わってますね。それに建物も大きいです!」


 そして興奮気味になっているセリカがかわいとおしい。


「随分と人が多いわね。ちょっと酔っちゃいそう」

「わふ……。向こうの生活に慣れてきたせいか、この人ごみがやかましく感じます」


 分かる。俺もバーナード士爵領での生活に慣れたせいで、人ごみがやかましくてうっとおしく感じる。

 それでもって住居が密集しているから、国で一番大きな町なのに狭くて余裕が無いように思える。前はこんなこと思わなかったのに、それだけ向こうに慣れしたんだってことかな。


「さて、もうすぐコーギー侯爵家に着くわよ。皆、心の準備はできてるわね」

「そうでした。王都に着いた喜びで、すっかり忘れてました。すぐに準備します!」


 慌てふためく姿のセリカも、またかわいとおしい。

 俺の方は大丈夫だ。実家にいた頃、寄親と寄子の関係から何度も顔を合わせているから緊張は無い。


「旦那様、随分と余裕ですね」

「侯爵様とは何度か顔を合わせているからな」

「むぅ、その余裕が羨ましいです」


 そう膨れるなって、かわいとおしくて時間が無いのに愛でたくなるじゃないか。

 そんな気持ちを抑えているうちにコーギー侯爵家に到着し、屋敷の大きさと居並ぶ使用人達に義母上とセリカが怯んでいると、先頭に立つ初老の男が進み出る。


「お待ちしておりました、バーナード士爵家の皆様。私、この屋敷で執事を務めておりますシェバシュと申します」

「出迎えに感謝します。バーナード士爵家の当主代理、リーチェ・バーナードです」


 背筋を伸ばして述べたシェバシュの挨拶に、義母上が対応する。


「本日はようこそいらっしゃいました。そしてシオン様、お久し振りでございます」

「久し振りだな、シェバシュ。元気にしてたか?」

「はい。幸いにも病一つせず、健康に過ごしております」


 コーギー侯爵家との交流があったから、当然執事のシェバシュとも顔見知りだ。

 長く侯爵家に仕えているベテラン執事で、使用人達からの信頼は厚いと聞いている。


「シオン様も、お元気そうでなによりです」

「とても良い妻を貰ったからな。彼女との良縁を繋いでくれた侯爵様には、とても感謝してるぞ」

「そんな、旦那様ったら……」


 隣でかわいとおしく照れてるセリカを愛でたいけど、今は我慢だ我慢。


「それはそれは。お館様もお喜びになるでしょう。さあ、ご案内しますのでバーナード士爵家の皆様とケルムさんはこちらへどうぞ。まずはお館様と顔合わせをしていただきます。お前達、馬車と護衛の方々を頼む」

『承知しました』


 馬車と護衛のラッセルさん達への対応は後ろにいた使用人達に任せ、俺達を屋敷へ案内するシェバシュの後に続く。

 屋敷は以前と変わらず清掃が行き届いていて清潔で、行き交う使用人は立ち止まって頭を下げる。それに対して同行しているユリスとケルムさんは頭を下げて返し、かつて知ったる顔のトウカはちわっと返事をする。

 思わず義母上とセリカの胸元に目が行った若い男性使用人は、もれなく睨んでおいた。


「ところでトウカ、バーナード士爵家の皆様に迷惑は掛けていませんよね」

「勿論ッス! むしろ良くしてもらえて、こちらが恐縮してるッス!」


 どこかだ。恐縮してる様子なんて、最初の頃にチラッと見せただけじゃないか。


「それは良かった。さて、間もなく旦那様のお部屋です」


 いよいよか。深呼吸をして気持ちを引き締め直す義母上とセリカとケルムさんの表情は、緊張でやや固くなっている。いざとなったら、対面したことがある俺がフォローしよう。

 やがて目的の部屋の前で立ち止まり、扉がノックされる。


「シェバシュです。バーナード士爵家の皆様をお連れしました」

「入れ」

「では皆様、どうぞ」


 許しを得たことで扉が開かれ、入室した室内でコーギー侯爵家の当主、ウェルシ・コーギー侯爵と対面する。

 久々に会ったけど、相変わらず髪も服装も整えられていて真面目が服を着ているようだ。


「よく来てくれた。コーギー侯爵家当主、ウェルシ・コーギーだ」

「本日はお招きいただき、また滞在の許しをいただき感謝します。バーナード士爵家当主代理、リーチェ・バーナードです」


 背筋を伸ばしたまま挨拶をする侯爵に対し、義母上はスカートを少し上げて頭を下げる。

 如何に貴族の当主同士であっても、そこには爵位の違いによる明確な差が存在する。おまけにこっちは色々と手配してもらっている身だから、なおさら差が存在してしまう。


「まあ座りたまえ。まずは話をしようじゃないか」


 そう促されて座るのは義母上と俺とセリカのみ。 

 ユリスとトウカ、それとケルムさんはソファの後ろで横並びになって待機する。

 さて、どんな話をすることやら。


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