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第23話



 いつもよりも超特急で帰宅したノヴァに押し込まれるように家に入った私は、ササッとシャワーを済ませてベッドに入った。

 さっきまでは全然余裕だと思ってたけど、こうしてベッドに横になると疲れが一気に来るわね。いくらこの体が若いとはいえ、魔力だって消耗してる。妹のためとはいえ、私が倒れたら出来ることも出来なくなる。ノヴァに感謝しないと駄目ね。


 目を閉じると、睡魔が波のように押し寄せてくる。

 自分で思っていた以上にこの体は疲れていたのね。丈夫で何でも出来ちゃうから自分の限界を見誤っていた。

 ゲームで見てきたイメージから、私はヴァネッサベルという人物に完璧というものを押し付けているのかも。

 一人で突っ走る私に、ノヴァも呆れていたのね。


 明日の朝はもう少しゆっくりしよう。

 そう思いながら、私は眠りに身を委ねた。



―――


――



「……ぜ、…………だ…………」


 何。何かが、話しかけてくるみたい。

 なんて言ってるのか全然聞き取れない。


「し……れば、……が、……」


 もっとハキハキ喋ってほしいわね。というか、これは夢なのかしら。それにしては私の意識がハッキリしすぎてる気がする。

 じゃあこれは、誰かが私に夢を通じて語り掛けているということなの。

 もしかして、例の魔術師か。私のことに気付いてるの?

 駄目。こちらからも話しかけたいのに、声が出ない。

 一方的に話しかけてきておいて、ボソボソ喋るのやめてくれないかしら。言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ。


「………………ろせ」


 え? 今、何て言ったの。ハッキリ聞こえなかったのに、何故か理解できた、ような気がする。

 この声、私に殺せって言った?

 私に、シャルロットを殺せと。つまりバッドエンドの筋書き通りにしろと。


 どこのだれか知らないけど、この私に命令するなんて良い度胸じゃない。

 中身が違っても私はヴァネッサベル。誰かの言いなりになんてならないのよ。ベルは自分が決めたことをやり通す女。だから私は、私が思い描くハッピーエンドの道を行くの。


「で…………、……えが……」


 だから何言ってるのか分からないわよ。

 私のこの思考は向こうに届かないのかしら。でも声も出ないし、そもそも夢の中だし。


 全く。自分は表に出ないで無関係な人を巻き込んでシャルを亡き者にしようなんて私が許さないわよ。

 私に話しかけるなら、直接来なさいよ。そして思いっきりぶん殴ってあげるわ。


「…………ル」


 今度は何。

 そう思った瞬間、意識が引っ張られていくのを感じた。何が起きてるの。

 体が起きようとしてる?

 夢から覚めるというの。こんな一方的な夢を見せられて、そっちの話が終わったらそれでお終いとでも言うの。

 なんて勝手なの。いつか捜し出して絶対に殴るからね。



「……ああ。愛しのヴァネッサベル……僕の茨の女王……」




読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヴァネッサベルって、個性的でいい名前ですね。
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