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第15話




「お、おねぇ、さま、は、いつもこんな移動を?」

「ん? え、ああ。ノヴァのこと? そうね、その方が早いから」

「危なくありませんの?」

「慣れれば平気よ。ごめんなさいね、怖かったでしょう?」


 家に着き、ノヴァから降りて足をフラフラさせてるレベッカの肩を支えてあげた。

 確かに私も小さい頃は吹っ飛ばされそうになって少し怖かったわね。子供の体だと体重が軽いからノヴァの全速力に耐えるには握力が必須だったわ。


「さぁ、お入りなさい。この山なら誰も入って来れないわ。ノヴァ、しっかり見張っててね」

「がう!」


 家の中に入り、私はコートを脱いだ。

 リビングのテーブルに着くようにレベッカを促し、お茶の準備をする。確かこの前焼いたクッキーが残っていたはず。それをジャムに付けていただきましょう。紅茶に入れるのも良いわね。


「あの、お姉様」

「なぁに?」

「さっきの、あの動物は何ですの? あんな大きな動物、見たことがありませんわ」

「そうでしょうね。あれは聖獣だから」

「……せ、聖獣!? おとぎ話でしか聞かない幻の生き物じゃないですか!」

「そうよ。だから私も驚いたわ。最初出逢った時はもっと小さくて、他の動物に襲われて怪我をしていたの。それを保護したんだけど、大きくなって絵本で見た聖獣にそっくりに育って、あ、この子って聖獣だったんだって気付いたの」

「……そ、そうなんですか。凄いですね、お姉様」


 用意したお茶とお菓子をテーブルに並べ、私も席に着いた。


「どうぞ」

「は、はい。いただきます……」


 レベッカが紅茶を口にする。温かいものを飲んで少し緊張が解けたのか、表情が柔らかくなったように見える。


「それで、レベッカ。早速で申し訳ないんだけど、貴女にシャルのことを言ってきた人は誰なの?」

「えっと……父の知り合いとかでとある城の宮廷魔術師と仰っていました。ですがお顔はフードでよく見えなくて……分かるのは男の人の声だってことでしょうか」

「ふぅん。魔術師、ねぇ。誰もが魔法を持つこの世界じゃそこまで名前に力はないわね」

「ですが、父は彼の力は凄いんだって自慢げでしたの。その方が、城にやってくるハドレー国の姫君は我が国の王子を色香で誑かすつもりだと……シャルロット姫は男漁りばかりしてる悪女で骨の髄まで吸いつくして使えなくなったら殺してしまうとんでもない悪女だって……」


 何それ。さすがに設定盛りすぎじゃないのかしら。いや、でもベルもそれくらい酷い女だったわね。ベルの本来の設定をシャルに被せようとしたのかしら。


「なるほどね。でも、残念ながら嘘よ。身内だから言う訳じゃないけど、あの子はとても純粋で優しい子なの。どちらかと言えば、仲良くなってほしいわ」

「そう、なのですね……お姉様の妹君ですものね。でもその話を聞いた時、何故だか魔術師様の言う言葉を疑うこともしませんでしたわ。この方の言ってることは正しいと、自然と受け入れてしまって……」


 もしかしたら、それが魔術師の魔法特性かしら。精神操作系だとすると、ちょっと面倒ね。その力でレベッカの父親を洗脳か何かして近付いたのかもしれない。


「……相手の情報が少ないわね」

「申し訳ありません、お姉様」

「……てゆうか、そのお姉様って言うのやめない? 私達、同い年なのよ?」

「そういえばヴァネッサベル様はシャルロット様と双子でいらしたのよね。でもお姉様はお姉様ですわ。それは一番しっくりきます」

「……あっそう。ま、まぁ呼び方なんて別にいいわ。問題はこれからね。私たちは協力関係よ。私はシャルを狙う者の正体を突き止めたい。レベッカはキアノ王子の気を引きたい」

「は、はい!」

「まず第一にシャルとキアノ王子はまだ知り合ったばかりよ。二人とも特に特別な感情を抱いてはいないわ」

「本当ですか?」


 だって今のところシャルが一番気になっているのは私だと思うし。ピンチを救うっていうインパクト大のイベントを三回も起こしちゃってるからね。

 とりあえず今はそれを利用しましょう。シャルの気がキアノに向く前にレベッカへの好感度を上げる。


 大丈夫。キアノルートの攻略は他の王子様よりも簡単だったから。




読んでくださってありがとうございます。

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